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元魔王(偽)で公爵令嬢リディアーヌの冒険  作者: 星乃 夜一
嫌われ公爵令嬢再び!? 対聖女
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第十話

本日二話目です。

女神様は異世界から来た少女を主人公にした物語を作りたいのだそうだ。

主人公は清楚で美しい黒髪の少女。

少女はある日、元いた世界からこちらの世界へと召喚される。

召喚理由は魔王を倒し、世界に平和をもたらす為。

少女は召喚された国の王子や騎士達と共に魔王討伐の旅に出る。


「あの、女神様、よろしいですか?」


説明の途中だが、どうしても気になる事があって、私は口を挟んだ。


今私がいるのは変わらず女神様の世界なのだが、真っ白だった世界は、色鮮やかな世界へと変わっていた。

どこまでも続く花畑。

遠くには極彩色の木々が見える。

私は女神様の向かいの長椅子に座り、テーブルには色とりどりのお菓子が並ぶ。

蛍光ピンクの暖かい飲み物は、飲んでみたら美味しい紅茶でほっとした。


「いいわよ、どこか気になった?」

「はい、異世界から召喚された少女は、向こうの世界でどのような生活を送っていたのでしょう?

いきなり魔王討伐なんて、辛い思いをなさっているのでは?」


女神様の思考って、私に魔王をやらせた精霊と似ている気がする。

無茶をしていなければいいけど。


「心配無用よ。

元の世界に戻す時は、時間も状態も元通りにするって言ってあるもの。

むしろ喜んでいたわよ。ネット小説みたいって」

「・・ねっとってなんでしょう?」

「向こうの流行りよ。あなたは知らなくていいわ」

「はあ」


召喚された少女が喜んでいるならいいけれど。


「女神様、先ほど王子が魔王討伐の共をすると言われていましたけれど、その国は許すのですか?

王子が魔王討伐なんて危険な事」

「この国だって、侯爵の息子が勇者の仲間じゃない」

「それはそうですけれど、臣下と王族では役目が違います。

もしお怪我などなさったら」

「だーいじょうぶ、大丈夫。

第三王子だから問題ないわ。本人も行きたいって言ってたし」

「・・・・」


まあ、他の国の事に口を挟んでもしょうがないし、本人がいいと言うならいいけれど。


「続けるわよ」


女神様は紅茶ーー蛍光オレンジーーをぐいっと飲んでから続けた。


「聖女となった少女が率いる一行は、この国を訪れるの。

目的は勇者と会う事」

「それってつまり、明日訪れるメイユール国の聖女様一行の事ですね」


明日、国賓としてメイユールから聖女一行が訪れる。

滞在は二週間を予定していて、王への謁見、勇者との会談、歓迎の夜会と予定が組まれている。

一行の中には、メイユールの王女もいて、私は彼女をもてなすように言いつかっている。

その用意で最近忙しかったが、そうですか。女神様のせいですか。

しかしその一行に王子がいるとは聞いていない。


「そうよ、その子達。

それでね、この国を訪れた美しい聖女に勇者は一目惚れをするの」

「!」


私はびっくりして手に持っていたカップをひっくり返した。

カップも紅茶もすうっと消えて、テーブルには新しい紅茶が現れる。


「勇者って、セルジュ様、ですよね」

「そう、セルジュよ。セルジュは聖女に恋をし、熱心に言いよるの。

それを面白く思わないのが、聖女と旅をしてきた王子や騎士達、あと魔法使いもいるわね。

彼らと聖女の恋愛模様。

嫉妬が渦巻き、牽制しあい。

ドロドロもよし、壁ドン、監禁なんでもよし。

方法はあの子達に任せるわ」

「セルジュ様が・・」


私はなんだが胸がざわざわして落ち着かなかった。

紅茶を飲んで、気を鎮める。


「女神様、あの、わたくしのうぬぼれかもしれませんが、セルジュ様はわたくしを愛してくださっているのですが」


女神様は、ふんっと鼻で笑った。


「そんなの、私が選んだ聖女を見た途端にポイっよ。

セルジュは聖女を選ぶわ」

「そう、ですか」


胸にチクリとトゲが刺さった気がした。


「それでね、続けるわよ。

聖女と男達が城でイチャイチャしているのを面白く思わない女達がいるわけ。

その筆頭が、勇者の婚約者の公爵令嬢リディアーヌよ」

「わたくし!?」


私は素っ頓狂な声を上げた。

いや、なんとなく察してはいたけどね。


「でもわたくし、セルジュ様と婚約解消を」

「まだしてないでしょ。よかったわ、解消してなくて。

あなた、なんて事をするのよ。危なく話が変わってしまうところじゃない」


勇者との婚約解消を王にお願いしたのが二週間前。

王と父を説得するのに三日。

王妃が援護してくれたのでやっと二人を説得できたが、それから議会にかけたところ、議会が紛糾。

現在、泥沼の争いが起こっているらしい。

『考え直せ』派と『よし、これで自分の娘を勇者の嫁に』派が争っていると聞いた。

こんな事なら、議員を脅してでも婚約解消をしておくべきだった。


私はがっくりと肩を落とした。


「あなたは自分の婚約者が聖女にうつつを抜かしているのが許せないわけ。

それで、周りの取り巻きを使って聖女に嫌がらせをするの」

「わたくし、取り巻きがいません」

「それはあなたが何とかして」


無茶振り!?


前回、嫌われ公爵令嬢をやった時の仲間の令嬢達からは、裏切り者と言われ嫌われているし、まともな令嬢であれば嫌がらせなんて手伝わない。

困った。


「始めは優しく接してね。

嫌がらせをさせているのがあなただって気づかせないで。

まさか、あなたが嫌がらせの主犯なんてと驚かすの」


笑顔で言われたがどうしよう。

また皆に心配をかけてしまうな、と、ちょっと遠い目になる。


「あとお色気必須よ。

そのない胸を寄せて上げて谷間を作って」


失礼な。少しはあります。


「聖女の仲間の王子や騎士達に色気で迫るのよ。

騎士の一人は堅物だけど、意外とお色気攻撃に弱いとみたわ」

「・・・」


私は頬を引き釣らせた。

メイユール国の騎士がお色気に弱いとかそんな事、知りたくなかった。


「女神様、どうしてわたくしがこの役をやるのでしょう。

力量に無理がありませんか?」


前回、嫌われ公爵令嬢をやった時も、ヴィクトルやアンジェリーヌ、私を知る方々には「何やってるんだ?」という目で見られていたようだし、勇者にもばれてしまっていたし。

私には向いていないと思う。


「そうね。あなたの性格には向いていない役よ。

例えばあなたの従姉妹のイヴォンヌなら勇者に盲目的に惚れているし、いじめ役は上手く出来るでしょう。

でもなんていうか、三下というか、品がないというか、私の物語には似合わないのよ」


わー、酷い。イヴォンヌは王の姉の娘なのに品がないとか。私もあまり好きではないからいいけど。

だってこの半年、ずっと嫌味を言われてるんだもの。


女神様は目の前からすっと消えると、唐突に横に現れた。

びっくり。

女神様は私の顎をくいっと上げて、その水色の目でまじまじと見る。


「あなたなら、勇者の婚約者として、聖女のライバルとして相応しいと思うのよ。

この顔で涙目でしなだれかかったら、王子も騎士達も魔法使いも虜に出来ると思うの。

前みたいな威嚇する化粧はだめよ。

私があなたに求めるのは、表では優しく微笑みながら、裏では男達を虜にして聖女をおびやかす悪い女なんだから」

「む、無理です」


無理無理、絶対無理。

なにそのレベルの高い悪女。

前の頭の悪そうな、きいきいうるさい悪女をするのにだって、ものすごく頭を悩ませたのに、男を虜にする悪女? 虜にするってどうやるの?

なんだか混乱してしまって、縋るように女神様を見た。


「・・いいわね。その顔。

いっそのこと聖女と公爵令嬢の絡みも足そうかしら?

そっちの需要もありそう。

もしくはあっちの国の王女とこの子とか?

・・ありね」


ないです!!

私は心の中でさけんだ。

女神様! 今、頭の中はどうなってるの!?

需要ってなに!?

なにをさせようっていうの!?

むーり、無理無理。絶対無理。

泣きそうだ。


「うーん、18禁とかもいきたいわね。

どうしましょう。

この子見てるといろいろ想像が膨らむわ」


膨らませないで!!

そうっとしておいて!!

なんだかその目が獲物を狙うようで、体が震えてきた。


「うーん、高飛車な公爵令嬢を18禁でいじめる展開も美味しいわね。

王子にさせようかしら。

見た目は貴公子。中身はドS。

ヤンデレ・・・、これは魔法使いで。

あの騎士はヘタレだけどヤるときはヤるとか・・」


女神様が言ってる言葉は分からないことだらけだけど、恐い。

なんかすっごく恐い。


誰か、助けてーー!!!









お読みいただきありがとうございます。

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