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東方陰変録  作者: kotatu
東方祟り録
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第1話 パチュリー・ノーレッジの憂鬱

紅魔館・大図書館 午前12時 (新月まで3日と8時間)


「小悪魔、紅茶を二つ用意してきて。」

「嫌です。たまには自分で淹れてください。もやし様。」

…小悪魔が最近反抗的だ。50年間ずっと私のパシりとして働いてくれたのに、微量に残念だ。

「私は動かない大図書館の称号を守るために忙しいの」

手のひらから高等の魔法陣を浮かび上がらせ、小悪魔に向ける。

「了解しました!パチュリー閣下!紅茶を淹れさせていただきます!」

逃げ足で厨房に行ってしまった。手のひらから出ていた魔法陣は既に粉々に砕け散っている。私が放つ魔法の力は魔法陣の大きさで決まる。私がいくら魔女だからと言って、何の用意もなしにすぐさま強力な魔法が撃てるわけでもない。

さっきの魔法は魔方陣を作るだけの威嚇用の魔法。見せかけゆえに魔法を放つよりかなり魔力の消費を抑え、高等な魔法陣を相手に見せてやれることが利点だ。小悪魔は驚いてくれたが、これが通用するものは幻想郷にあまりいないだろう。

魔法を知らないものが見れば、大きな魔法陣を見たところで逃げることはしない。さっきから本を読んでいる5人の客に試してみたが、無反応で投げかけられる視線が痛かった。

魔法を熟知しているものが見れば、この魔法陣からは何も出ないことが見抜かれる。この魔法に引っ掛かるのは中途半端に魔法の知識を身につけた者だけで使い道があまりないなのだ。

「パチュリー様~。紅茶を二つ淹れて来ましたよ。」

小悪魔が戻って来た。時間には、まだ20秒ほど余裕がある。

「ありがとう。それとあの子たちを図書館の奥に下がらせておいて。」

「はい?まあいいや、皆さんこっちに来てくださ~い。」(あれ?1人足りない…?)

残り5秒、4…3…2…1


…0!


「パチュリー!本を借りに来たぜ!」

ガシャーン!パリン!パリン!パリン!


盛大に窓ガラスを破壊して泥棒・霧雨魔理沙が侵入した。だが、ここまでは予想通り、窓付近に2つ、壁、天井、床に1つずつと図書館の端に配置していた計6つの魔法陣を同時発動させ、5つの魔法陣から、赤、青、緑、黄、紫の5つの魔力の結晶が魔法陣から浮かび上がる。


「スペル、火水木金土苻『賢者の石』」


どんな魔法でも名前の前に「スペル」と言えばその魔法はスペルカードになり、幻想郷のルールに乗っ取った手加減攻撃ができる。

魔理沙の背後、頭上、真下、側面、からの賢者の石の弾幕と図書館の端に設置してある長距離狙撃用のレーザー発射魔法陣、計4方向+aの弾幕が魔理沙を襲う。魔理沙がついに被弾する時が来たかに思われた。しかし、魔理沙は動きは私の予想を大きく超えていた。

長距離レーザーを紙一重で避け、それと同時に魔法陣をレーザーで撃ち抜いていた。残りの賢者の石が放つ弾幕は箒に乗って逃げると思いきや、必要最低限の動きだけで避けていく。今日の魔理沙はいつもと違い、好戦的ではなく、冷静だった。5つの賢者の石が放つ弾幕の隙間を掻い潜った魔理沙のマジックミサイルは残りの賢者の石全てを捉え、破壊していた。

状況は絶望的だったが、これ以上魔理沙に本を盗まれるわけにはいかない。


「まだよ!スペル!水苻『ジェリーフィッシュプリンセス』!」

「諦めが悪いと嫌われるぜ?光苻『ルミネスストライク』!」


大量の雨粒の弾丸と大型の光弾が激突する。はずだった。


「図書館は喧嘩する場所じゃないの!!」


来客の1人のチルノが2つの弾幕の間に割って入ってきた。


「チルノは引っ込んでなさ…い?」



パキッ!ピキッ!パキ!


信じられない光景が広がっていた。チルノに直撃したはずの私と魔理沙の弾が氷ついていた。氷ついた弾に放った弾が当たる度にその弾まで氷漬けになり、あっという間に私と魔理沙の弾幕は、氷漬けにされてしまった。一体この氷精はいつの間にこんな力をつけていたのか?私の教えた魔法にこんなものはなかった筈だ。こんなにも強いのになぜ、私に「魔法を教えて」と頼み込んだのだろうか?自分の放った弾幕が無力化されることは本来あり得ない。こんなことができるのはスキマ妖怪だけだと思っていた。未だに実感が湧かない氷精の力を目の当たりにしても魔理沙は落ち着いていたが、ニガムシを噛み潰したような顔をしていた。


弾幕ごっこが終わり、避難していた残りの4人の来客がチルノに集まって来た。

「ちょっと、チルノちゃん!危ないよ!」

「全くあんたは命知らずなんだから。大ちゃんの心配を考えてあげなさいよ。」

「そうだったの?ミスチー!?えっと…。心配かけてごめんよ大ちゃん。」

「ううん、チルノちゃんが無事だったらそれでいいんだよ。」

「まぁ、図書館は本を読む場所なのは間違ってないし、チルノが止めに入るのも無理はないかな。」

「チルノと大ちゃんが仲直りしてるのに、ゴキブリが何いい感じでまとめて上げてんの?」

「え…。そんな雰囲気だったの?そこまでシリアスではなかったよね。大丈夫だよね?ねっ?ねっ、ルーミア?」

「ゴキブリのことはどうでもいいとして、パチュリーさんおやつはまだなのか~?」

「…ルーミア…君もなのか…?」


「小悪魔、お菓」

「お断りします♪」

満面の笑みで断ってきた。

「私が氷精を遠ざけなかったから図書館の被害が減ったことですし~。本来なら褒美を貰いたいのですが~。私はこう見えても心が広いんで、パチュリー様が一回だけでも自分で動いてくだされば、私は褒美など要りませんよ~?」

小悪魔はやっぱ小悪魔だった。私は自分で動くぐらいで褒美を渡さないで済むなら断然そっちがいいに決まってる。


「魔理沙さん、魔理沙さん。」

「どうした、小悪魔?」

「今なら、パチュリー様はいないからチャンスですよ」

「あぁ…そうみたいだな…。」


お菓子を片手に図書館へ戻っている最中なのだが、久々に歩くといろいろ辛い。図書館からキッチンまでの往復で5回以上は立ち眩みしてる気がする。たまには美鈴に体の動かしかたを教えて貰うべきかも知れない。

そんなことを考えながら図書館に着いたら、魔理沙とチルノの姿が消えていた。

大妖精に聞いたところ、魔理沙は数冊の本を持ち去り、割った窓から出ていったらしい。小悪魔は全くの無傷でそっぽを向いて口笛を吹いている。恐らく魔理沙に協力したのだろう。後で魔法の威力測定の実験台になってもらおう。


(これも魔理沙らしくない。行為は泥棒だが、彼女はいつもなら私に見える時に堂々と本を盗んで行った筈だ)


チルノはいつものように人里へ店を出しに行ったみたいだ。いつも常連が来ると言っていたが、あの子の店が繁盛するとは到底思えない。

私がチルノの実力を怪しんでいるのを察したのか、大妖精がこんなことを言い出した。

「パチュリーさん。チルノちゃんが強くなろうとする理由がちゃんとあるんです。」




大妖精の話を聞いて出た答えは

「チルノに言っておいて、今日から3日間は図書館の出入りを禁止するってね。当然あなた達もよ。4日目になったら5人全員図書館へ来なさい。話したいことがあるわ。」

「えっ?パチュリーさん、それは今じゃダメですか?」

「そうね。急用ができたからね。それと小悪魔、3日だけ休暇を貰うとレミィに伝えておいて。それと動かない大図書館の称号は剥奪かもしれないわ。」

「あ…はい」

(パチュリー様なんかマジになってる…)


溜め息しか出ない…。

大妖精いわく、チルノと魔理沙は春に一度、弾幕ごっこをしたみたいだ。

結果はチルノの勝利に終わった。この部分だけでも衝撃的だった。あの魔理沙を倒すのが氷精だとは夢にも思わなかった。更に驚いたのは


『あの魔理沙が本気を出していないと言い訳したことだ』


チルノは次に魔理沙が本気を出して弾幕ごっこする時に勝つために力を欲しているみたいだ。

大妖精は魔理沙の行為をひどく気に入らず、妖精が異変を解決してきた専門家に勝つためにどれだけの努力をしてきたことか。大妖精にとって魔理沙の言い訳は親友の努力を嘲笑ったようなものだった。

これで魔理沙の様子がおかしかった謎が解けた。箒を使った高速移動をしなかったのは、自分の力に自信が持てず、被弾しまいと臆病になっていただけ。高速移動が出来ない今の魔理沙なら巨大火球弾幕の「ロイヤルフレア」1発だけで仕留めれる。こそこそとした泥棒行為も相手に必ず勝てる自信の喪失からの行動だろう。

何ごとにも真っ直ぐな彼女がする行動とは到底思えない。紅霧異変で私を倒したのは、地底の間欠泉異変で私が力を貸してあげたいと思えたのは、誰よりも努力をし続ける魔法使いは、私が憧れていた魔法使いは、そんな腰抜け魔法使いではない。私はそんな魔法使いに負けたつもりはない…!



「憧れの対象が見る影もないくらい腑抜けている。」

動かない大図書館が腰を上げるには充分過ぎる理由だった。



これから先はただの説明です。

魔理沙とパチュリーの魔法の違いついて説明させてもらいます。

魔理沙

・魔力そのものを好きな形にして、射出してるから魔法陣を必要としない

・殺傷力はあまりない。(ミニ八卦炉を使った技は除く)

・魔力の供給は基本的に魔法の森のキノコから


パチュリー

・魔法陣による魔法の威力の強化、属性の限定によって殺傷力があるため「スペル」と言わないといけない。

・魔法陣の構築、維持、目標への標準、弾幕の発射、それぞれ魔力を使うので、燃費が悪い。

・「自分の体内に魔力を溜め込む最大値の増加」「魔力を体内で生産する」為に自らに魔法をかけて弄ってる。これが魔法使いと魔女の差と言われている。


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