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血ニ塗レタ平和

 謝らなければならない事が多すぎます。

 まず、投稿が大幅に遅れて誠に申し訳ありません。

 そして、投稿が遅れたからと言って二話投稿する訳でもありません。

 そのくせ、この一話はやけに長くなってしまいました。

 おまけに、この話にはクラウス達がそれ程登場しません。

 私は一体、何をしているのだろう。

 自問自答を繰り返す私です。

 取り敢えず、もう一度御免なさい。

 黒髪長身の男、アスタリスク・クラウスと、彼と契約を交わした少女悪魔、テトネは二人、草原を連れ立って歩んでいた。 

 見渡す限りの緑を波打たせる、緩やかな風に吹かれながら、口元の微笑を絶やす事無く。

 これは、色彩豊かな草花が大地を飾る、四月半ばの頃の事。 


「ねえ、アス。ボク達がこれから行く国って、どんな国?」

 何処までも広がっているような錯覚すら覚えさせる、広大な草原の一点にそんな問いが生まれたのは、二人が前の国を発ってから四日目の昼過ぎの頃の事だった。その問いを放った人物、テトネの瞳には何処か期待するような光が宿っていた。

 それも当然の事と言えるだろう。二人は四日前まで滞在していたとある小国で、まともな食事に有り付く事が出来なかったのだ。食料事情の悪化という理由と共に、その事実を入国審査官から告げられた時の、テトネの唖然とした表情を思い出したクラウスは、最愛の相棒に対して答えを返した。

「何も心配する事は無いよ。これから行く国は、科学技術が随分と発達している豊かな国らしいから。ただ、その国の近くにはもう一つ、その国とほぼ同規模の国が在るらしくてね。僕達が目指している国と、その『もう一つの国』は対立関係に在るらしいんだ。まあ、大した事無いとは思うけど…………一応その事は覚えて置いて欲しい」

「……分かった」

 素直かつ端的にそう返すテトネの姿に、旅人としての確かな成長を見たクラウスは、何処か感慨深げに目を細めた。弟子の成長を喜ぶ師匠の如く、慈愛に満ちた微笑をテトネの横顔に注ぐクラウス。

 次の瞬間、テトネが動きを見せた。遙か前方に向けていた自らの視線を、自身の左横を歩く唯一無二の相棒、クラウスにスライドさせたのだ。そして、それを受けたクラウスもまた、笑みを浮かべていたという事実を隠すようにテトネから顔を背けた。テトネのその行動は、彼女の何らかの意図に起因するものではなく、クラウスの動きに関しては殆ど反射によるものだった。

 僅かな静寂の後、クラウスの行動を自らの主観というフィルターに通して解釈したテトネの、非難の叫び声が辺りに響き渡った。

「あっ、アス今、ボクの事笑った!なんだよ、ボクが真面目に答えたから? ……むぅ~」

 不満げに頬を膨れさせ、唸るテトネ。馬鹿にされたと勘違いしている事は明白だったが、クラウスは敢えてテトネの勘違いを否定しなかった。その理由が、テトネを褒める事が恥ずかしかったから…………ではなく、噛み付いて来るテトネが可愛かったからだという辺り、クラウスも色々な意味で末期だと言えるだろう。

「大体、アスはボクより少し物を知っているからって偉そうだよ!……アスの方が長く生きているんだから、ボクがアスより物知らないのは当たり前だよ!」

「テトネ、一週間に一回は右と左を間違えるよね」

「そんなに多くない。それならアスだって何も無い所で転びそうになるじゃん」

「転んだ事は一度も無いよ。テトネは…………

 最終的に子供の悪口合戦の様相を呈した二人の会話は、クラウスが前方に城壁の存在を認めるまで止む事は無かった。彼らの口喧嘩は騒がしく、滑稽おかしく…………何より、優しかった。

 『旅』と『幸福』で吊り合った天秤を、前者を取って傾かせる存在、それが『旅人』だと過去の偉人は言った。ならば、『旅』も『幸福』も取る事で吊り合いを保たせる存在は一体何なのか。

 とある黒髪長身の旅人は言った。『悪魔』と『従人』に決まっている、と。

 

 余程訪れる旅人が少ないのか、残り一〇〇メートルという所まで城門に接近したクラウス達は、瞳を涙で潤ませた、恐らくクラウスよりも若い入国審査官の青年に出迎えられた。その熱烈歓待ぶりは本来ならば間違い無く喜ぶべき事なのだが、クラウスは何故か釈然としないものを感じずにはいられなかった。

 しかし、最終的にクラウスはその違和感を無視し、入国を急いだ。彼が自らの勘を裏切ってまでそう判断した最大の理由は、彼の左隣に在った。暴食悪魔の瞳は僅かな緊張と、溢れんばかりの期待に潤み、飢えた獣のような光を宿していた。元兵士は、その眼光の鋭さに妙な既視感を覚えていた。昔、共に戦場を駆け巡った戦友のソレと酷似していたのだ。

 クラウスは背筋を凍らせながら、過去最高の記入速度で入国審査書類の空欄を埋め始めた。だが、結果的にクラウスはそこまで焦る必要は無かった。女性入国審査官の手によってテトネにも審査書類が渡されたからだ。人間、集中している時は空腹を忘れると言うが、どうやらそれは悪魔も同じらしい。

 クラウスにとって残念だったのは、書類にペンを走らせているテトネの姿を初めて確認したのが、全ての空欄を埋め終わった後だったという事だ。

 疲れた表情で静かにテトネの作業を見守っていたクラウスは、不意に先程の若い青年入国審査官から口頭で質問を受けた。

「ああ、旅人さん。何か護身用の武器をお持ちでしたら我々に預けて頂けませんか? 旅人さん方が『あの国』のスパイでない事は百も承知ですが、一応警戒しろというのが上の命令でして。…………もし、旅人さん方が明後日この国に来ていたら、こんな失礼な質問はしなくて済んだのですが」

「いえ、構いませんよ。警戒するのは当然の事です。噂を聞いたのですが、この国は近くの国と対立しているとか…………」

「ええ、その通りですよ、旅人さん。本当に忌々しい。『あの国』が近くに在るから、この国の評判も悪くなる。全く、最悪です」

「『あの国』ですか。……正式にはなんて名前なんです?」

「『あの国』の正式国名ですか? 旅人さんも変な事聞きますね。ダルグゲロス自由共和国ですよ。この国の国民は皆、『あの国』と呼びますが……」

「ちなみにこの国の正式名称は?」

「ゲルグダロス平和共和国です」

「…………そうですか。入国審査官の仕事も大変ですね」

「……はい、確かに大変な仕事です。しかし、私は自分でこの仕事を選びましたから。特別学校に三年間通い、倍率二五倍の第三種一級国家試験に合格したのが、つい先日の事です。ですから、旅人さんは私の初めて担当した人なんです。出来たら、サイン頂けませんか?」

「…………良いですよ……」

 何とも言えない複雑な感情を胸に、クラウスは青年入国審査官の差し出してきた色紙にサインした。随分と用意が良い事に、半ば感心しながら色紙を審査官の青年に渡すクラウス。涙脆い性格なのか、青年の目頭には涙が浮かんでいた。

 テトネが空欄の埋まった審査書類と交換に、女性審査官から飴球を手に入れたのは、それからすぐの事だった。どうやら、大して腹の足しにならなくとも、取り敢えず何か食べる物が有れば満足らしい。飴玉を口内でコロコロと転がすテトネの顔には、満面の笑みが浮かんでいた。

 背中に、ハンカチで必死に涙を拭う青年審査官と、テトネを担当した女性審査官の視線を受けながら、クラウスはテトネを引き連れて城門をくぐった。食堂がすぐに見つかる事、テトネの舐めている飴玉がそれまでに溶けない事を一心に願い、クラウスは歩んだ。

 二人の頬を、生暖かい風が不気味な程、優しく撫でた。


 食堂でテトネが機嫌を完全に直した時、クラウスは燃え尽きて真っ白な灰となっていた。二人の丸テーブルの上には大小様々な空皿が所狭しと並び、積み重なっていた。三十分前まで、それら全てに料理が山のように盛り付けられていたと言われて、一体どれ程の人間が信じる事だろう。

 旅の形態がテトネとの二人旅になって間もない頃、クラウスは彼女に、何故、自分の能力で空腹の痛みも何処かに押し付けないのかと聞いた事が有った。その問いに対してテトネはこう答えたのだ。ボクは唯一、空腹の痛みからは逃げる事が出来ない、と。

 どうやら空腹の痛みは何処かに押し付ける事が出来ないらしいのだ。 

 その時のテトネの表情を思い出すべく、記憶の深海をサルベージしていたクラウスは、非常に珍しい事に目の前の現在の彼女の視線に気付くのに数十秒程遅れた。

「珍しいね、アスがすぐに気付かないなんて。随分、集中してたみたいだけど…………何か考えごと?」「ああ、うん。少し昔の事を思い出していてね……。大した事じゃないよ」

「ふ~ん。…………ボク、邪魔しちゃった?」

「まさか。今のは気付かなかった僕に非が有るよ。それで、食事はもう良いの?」

 満面の笑みを貼り付け、先程とは別の理由で潤んだ瞳を輝かせて、テトネは首肯した。

 常に自由奔放なイメージのテトネだが、当然の事ながら日常生活の中では遠慮を見せる事が多々有る。テトネは悪魔どころか、大抵の人間と比べても異様な程思い遣り深い。少なくとも見ず知らずの他人に、純粋な『優しい嘘』が吐ける程度には。その程度の事とも言えるが、同じ事が出来る悪魔が一体どれ程存在する事だろう。しかし、そんなテトネでも食事に関しては、遠慮を見せた事が皆無だった。それは、テトネが食事に関しては、一切嘘を吐かないという事でもあった。

 その事を知り尽くしているが故にクラウスは、彼女の笑顔に深い安堵と喜びを得た。

 食事の代金を清算しようと財布を取り出したクラウスに食堂の主人の声が掛ったのは、それから程無くしての事だった。

「旅人さん、御代はいらないよ。その代わり、旅先でこの食堂の事を宣伝してくれれば良い。御代なんて取ったら申し訳ない。……それで…………これから何処へ行くんだね?」

「一日二日この国を巡ったら、また何処かに行きます。何処の国へ、というのは無いんですが…………取り敢えずは北の方へ」

「……北!? 旅人さん、正気かい?……そうか、旅人さんは知らないのか。『あの国』の存在を」

「『あの国』? それって……ダルグゲロスの事ですよね。この国から北に在るんですか」

「……知っていたのか。……そうだ。『あの国』はこの国から北に少し行った所に在る。最低の奴らが住む、最低の国さ。旅人さん、悪い事は言わない。東に行くべきだ。この国に立ち寄った旅人は皆、そうする」

「そうですか。…………どうも有難う御座います」

 クラウスは食堂の主人に一度だけ深く頭を下げると、微笑を浮かべて背後を振り返り、相棒の様子を確認した。そこには、準備万端の状態で待機を継続しているテトネの姿が在った。この動きの機敏さも満腹効果の影響だろうか、などとやや失礼な事を考えながらクラウスは、テトネの手を取った。

 食堂の主人に何かを告げる事も無く、二人は静かに店を出た。

 非常に珍しい事に、テトネの満腹後にもクラウスの財布は重たかった。


 クラウス達が国の中心に在る純白の巨大塔型建造物に、引き寄せられるよう辿り着いたのは、それから十数分後の事だった。塔を形作る純白の壁は氷のように滑らかで、入口なのだろう巨大ゲートの表面にだけ唯一、恐らくその塔の固有名詞なのだろう『雪の塔』の名が深く刻み込まれていた。

 ゲートを眼前にして二人が呆然と立ち尽くしていると、突如ゲートが僅かに開き細いフレームの銀縁眼鏡と白衣で完全武装した研究者風の青年を一人、塔内部から吐き出した。

「旅人さん方ですね?ようこそ、『雪の塔』に。私、政府直轄特殊研究施設『雪の塔』の最高責任者、テルル・トルクと申します。どうぞお見知り置きを」

 友好的な態度でそう告げて来た青年に対して、クラウスも社交辞令を一通り返す事で答えた。ちなみに堅苦しい挨拶を最大の苦手とするテトネは、小柄な自身の体型を最大限に生かしてクラウスの陰に隠れていた。勿論、その程度の事で完全に姿を隠せる訳など無いのだが、テルルはテトネの態度を敢えてスルーすると、クラウスへ質問を始めた。

「旅人さん方は一体、『塔』にどのような御用が御有りで?」

 丁寧な言葉使いとは裏腹に、その問いには露骨なまでの警戒心が込められていた。しかし、彼が『研究者』という人種である事を踏まえれば、それも当然というものだろう。旅人の突然の訪問だけでも十分に緊急事態なのに、加えて訪問者達の意図が全く不明なのだ。警戒しない方が異常と言えるかも知れない。その心情を痛い程理解しながらも、クラウスは敢えて彼に思考の整理の時間を与えなかった。

 テルルの訝しげな視線を真っ向から受けたクラウスは、欠片も動じる事無く淡々と自らの彼に要求を告げた。その要求には、テルルを唖然とさせるだけの効果が有った。

「一体、この国は何を行う気なんです? 僕達はそれを聞きに来ました。勿論、秘密は喋りません」

「…………何故、この国が何かを始めると思うんです?」

「この国の住人が皆,変に緊張しているんですよ。旅人は危険な空気に敏感なんです」

「……成程。………………最初に一つ、申し上げます。確かにこの国は……正確には我々ですが……とある『極秘計画』を推進しています。しかし、『計画』によって貴方達に被害が及ぶ事は絶対に有りません。……旅人さん方を追い返すのは難しそうだから話します。絶対に秘密を漏らさないと誓ってください」

「誓います」

「お嬢さんも誓って頂けますか?」

 ビクッと背筋を震わせ、小動物のようにコクコクと頷くテトネに姿に、テルルは毒気を抜かれたように

苦笑した。彼に誘われて、クラウス達は『雪の塔』、『計画』の中枢へと歩みだした。十分後、クラウスは自らの選択の愚かさを悔やむ事となる。それ程までにテルル達の『計画』は、異様で異常で、人間らしい狂気に満ちていた。


「『計画』の正式名称は『ダルグゲロス寒冷攻撃計画』と言います」

 そんな一言から、テルルは『計画』の全貌は語り始めた。

「この国は遙か昔から現在まで、北西に在るダルグケロス自由共和国に悩まされてきました。あの国は私達の平和を脅かします。私達は何度も、自分達の身を守る為に戦いました。しかし、無意味で不条理な戦いなんて、この国の国民は誰も望んでいません。ある時、この国の首相が私達に命じました。ダルグゲロス人を一人残らず殺せる兵器を開発しろ、と。それは不可能に等しい命令でした。私達、研究者は巨大な大砲や回転戦車などの新兵器を次々と開発しましたが、それらの兵器にはダルグゲロス人を皆殺しに出来る程の性能は有りませんでした。しかし一年前、私達は遂に、『氷霜牢獄爆弾』の開発に成功したのです。この爆弾は爆発すると、爆心地から半径十キロを氷漬けにします。これでダルグゲロスのゴミ共は一掃されます。分かりますか? 旅人さん。私達に恒久的平和が訪れるのです。この『雪の塔』は『氷霜牢獄爆弾』を発射する巨大な砲の役割も果たすんです」

 そこまで話すと、テルルはクラウス達に目を遣り…………二人の唖然とした表情が予想通りだったのか、満足気な笑みを浮かべた。そして、親に買って貰った玩具を自慢する子供のように、無邪気な表情を浮かべて二人に問い掛けた。

「この塔の先端には『氷霜牢獄爆弾』の発射装置が有るのですが…………見学しますか?」

「……結構です」

 クラウスは絞り出すように答えを返すと、疲れた顔でテトネを見下ろした。クラウスの視線の先、テトネは彼を見上げていた。その紫の瞳には、明らかな呆れの色が浮かんでいた。鈍い輝きを放つ銀髪を片手で緩やかに掻き上げながら、クラウスの視線に自らのソレを絡めるテトネの、紫の瞳には確かな呆れの色が浮かんでいた。クラウスは緩やかに首を振ると、テルルが引き留めるのも構わずに踵を返した。その隣には、当然のようにテトネの姿が在った。

 

 二人が出国手続きの為に城門を訪れたのは、それから三十分後の事だった。

 言葉の限りを尽くして、進路を北西に向けないように警告する出国審査官を片手で振り払いながら、クラウスは高い城壁を見上げた。クラウス、とテトネが躊躇いがちに自らの相棒へ声を掛けた。

 クラウスは言葉の代わりに、見たものを安心させる穏やかな笑顔をテトネに注いだ。

 答えるように、目を細め、口を三日月に歪めるテトネ。

 出国書類が受理されたのだろう、巨大な城門が軋みながら解放された。

 二人は自らの視線を一度、城門から覗く果てなき大地と、自身の背後に広がる町並みへ、それぞれ向けると再び視線を合わせた。

 そして二人は城門へ、揃って一歩を踏み出した。

 右手と左手で固く繋がり合い、二人は寄り添うように城門という境界を越えた。

 そして二人は、旅立った。

 




 それから一ヶ月後の新月の夜の事。

 午前零時、ゲルグダロス平和共和国は『ダルグゲロス寒冷攻撃計画』の最終段階に入った。

 ゲルグダロス平和共和国の中心に建つ『雪の塔』の先端から、『氷霜牢獄爆弾』の搭載されたミサイルが稲妻のような轟音と青白い輝きを伴って、ダルグゲロス自由共和国の中心地へ向かって発射された。

 同時刻、ダルグゲロス自由共和国は『ゲルグダロス灼熱攻撃計画』の最終段階に入った。

 数多の理不尽な『死』を抱え、音の速さを越えてミサイルは飛翔した。

 ダルグゲロス自由共和国の中心に建つ巨大な搭状建造物、『炎の塔』の先端から、ダルグゲロス自由共和国の研究者達が苦心の末に開発に成功した、爆発すると爆心地から半径十キロを炎で包む爆弾、『灼熱業火爆弾』の搭載されたミサイルが火山噴火のような轟音と真紅の煌きを伴って、ゲルグダロス平和共和国の中心地へ向かって発射された。

 数多の不条理な『死』を抱き、夜闇を切り裂きミサイルは飛翔した。

 二発の、『絶望』が詰め込まれた鋼鉄の塊は、愚直なまでに、目的地へ最短コースを突き進んだ。 

 そして…………二国の中間地点の遙か上空で、『氷霜牢獄爆弾』と『灼熱業火爆弾』は……衝突した。

 衝突時に発生した莫大な衝撃によって、二つの爆弾は同時に起爆した。

 解放された膨大なエネルギーは衝突点から半径二〇キロの気象に甚大な影響をもたらした。

 ミサイルの衝突点を中心とした半径二〇キロ圏内は、『領域』と名付けられた。

 

 それ以来、『領域』内では春のような気候が続いた。

 雹が吹雪く事も、太陽が照りつける事も決して無かった。

 ゲルグダロス平和共和国とダルグゲロス自由共和国は、双方の政府のよって解体され、『領域』にゲルグゲロス平和自由共和国が誕生した。

 必然から生まれた偶然によって、彼らは一つに結ばれ、『恒久平和』を手に入れた。

 少なくとも、それは否定出来ない『真実』だった。

 果たしてそれが『事実』かどうか、今はまだ誰も知らない。

      




「ねえ、アス。アスは他人ひとを殺してでも守りたいモノって有る?」 

「……君かな、愛する僕の相棒さん」

「…………えっ、ボ、ボク? ………………アリガト、嬉しいよ………………、でも」

「テトネ?」

「………………でも、ボクはアスに人を殺して欲しくない」

「……分かってる。……だから、テトネも勝手に何処かに行かないでよ?」

「…………ボクの居場所は、何時だってアスの隣だよ」

「……有難う。……君が来てくれて本当に良かった」

「なっ、突然そんな事言わないでよ! …………お、驚くから……」

「御免。つい、真っ赤になった君が見たくなって……余りにも綺麗だから」

「だ~か~ら、急にそういう事言わないでって! 恥ずかしいから!」

「御免御免。でも仕方無いんだ。君の事を想うと胸が張り裂けそうで……

「…………アス、本当は分かってるよね? 意地悪だよ、アス!!」


 早鐘を打つ胸の鼓動を必死に隠す少女悪魔と、彼女の『従人』。二人の旅は、まだまだ続く。

    

 書き上げる前にミスで二度、文を消してしまいました。

 愚か極まりないと恥じております。

 次話では、ついに新キャラが登場する予定です。

 誤字脱字が有りましたら御免なさい。

 読んで下さって、どうも有り難う御座いました。

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