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イリーガル・コール  作者: 山吹
Ver1.25
9/37

ネコ達の晩餐的な、

多くの感想ありがとうございます。感想頂けるとうれしいですねぇ、ちょっと短めですがUPしました

声だけを聴けばコントのような、動きだけみれば紙一重の見切りのような、どこかアンバランスな攻防を繰り広げるフーレンスジルコニアスと句朗斗の近くでは、これまた不思議な攻防が繰り広げられていた。


フーと威嚇しながら鈴をチリチリと揺らすネコ精霊に、怖くないにゃ~♪とネコじゃらしをパタパタと振り続けるニャンデスト。もう数えるのも馬鹿らしい程に失敗してきたテイムスキルを発動するが、やはりネコ精霊に変化は無い。弱らせてからテイムをするのは知っている、しかしどうしても彼らに攻撃ができないでいた、これから仲間になろうというのに攻撃などできるものか。きっと判り合える、きっと仲良くなれる、その時こそ誰にも負けない関係が築けるはずだ。

2年にも渡って信じてきた信念、いままでの努力は今この時の為にあったんだと、ニャンデストはネコじゃらしを振り続ける。


そんなニャンデストが、チラリと初めて目の前のネコ精霊と視線が合ったような気がしたのは、気のせいだったのだろうか……。



あまりの怒りに思わず連射できたが、その後はやっぱりと言うか無属性ベーシック弾でも反動に身体が持っていかれてしまうフーレンスジルコニアス。精霊魔術で足止めしようと『氷の束縛(アイスチェイン)』を撃ってみるも、LV差からか簡単に砕かれてしまう。そんな彼女の姿に言い難そうにしながら、句朗斗くろうとが話しかける。


「レアちゃん、その呪印銃スペルガンの事だけど、何度か受けてみて(パリィしてみて)思ったんだけど、その銃のノックバック判定ってとんでもなく高く設定されてるかも。それこそユカさん(ユカリアス)の大斧に匹敵するくらいの」


その言葉にキュッと唇を噛むフーレンスジルコニアスに、追い討ちをかける様に句朗斗の説明が続く。


「それだけのノックバック判定を持ってると、その反動数値をエルフの力ステータスで抑え込むのは恐らく無理だと思う。それに呪印銃スペルガンを持っていてもエストドワーフ達に滅ぼされたってことは、ロードエルフ達はその銃を、その……使いこなせ(・・・・・)なかった(・・・・)んじゃないかな」


その言葉にもフーレンスジルコニアスは振り返らない、止まる事無く続く句朗斗の攻撃も滞ることなく回避し続ける。その様子に薄々感付いていたのかと、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる句朗斗。


一番最初ウキウキと片手で構えて撃った時には、まるで腕が千切れるかという反動を味わった。次に両手で構えて撃っては地べたを転がり、壁を背にして撃ってみれば両腕が麻痺(スタン)して大事な呪印銃スペルガンを落としてしまった。

解っている、理屈ではない、エルフの腕力では呪印銃スペルガンの反動を支えられないように設定(・・)されている。冗談ではない、解ったからといって受け入れられるかは別である。

悔しい、2年以上もの月日を賭けてやっと手に入れたのに、動画のエルフはあんなに軽々と連射して(・・・・・・・)いたというのに(・・・・・・・)

いつかはあんな風に舞う様に撃ってみたい、しかし、まともに構えて撃つ事すら出来ないのに今の自分に出来るわけがない。


目にいっぱいの涙を浮かべつつフーレンスジルコニアスは避け続ける。動画の映像と今の風景が重なり、焼け付くような感情が渦巻く。何で彼女には出来て自分には出来ないんだと、暗い感情が浮かんだ時、フーレンスジルコニアスは1つの事に気が付いた。


動画の中のエルフに、一度として(・・・・・)構えて撃って(・・・・・・)いる姿が(・・・・)あっただろうか?(・・・・・・)


その事実に気づいて思う、本当に彼女は軽々と撃っていたのだろうかと。その考えに至った時、ストンとフーレンスジルコニアスの中で確信めいた閃きが浮かんだ、パァァっと顔を輝かせながらグリップ横の弾倉リリースボタンを押し、新しい弾倉へと入れ替える。


「句朗斗さん、今から攻撃をします。必ず全弾避けて下さいね(・・・・・・・)

「え?」


クルリと振り向きざま空中から最初の一発、くるくると回りながら初撃とは反対の側面から次弾が発射されると身体の回転は収まり、フワリと着地する。真上にジャンプしつつ3発目、その反動を利用して更に上昇しつつクルリクルリと舞う様に4発目5発目が襲い掛かる。


反射的に右手の短剣で回避パリィする、同時にノックバックが発生するがそれは移動制限と右手の動きだけ、続く2発目に驚愕しながらも次弾を左の短剣で弾き飛ばす。しかし、目の前の光景に句朗斗は絶句する。連射したフーレンスジルコニアスが体勢を崩す事無く、更に3発目4発目と続け様に撃ち出してくる、テイムされた身体と自身の思考が一致したからか、いつもより一拍遅れていた動きが、その瞬間いつもの速度を取り戻す。

回避パリィで弾かれ硬直する右手の位置を弾道予測の位置に予め誘導して置く、その間の次弾に左で対応し同じように位置を調整する、襲い来る攻撃にノックバック中もその短剣が移動して対応する上級プレイヤースキル『理不尽な(リロジカル)回避(パリィ)』、チリチリとする感覚の中で7発目をどうにか両手の双剣で弾く視線の先で、呪印銃スペルガンの銃口が尚も句朗斗を捕らえていた。


7発全弾(・・)を撃ちつくしたフーレンスジルコニアスが、呪印銃スペルガンを構えて吐息をつく。どこかうっとりとした視線を向けながら、句朗斗に向けバンッと言いつつ銃口を持ち上げる。


「チェックメイトです」


フーレンスジルコニアスの言葉に反応するように、弾き飛ばされた7つの弾丸から句朗斗の双剣に向かって氷柱が生成される。ピキピキと軋む音をさせながら、句朗斗は氷に束縛されその場に縫い付けられた。


「こ、これは?!」

「初級精霊魔術『氷の束縛(アイスチェイン)』×7です。流石に句朗斗さんでも7つ同時にかけられれば動けないでしょ♪」

「ハハ……確かに」


やっと本来の使い方を理解できた手の中の呪印銃スペルガンが、全弾射撃フルバーストの熱でキンキンと鳴っている。その音にまるで『よくやった』と褒められているようで、後でフルメンテナンスしてあげるからね!と微笑み返すフーレンスジルコニアス。


「あれ、テイムが解けてる」


句朗斗の呟きにニャンデストの方を見てみれば、ウニャウニャと鳴きながらネコじゃらしにじゃれ付くネコ精霊と、泣きながら手を動かす彼女の姿が見て取れた。フーレンスジルコニアスの呼びかけに、ボロボロと泣きながらも、にししと笑って親指を立てたサムズアップを向けてくるニャンデストであった。





「寝ちゃったね」

「にゃ」


2人がかりで遊び倒した所為か、疲れて寝てしまったネコ精霊。結局この子のテイム条件は何だったのかと、ニャンデストに聞いてみると


・迷子のネコ精霊

 親ネコ精霊とはぐれてしまった可哀想な子。

 テイマーは怖いという親の教えを守ってずっと

 やしろで隠れていたが、眠り込んでしまった。

 非常に臆病な為、テイマーが近づくとアイテム

 「ママのお守り」で身を守る。

 一度でも攻撃を受けると逃走する為、テイムに

 は根気が必要となる。


・ママのお守り(ネコ精霊限定、装備解除不可)

 テイマーをテイムできるスキル「テイマーズテイマー」

 を使うことができる。

 装備者が身の危険を感じると発動する。

 テイマーが取得した魔獣の数×5=効果%の為

 上級者ほどテイムされ易い。


「決めたにゃ!私はこの子のお母さんを探すにゃ!」


ぐっすりと眠るネコ精霊を抱きしめ、決意を新たにするニャンデスト。この子のためにも転生して力を付けるにゃぁと、転生神官(NPC)へと向かうことになったフーレンスジルコニアスとニャンデスト。


「ボクはちょっとやることが出来たから、ここで失礼するね」


初テイムおめでとうと残し、逃げるようにその場を去って行く句朗斗に、近距離からの呪印銃スペルガンの連射で怖い思いをさせてしまったかと思いつつ、後でお礼も兼ねて何かしようと思うフーレンスジルコニアスであった。


その後、『古代種の都』に大きく鳴り響く歯車の音と共に、6つの尖塔がその内部からそれぞれオーブを出現させる。その内の1つのオーブを手に入れたニャンデストは、ポツリとレアちゃんに関わるとそのレア度に巻き込まれるにゃぁと溢したそうな。





翌日の掲示板で新たな古代種の話題が閲覧数を伸ばしたが、それを遥かに上回る1つの動画がアップされたという。



     20〇〇年5月18日


タイトル ボクのポケットには大きすぎらぁ


その動画にはクルッと振り返りキラッ☆ミ とポーズを決める姿と、バンッと銃身を上げたあと「チェックメイトです」と微笑むフーレンスジルコニアスが映っていたという。


・深く反省はしている、だが後悔はしないと決めた

・ぶはw俺の心にHITしたチェックメイトですw

・貫通して俺もやられたチェックメイトですwww

・マイリスト登録しましたチェックメイトです!

・ちょwおまwチェックメイトでっすwwww

・なにやってるwww

・あははははwwwお腹いたいよぉww腹筋かえせw

・さすがです、フーレンスジルコニアスさまw

  ・

  ・

  ・

  ・


1人の少女が壁に向かって体育座りで黄昏るーるるるてたそうな。




戦闘主体のシリーズを書ききりました。まだまだ表現力は乏しいですが、よくやった自分と内心で労わりたい。ホントきつかった…。

そして句朗斗は黒かったw

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