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吶喊! H大学文芸部  作者: 江南
3/26

ひとめあなたに会えたからといってシアワセかどうか 1

~あなたの為にオニオンスープ、そして大きな玉ねぎの下に敷かれる~

(1年4月中旬)


ちょっと長いので分割します。

 入学式から1週間。先輩方のアドバイスを頼りになんとか履修登録を済ませてほっとひと息ついたところで、お約束の新歓コンパと相成った。


 場所は大学近くの学生御用達大手チェーン系居酒屋。今年の新入部員は俺の他には女の子が二人、あとは先輩方が十数名ということで小上がりを予約したとのこと。


「座敷なら多少人数の増減あっても問題ないからな」


 とは会計担当だという佐伯先輩の言だが、実際何人いるんだこの部…。入部してから毎日部室に顔出してるけど、叶浦部長と佐伯先輩しか会ってないぞ。


 それはともかく。


 17時開店で、予約も17時から2時間。なんでもこの時期はどこも新歓で混み合うから、座敷などは特に半端な時間には押さえにくいのだそうな。ということで、まだまだ周辺に不案内な新入部員は引率するからと16時半部室集合の厳命が下っていた。部室から徒歩15分(ちなみに部室から大学の敷地を出るのに最短の裏門まで5分かかる)と聞いていたから、集合時間が早い気もしたのだが。


 5分前に部室に入ると、そこには既に佐伯先輩と新人女子ふたりがいた。先輩はそれが定位置らしい壁沿いのPC前でなにやら作業、新人女子は部屋中央に設置されたミーティング兼雑談場所な会議机で頭をつき合わせてなにやら覗き込みきゃいきゃいはしゃいでる。


「まずはビール、なんて無粋だからな」


 と、部室に入るなり手招かれ近づいた佐伯先輩に公式サイトから印刷したと思しきメニュー表を手渡され、ファーストドリンクを選んでおくよう言い渡された。入店してからでは時間の無駄、だそうで。

 ちなみにそのメニュー表、正しくはクリアファイルであり、近隣の目ぼしい飲食店はほぼそれで確認できる優れもの。サイトとかがない店でもポスティングされたチラシがあれば、それもきっちりファイリング。しかも2冊。おまけに先頭ページは大学を中心とした地図である。勿論店の位置はマークされている。いやはやなんとも至れり尽くせりというべきか…。


 それはともかく、佐伯先輩曰く。


「未成年がどうこうなんて野暮は言わないし店側もほぼ黙認だが、飲酒経験がないならノンアルにしとけ」


 仰せのとおり新入部員3人はソフトドリンクを申告した。

 だが、疑問が残る。ので、問うてみる。


「そのココロは?」

「お取り潰し回避に決まってるだろ。自分の酒量が分からないまま無茶呑みした挙句の急性アル中なんてもっての外、未成年に飲酒を勧めた、あるいは看過しただけでも当局にバレたらマズいしな」


 だから、試すのは部に関係ない場所でにしろ、との冷たいお達し。いや、間違ってはないと思うが…思うがしかし。


「敢えてお訊きしますが佐伯先輩って2年だから未成年…ですよね?」

「ああ、1月までな」


 咥え煙草で答えられてもなぁ。煙草もハタチになってから! だろうに、なんだろうこの堂に入った態度。絶対年季入ってるよコレ。


 そんな視線に気づいたのか先輩は、


「煙草も同様、部の外呑みではしばらく禁止な。学内なら然程うるさくないからいいけど、外だと今のおまえらの見た目じゃ職質されかねない」


 …つまりあなたはその絶対未成年には見えない見た目でスルーされてきたワケですね。


 という内心の呟きは、見事に見抜かれ。


「中2の冬。ロンコー着てたとはいえ下は制服でスカートの裾は見えてたし、学校指定のバッグも持ってたんだが、服屋の店員に『どちらにお勤めですか?』と訊かれたな」


 そう言いながら煙草から遠い側の口角を上げ、そこだけ見れば笑みを模っているけれど、眼鏡の奥の目は笑ってない! 怖い!! なんか地雷踏んだのか俺!?


【to be continued…】

続きます。多分あと2回。

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