第2話前編 動揺
静寂が広がる空間。時が止まったような感覚の中、胸の鼓動だけが加速している。
(どうしよう・・・。告白しちゃった。)
そう、私、織城 伽耶はクラスメイトの鳳宮くんに告白してしまった。
火照った体。今私どんな顔してるのかな?
鳳宮くんに初めて会ったのは入学式のときだ。
中学の頃は周りに特別扱いされ恋愛どころか、孤独さえ感じていた。
高校に入っても変わらないのかな?と、不安はとても大きかった。
しかしその不安は一瞬にして消え去ってしまった。
私が迷っていると、
「どうしたんだ?」
初対面なのにタメ口。私にとっては凄く新鮮で嬉しかった。
たまに見かけると、いつも楽しそうに友達と話している。
その優しい笑顔にどんどん惹かれ、いつの日か淡い恋心を抱いていた。
これが私が彼を好きになった経緯。
そして今、告白してしまった。
彼の返事は・・・。
「・・・。ごめん・・・。」
聞いた瞬間涙が溢れた。そしてその場から駆け出した。
気づけば屋上に来ていた。
「やっぱりここにいた。伽耶。」
声の主は、石上 真矢。陸上部のエースで私の親友。
「もうびっくりしたよ。秀夜に告るなんてさ・・・。あいつと私と統間は幼馴染だからさ・・・。」
「真矢ちゃん・・・。私、フられちゃったよ・・・。」
涙が止まらない。でも真矢ちゃんは優しく頭を撫でてくれた。
彼女の涙を見て、罪悪感と同情が胸を埋め尽くすような思いの中、俺、鳳宮 秀夜は彼女らを眺めている。
すると後ろからそっと頭を抱きしめられた。
今日編入してきたリヴィアンの1人、藍絡 苑。あの変態お姉さん系の人だ。
「分かってるわよ。あんたは優しいから・・・。不器用なだけ・・・。」
「彼女を巻き込む訳にはいかないから・・・。」
そして屋上を後にした。
それから数日間、毎晩のように道化の退治に出かけるようになった。
小さいやつは簡単に倒せるようになった。
しかし今晩は違った。現れたのは、この前の道化と同等の大きさだ。
「あの時は必死だったから倒せたけど・・・。」
道化は様子を伺っているのか、襲ってこない。
「道化って姿形はバラバラなんだな。」
「そうや。骨格の顔っていう共通点以外はな。」
俺の質問に答えたのは、うちの学園に編入してきた内の1人だ。
弧我 侵児。関西弁のおかっぱ男だ。
その他にも、いつも冷静な眼鏡男の新堂 雪彦。誰にでも敬語で接する男の後輩キャラ、菅咲 射弦。ほのぼのしていて、何かあるとすぐに謝ってしまう女の子の八草 虜香。戦いに執着するワイルド男、罹 恐輔。
それに藍絡 苑が一緒に居て、俺の戦闘の様子を見ている。6人とも声は掛けるものの、戦闘には参加していない。つまり俺と道化の1対1という訳だ。
道化が動かないなら、こっちからいくまでだ。
俺は刃器を構え、道化に斬りかかる。斬道は顔の骨格。
骨格は唯一道化を消滅させられる部位だ。そこが弱点。
この道化は『ヴィダン』と呼ばれ、自我を持たない怪物型の道化だ。
道化や俺たちリヴィアンはそれぞれ『道力』と呼ばれる力を持ち、『死圧』よって力の圧力を制御している。死圧が高ければ高いほど死に近くなる。
まだ素人の俺は、双方の制御が出来ない為、力だけで道化と闘っている。
そのため、ちょっとやそっとの攻撃では、道化に致命傷を与えることが出来ない。
俺の攻撃は骨格に弾かれてしまった。
「くそっ。何で効かないんだよ。」
すると道化は遂に動き出した。俺の目の前まで来ると口を大きく開いた。
「・・・へ?」
「危ないっ!」
咄嗟に藍絡が飛んできて、俺を掴んで道化の視界から外した。道化の頭上に飛んだ俺たちは下を見下ろす。
道化は口に道力を集め始めた。道力は小さなドス黒い球体を形成した。
その球体を道化が一度呑み込んだ次の瞬間。道化の口からエネルギー砲的なブレスが発射された。
「えぇぇぇぇ!何だよアレ・・・。」
「『道煌』よ。」
「道煌?」
「そう。道化の技よ。凄い破壊力でしょ?」
破壊力って・・・。おいおい、あんなの受けたら木っ端微塵だって・・・。
結局道化は6人が片付けた。
基地に戻ると、団長の鬼能原さんが俺に言い放った。
「鳳宮さん。君には3日で道力と死圧を身につけてもらいます。」
「・・・。はい?」
こうして3日特訓という、短そうでくそ長い特訓が始まった。
まとめのあとがきは、後編で書きます。