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吶喊! H大学文芸部  作者: 江南
7/26

虹の谷で五月(上)

~虹の下には宝があるというが~

(1年GW)


すいませんまたしても続きます。

 家業を継ぐべく勉強しろ! とオヤの命ずるまま受けた大学に無事合格し、引越しして、入学して、でも文筆家への夢は諦められず文芸部に入部して。


 新歓コンパの次はゴールデンウイークに新歓合宿が待ち受けていた。


「新歓だから新人は問答無用で参加」

「あ、とはいえご家庭のよんどころない事情で帰省するなら、一応は考慮するので応相談ね」


 佐伯先輩と叶浦部長によるご説明。つまりよっぽどのことがなければ強制参加ということか。ちなみに飛び石部分にきっちり仕事する酔狂…もとい真面目な先生はまずいないとのことで、実質9連休。


 ここはやはり家業手伝いだろう。実際は三食昼寝で過ごしたいだけだが。


「先に言っておくが、吾妻の家業手伝いは事情として認めない」

「何故に!」

「家を離れている時点で戦力外扱いだろう。長期休暇にオヤの骨休めとして手伝う言われてもお前ひとりで回し切れるものではないだろうから除外」

「里心ついちゃって帰りたいなら、合宿後に帰ってね」


 エスパー怖い! 読まないで!!


「依田と上野は応相談。親御さんに宿泊の承諾取ってくれ」

「なにそれ差別!」

「未成年の女の子を、親の同意ナシに連れ出せんでしょーが」


 …はい、ごもっとも。ココにも良心があったんですね。

 にしても。


「あ、アタシは大丈夫です! むしろそれなら行け言うオヤです」

「ウチも。私が行きたい言えばOKくれます」


 あぁ、女子ふたりは俺の味方ではないのだな…。てか行く気満々というか興味深々? 好奇心は猫をも殺すと言いたいところだが。


「…謹んで参加させていただきます」


 他になにを言えというのか。もう泣きたい。


 * * *


 そんなこんなの合宿日。2泊3日で、幽霊さん含め総勢12人で車4台に分乗し、辿り着いたは近郊のキャンプ地「虹の谷」。なんでもオーナーが作者のファンだそうで、虹が見える名所とかではないそうな。個人経営なだけに観光名所も遊具もないが、安いので定宿なのだという。替わりに、というわけでもそれを売りにしてるわけでもないにしろ、本業で飼育しているという羊やペットの犬猫は見放題触り放題(触れるかどうかは相手の機嫌次第ではあるが。特に猫)。案の定、新人女子はきゃいきゃいと大はしゃぎ。うん、ごめんね俺は実家で家畜見飽きてるから何の感慨もないよ…。


 幽霊さんのなかには最初の1泊のみのひとやら2泊目だけのひとやらもいるそうだが、アシの手配は自己責任。まぁ車でなければ無理な場所だから、車持ちに1日で抜けられても残される方が困る。ので、1日目組と2日目組で相談の上、車を都合しているそうな。部に出てこないのにどこで相談するのやら、と思わなくもないのだが。


「幽霊さんは守護霊とでも思っときなさい」


 ウチそれなりに結束固いのよ、と部長。守護霊ね。名言かもしれない。


 女子就寝用としてバンガローをひとつレンタル、男はテントで雑魚寝。ちなみにテントも寝袋その他諸々も部の備品だそうな。本当に文芸部かここワンゲルじゃないよないやワンゲルならむしろ個人装備か…。


 それはともかく。


 合宿は一応合宿いうことで、テント張ったり食事の仕込をしたり合間に家畜やペットとと戯れたりしながらも、食住の環境が整ったあとは真面目に文学論やら己の書きたいものやらについてのオハナシをし。それはそれは有意義でした。真面目な活動してるんだなここ、と、そこはかとなく失礼な感想を持ったのは内緒だ。


 とはいえ夜は酒盛り。ある意味お約束。だから幽霊さんも参加する。


 となれば定番は恋バナ、行き着く先は猥談だ。


 まだまだ夜朝は冷え込む北の地の暖取り用兼いつでも温かいものを飲めるようにと水入り飯盒を乗せたBBQコンロが3つ(当然夕飯はバーベキューだった。怪我と火傷の危険はあれど、味の心配は不要なスグレモノだ)。さすがにヤカンまでは持ち込んでない。お玉で必要量を掬って使い、使った分の水の追加は自己責任。最後に寝る人間が責任持って火の始末するとのこと。まぁ大概は早寝早起きと入れ替わりで、始末することもないらしいが。


 …ホントに何部だよここ。


「オトコどもの下ネタなんざつきあってられませーん!」


 そう高らかに宣った4年のおねーさまは、女子トークしようねー、と新人女子ふたりをかっさらってバンガローに入っていった。他二人、3年と2年の幽霊女性もそちらへ。なんか既にお局さま…。言ったら笑顔で瞬殺されると本能が訴えるから言わないが。


 そして残った男どもは、酒を手に火を囲む。


 …のはいいのだが。


 なぜ俺は部長と高瀬先輩に挟まれてる? しかも対面が佐伯先輩って、女子はバンガローで女子トークじゃないんですかー!


「どうせ恋バナや猥談なら、むしろ男の話の方が面白いからな」


 きっぱり言い切る佐伯先輩は漢前過ぎます。もうエスパーはスルーします。


「そう言ってナラちゃんのお誘いブッチしたのは語り草だよー」

「去年は『かも?』と疑問形にしたはずですが」

「それにしたってさー」


 けらけらと高瀬先輩が笑う。


「ナラ先輩、1年でそれ言って、女子引き連れて場を分けたんだってさ。先輩たちも別に女子にセクハラしたかったわけでもないから、むしろ助かった、てハナシ」


 小声の補足は叶浦部長から。表に出す部分は違えど中身は同類ということか。ならば是非とも地雷の在り処は教えておいてもらいたい。佐伯先輩の笑ってない笑顔怖かったし。あんな思いは御免こうむりたい。

 

 そんな小声ながらも切実な懇願へのお答えは。


 ナラと短縮されるひとの名前は奈良橋 梢。こずねえと呼ぶのは本人が激しく嫌がるが故のイヤガラセだそうな。うん、実にローカルだ。海を渡ってきたひとには分かるまい。あまり役に立たない情報だが。


 ちなみに他4名の男性幽霊さんは別の火を囲んでエロトーク炸裂中。つまり、救援はない。となれば仕方ない、腹を括ってつきあうだけだもうヤケ投げ遣り!


 そうして。


「淫楽殺人と殺人淫楽の違いはな」

 とか。


「死後硬直後もお湯で緩めればイイらしいけど」

 とか。


「新品ならナマOKだしね!」

 とかは、切実に聞かなかったことにしたい。


 無駄な知識有り過ぎだこのヒトら…。


 そうしてまたしても朝日を拝んだ。合掌。



*  *  *


 余談だが。


 佐伯先輩は酒を呑みつつダベりつつ、ろくに灯りもないなかで野菜をぶった切り、骨付きブツ切り鶏も放り込んだ鍋を各コンロにひとつずつかけた。遠火で朝まで放置なスープは朝食用。問答無用で美味でした。拝みます。

 にしても。4本持ってきた食パンは、自力で好みの厚さに切って焼くのがルールだそうだが、朝だけで2本が消えた。というか、2本なくなった時点で「残りは明日の朝食用」と佐伯先輩が止めた。足りないと訴えるクチには昨夜の残りの白飯をおじや風にして供されたから、感謝されこそすれ文句は出ないが。いやはやまったく朝からどんだけ元気なんだこの部。ホントに文系か?


【to be continued…】

BL展開したいんですよ本当に…(涙)

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