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着物と私と恋愛心  作者: 茶とら
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これがはじまり?

「付き合ってくださぐふっ!?」


 今ここで初めて出会った直線的な形で細いフレームの眼鏡が知的に見える優しげな顔立ちの青年が、突然キラリとその眼鏡の奥に宿す目を輝かせ、バッ! という勢いのある動きで私の右手をとって吐き出された言葉は、あっさりと別の人物の妨害により中断された。

 妨害者はほぼ週に一度のペースで顔を会わせている人物である。

 優しげな顔立ちの見知らぬ青年と比較すれば、そんな青年よりも鋭利で冷やかな印象を与えるすっとした整った顔立ちをしている美男子である。

 その彼は間違う事無く我が実妹の旦那、つまり義弟であった。


「良いでしょう。それなら私が相手になって差し上げます」


 意味のわからない事を言いながら相手の頬を片手でもって押しつぶすようにして強制的に中断させるという強引な手法をとったこの義弟は、その整った顔に優雅な笑みを浮かべながら相手を射殺さんばかりに睨みつけている。

 だが、相手の言葉を阻止した手とは逆の手でパシリと私の手を掴む相手の手を叩き落とし、その後何故か自身の手を私の手の指を絡めるような甘いしぐさでもって握ってくる。


「ちょっと! 二人ともお姉ちゃんに近づかないでよ! 穢れるわ!」


 それを今度は実妹がふんぬっ! という勢いで離し、男二人と私との間に入り仁王立ち。

 そして男二人に睨みをきかせてぷんすこ怒るも、少しキツ目の顔立ちをしている私とは違い、おっとりした感じの顔立ちをしている妹が怒ったところで可愛さは上がるも怖さは全く出ていないので、怒って効力があるのか無いのか微妙な感じになっている。


「そうです! まこさんはレンのなのです!」


 そして最後にそんな大人の事情を完全無視して私の腰に抱きついてきたのは、どこか尊大な言動が可愛らしい私の姪っ子だ。

 少し茶色っぽい髪質の長い髪をツインテールにして、愛らしい頬をぶうっと膨らませて母親同様ぷんすこしている。

 そんな愛らしい姪っ子にぎゅっとされれば思わず私もそうしてしまうのだから、なかなかもって侮れない愛らしさと言う名の凶器。

 可愛さは正義とはまさにこの事かと思った瞬間である。

 そんなどうでもいい事を思っているだけの私を完全に無視するように、状況はヒートアップしていった。


「そうです。我が自慢の娘のものは私のもの。嫁のものは私のもの。つまり義姉さんは私のものですので、君には差し上げません」


「ちがうのです! レンのなのです!」


「こら! お姉ちゃんは私のお姉ちゃんなのよ!」


「あだだだだ! ギブッ! ギブです先輩!!」


 もう相当カオスな状況である。

 閑静な住宅街の一角に建ついたって普通の一軒家の一つである我が家こと雨宮家。

 インターフォンが押されて来客を告げる音が鳴り、その来客を迎え入れようと玄関の扉を開けてすぐに始まったこの状態に、私は思わず遠くを見た。

 遠くを見たところで家の壁しかないのだが。

 寝ぼけて上手くうごいてないのかなと思うほどにやたらと回転速度の落ちた私の頭を強制的に動かしてみたはいいものの、このカオスな現状に結び付く結論を見つけることは出来なかったので、結局考える事を全て放棄し視線を元にもどしてため息をついた。


「あー。とりあえず皆落ち着こうか」


 ヒートアップする騒がしさを抑えようと思って言った言葉は誰の耳には入っていなかったようで、仕方ないと肩をすくめて、可愛い姪っ子を抱き上げて言った。


「これ以上騒がしくしたら、――――埋めるよ?」


 こんな馬鹿げた出来事が私、雨宮あまみやまことの人生を変える始まりでした。

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