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吶喊! H大学文芸部  作者: 江南
18/26

9月になれば(上)

~誰でもいいなら俺じゃなくても!~


すいません続きが割り込みました…

『帰省のカネたかるくらいならそっちでバイトしてろ』 

 とのオヤのあたたかいおコトバに従って、ひたすらバイトに明け暮れた夏を越しての新学期。

 部室に顔を出すなり挨拶をする間もなく言い渡されたのは。


「あ、吾妻お前次の部長ね」

「…はい?」

「ぶ・ちょ・う」

「1年で役付だ、光栄に思え」

 にっこり笑う現部長あーんど鬼の会計様。いや、まったく嬉しくありませんが!

 しかも夏休み中の101号室での呑みの際にはそんなことほのめかされさえしませんでしたが!!


「順当にいけば佐伯先輩が妥当なのでは…」


 おそらく無駄だと思いつつも必至にささやかな反論を試みるが


「佐伯が抜けたら金勘定どーすんのよ」

「それとも吾妻がやれるか?」

「すいません無理です」


 即行拒否。部長職以上に無理だ金勘定は。

 だが即ちそれは部長受諾で。


「だいじょーぶ。部長会議なんざいればいいだけだから。本当に重要なのは予算獲得会議。だから佐伯を留任させるの。吾妻は、今年それ見て学んでね」

「はぁ…」


 つまり佐伯先輩が4年になって部に顔を出せなくなる前に俺を育てて来年会計に、ということか。

 にっこりにこにこ。部長の笑顔が怖い。


「無理だと思ったらそもそも言わないよ」


 とどめ。


「…分かりました。が、今日は帰ります」

「ぃす、お疲れ」


 部長の声は無視したが、


「ポトフと胡瓜のキムチ和え。お前の好きな玉ねぎ豚しゃぶの胡麻ドレも作るが」

「行きます!」


 ボソリと呟かれた佐伯先輩の声には本能が反応した。餌付けされてるなぁ…。


 *  *  *


 そんなこんなでヨロヨロと部屋に帰り着き、冷蔵庫に作り置きの烏龍茶をグラス一杯一気飲みして、ようやくひと息つく。

 新歓後に教えられたティーパックで作る茶は、2Lペットで買うより多分安くて、なによりゴミが減る。ペットは手軽だが、捨てるときに嵩張るのが難なのだと、ひとり暮しを始めて知った。

 

 もう一杯をグラスに注いで、ベッドに座る。そしてため息。


 部長の仕事など伝えられなかった。ただ『やれ』と。

 だから、仕方なく考える。


 現部長を見ている限りでは


・会議への出席(内容は知らない)

・イベント事での責任者(実行者ではない)

・諸々の連絡の発信と取りまとめ(多分一番大変で重要)

・……?


 そんなもんか?

 ああ、幽霊さん達との繋ぎは大切で大変な気がする。

 会議はいるだけでいいとのことだが、そんな筈もなかろうし。


 ……なんだかなぁ。


 確かに2年は佐伯先輩以外は幽霊さんばかりで、任せられないというか任せるわけにもいかないのだろうが。

 だからといって、安易に承服できるハナシでもない。

 とはいえ、佐伯先輩に部長と会計を兼任しろというのもなんだろう。俺だって部長職以上に会計を拒否したい。部長職を拒否したら「じゃあ会計やれ」と言われるだろうし。

 かといって、同じ一年だからと依田上野にふれるかというと、それもどうかと思ってしまう。能力云々以前にアレだしな…。

 思ってしまう時点でもう引き受けざるを得ないのだと諦めの境地。


「……メシもらいに行こ」


 先程実家から届いたチーズを手土産に。



 まぁ、そんなこんなで代替わり。

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