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イリーガル・コール  作者: 山吹
Ver2.5
31/37

ゴールドエクスペリエ以下略…的な、

もう絶不調でした、ぴたりと止まって一文字もかけない日々が…。

二度と次話掲載予定とか活動報告に書かないと、心に誓っちゃいましたw


NEWS 2〇〇〇年 7月28日 10:06


イリーガル・コール運営チーム


いつも弊社の運営するイリーガル・コール・オンラインをご利用いただきありがとうございます。


7月27日より実装いたしました『Wスピリチュアル』において、霊体(アストラル)の実体化現象の1件目を確認しました。

当初の予定より若干早まりましたが、霊体(アストラル)の実体化条件を公表します。


・LV60以上にて転職を済ませている

・隠しステータスの数値が一定数以上になっている


上記の2つの要素を満たしている場合、霊体(アストラル)と遭遇すると実体を持ち『同位体』となります。

隠しステータスはプレイヤー側からは数値を確認することはできませんが、この条件は普通にプレイしていれば条件は満たしております、ご安心下さい。

隠しステータスの数値は各プレイヤーのプレイスタイルにより変化し、プレイヤーの分身となる『同位体』の性格へと個性として反映されます。


『同位体』は今まで貴方がプレイしてきた時間の集大成でもあります、是非『もう1人の自分』から新たな力を勝ち取ってください。







狭い室内に無理やり押し込められたように、幾つもの工作機械が設置されている。修練に時間のかかる生産系、その中でも特に難易度が高いとされる鍛冶スキルが必須なこともあり、未だに古代種エルフになった者がフーレンスジルコニアスの他に居ない為、ここ銃職人ガンスミス工房は現在も彼女の貸切状態になっている。


骸炭コークスの燃える炎で赤く輝く簡易式の溶鉱炉を見つめながら、まだ見ぬ同族の姿を思い浮かべる。鍛冶スキルを収める為には鉱石採集スキルや金属精製スキル等も平行して習得する必要がある、多少なら露天で材料を仕入れられるが取引不可の金属等も必要になる為、結局は関連スキルも上げる事になる。


生産系のスキルは出来る人はどうにかできるが、出来ない人には絶対にできない。これは物理的にと言う事ではない、コツコツと繰り返す作業にも似た修練を苦痛と思わない人しかできない、精神的な側面を持つジャンルである。

銃カッコイイだけで習得できる物ではないため、鍛冶エルフに挑む者達の数は確実に減ってきているらしい。しかし、同時にコツコツと習得に向かって近づいている者達がいるのも事実、この銃職人ガンスミス工房が賑わうのもそう遠くない未来だろう。


そんな事を思いながらも、せっせと槌を振り下ろしているフーレンスジルコニアス。小さな槌が金床とぶつかり合う度に、甲高い音と火花が周囲へと飛び散っていく。顔に掛かった髪の所為でその表情は窺い知れないが、僅かに覗く口元は口角が上がり細い三日月のような笑みを浮かべている。周囲には無数の魔弾が転がり、微かな蒼白い光を放ちながら明滅していた。


「ふひひ、この魔弾さえ在ればアンタもイチコロよ。覚悟しなさい、ロ~ア~!」


当初は初日にして霊体が実体化した『同位体』に遭遇したフーレンスジルコニアスが話題になり、面白がったり妬みや嫉妬で多くの書き込みが掲示板に立ったが、捕まえられず逃げられた事で『同位体』が引き起こす事件に右往左往する彼女に同情する流れへと変化していった。


そして実装後1週間した頃に新たに2人目が『同位体』に遭遇し、その2日後には3人目が遭遇していたが、いずれも『同位体』には逃走されており未だその力を手にした者は出ていない。しかもフーレンスジルコニアスと同じように、逃走された発見者達は『同位体』が引き起こす事件に右往左往する事態へと発展していた。


その頃になると、流石に他人事では無くなってきた未発見プレイヤー達の間に、『同位体』を発見した際に逃げられると碌な事にならないという考えが広まり、事前に何らかの対応を用意しておくべきという結論に至っていた。

今はまだ検証段階の為、実際に何が有効であるかは解ってはいないが、妬みから同情へと変化していった掲示板は最終的に教訓的なもので落ち着いていた。




彼等の犠牲は忘れない スレ6


・スレ立て乙

・アチカさんの同位体が住人(NPC)をナンパしてたw

・あの人の本体も住人(NPC)ナンパしてね?

・してるな

・うん、で二股してたって住人(NPC)に追われてたw

・アホスwww

・倉庫にロア名義の引き出しがww

・まwwwてwww

・3人目てゴルアーノか?

・そだな

・さっきゴルアーノの同位体が定食を食ってた…

・フリーダム過ぎだろww

・ちょwマジ捕獲法plz

  ・

  ・

  ・

  ・


落ち着いていなかった…。






出来上がったばかりの魔弾を弾倉に装填し、いそいそとステータス画面を開くとFL(フレンドリスト)の項目を指で送っていくフーレンスジルコニアス。

リストの最後の行まで辿り着くと、そこにはいつの間にか追加されていた『ロア=ルー』の名前があった。実装初日に逃げられた後、ユカリアスやテンテアに相談する為にリストを開いた時に発見した際には思わずつんのめりそうになったが、その後はコレの御陰でロアを呼び出し罠にかけようとして失敗したり、逆に呼び出されて罠にかけられたりしていた。


「もしもしロアです」

「こんにちはフーレンスジルコニアスです。コホン……決闘を申し込みます!」

「また罠ですか?」

「違います、一対一の決闘です」

「……ふぅん、いいわ受けましょう。ただし場所は私が指定します」


一般フィールドの一角を指定されどんな場所だったかと思い起こしてみるが、クエストなども無く過去に行った事が無い場所だったと思い至る。同じガンナー同士だし地理的条件は同じだと考え同意しFL(フレンドリスト)の通信を切るフーレンスジルコニアス。

一通りの装備の確認をし、新しく造った属性魔弾での戦法を頭の中でシュミレートしつつ、約束の時間に合わせて転移魔法陣へと歩いていく。


「転移『西部の(the West)荒野(wild land)』」

『過去に訪れた事が無い場所への転移はできません。道は自分の力で切り開きましょう』

「!?」


行った事の無い場所への転移ができないことに気づいたフーレンスジルコニアスは、慌ててヒューニックの都市へと転移すると移動用の馬を借り受け『西部の(the West)荒野(wild land)』へと走らせる。転移移動を前提で動いていた為、既に約束の時間ギリギリになってしまっていることに酷く動揺していたフーレンスジルコニアスは遅刻しちゃうと叫びながら、風の精霊王の力を使って街中を疾走するのだった。

後日運営がその様子を動画で公式ページに上げていたが、何故か彼女の口元にトーストが追加されていたのは余談である。





「遅れてすいません!」

「遅いぞ武蔵!」

「??」

「………まぁいいわ、ちゃんと1人で来たようね。てっきり仲間でも連れてくるかと」

「そんな卑怯な真似するはずが………ない……でしょう………」


ロアの台詞にムッとして反論しかけたフーレンスジルコニアスだったが、言っている途中でその手があったかと思い至り、ポンと手を叩く。しかしその様子をジト目で見つめるロアに気づくとコホンと咳払いをしながら腰のホルスターから呪印銃スペルガンを引き抜く。

その様子にロアも表情を引き締めると同じくホルスターから呪印銃スペルガンを抜き、カチリと音をさせてセイフティーを解除する。


ロアが持つ呪印銃スペルガンは黒味の強いガンメタリックに輝き、グリップや細部にはアザーブルーの装飾が施されている。形状自体はフーレンスジルコニアスの呪印銃スペルガンと同じだが、受ける印象は大きく違ったものになっている。

決闘の場所は荒野な為、周囲には遮るものは無く身を隠せる様なものは無い。出会ってから幾度と無く銃を向け合ってきたものの、同位体だからか互いの銃弾は空中でぶつかり合い無効化し合ってしまう。弾倉に装填された新しい属性魔弾の効果を考え何度もシュミレートしてきた戦法を思い出し、見つめ合う相手の隙を窺い合う。


相手が先に動いたのか自分が先に動いたのか、確かめようも無い刹那な瞬間に気が付けば反射のように呪印銃スペルガンを構えていた。初段に撃ち合った魔弾は空中でぶつかり合い火花を周囲に撒き散らす、網膜に張り付きそうな光が収まった時には両者は既にそこには居ない。

風を纏いながら高速で移動しつつロアの側面へと回り込む、同じく風を纏っているロアだったが風属性の魔術においてはフーレンスジルコニアスの方が勝っていた。

旋回速度に物を言わせ続け様に魔弾を2発掃射するが、ロアが左手を振り上げた際にできた水の魔術の壁によって僅かばかり軌道をずらされ避けられてしまう。


チッと舌打ちをするフーレンスジルコニアスだったが、水の壁にポッカリと空いた穴から撃ち出された魔弾に気づくと左手に激しく放電をする雷を生み出し魔弾と身体の間の軌道へと差し出す。

吸い込まれるように引き寄せられた魔弾が雷球へと触れると、支える腕が弾かれそうな力が伝わってくるが、力負けする前に魔弾の方が先に弾かれ大きく逸れていった。



挿絵(By みてみん)



軌道を変えた跳弾の1発がフーレンスジルコニアスの頭を翳め、ちょっとチビリそうになりながらもロアに悟られないように表情は険しいものを繕う。互いに3発づつを撃った為、残りの装弾数は4発になる。

先程弾いたロアの魔弾は属性魔弾だったらしく、反動消化でロアが未だ空中に居るのを確認し迎撃されないように、わざと手前の地面へと4発目を撃ちだす。


フーレンスジルコニアスからの銃弾を迎撃する為に構えていたロアの目の前で、地面に当たった魔弾から眩しい光が溢れ出す。極めて初期の単なる目隠しでしかない魔術だが、至近距離から受ければ数瞬とはいえ動きを阻害するには十分だった。

避けられないと悟ったロアが腕を交差させ防御の姿勢をとる、しかし続け様に撃ちだされた3発の魔弾もまた、ロアに当たる事の無い場所へと撃ちだされているのだった。


「カハッ!」


麻痺(スタン)させることだけに特化した、これも初期から習得できる精霊魔術が付与された魔弾3発が、ロアの周囲に展開しその身体を拘束していく。


「チョコチョコ動き回る人用戦術、名付けて『チョコチョコ動けなくする作戦』です。くふふ、私の勝ちですね」

「く……暴力反対」

「ええい、問答無用。これで終わりです」


小さな雷球からの麻痺(スタン)効果のエフェクトで拘束されたロアへと近づきながら、満面の笑顔で新しい弾倉を装填しつつ勝ち鬨を宣言するフーレンスジルコニアス。散々同じ顔で好き勝手やられた所為で、いつの間にか『レア派』『ロア派』なるものができているらしく、どちらがツンでどちらがデレだとか、どっちがボケでどっちがツッコミだとか、いや両方ボケじゃね? 等々、色々と言われてきた日々もこれで終わるかと思うとホロリと頬を伝う雫が流れる。


「さよ~なら~~♪」

「いやぁー人殺しー!」


感慨に浸りそうだったフーレンスジルコニアスだったが、3つ重ねがけしてあるとはいえ麻痺(スタン)の効果は決して長くは無い。痺れて身動きできず半笑いのような表情で涙を浮かべるロアに、その呪印銃スペルガンの銃口を向けようとした時、頬を伝っていた涙の一滴がファッションアイテムとして付けられている銀の小ネコのアクセサリーへと滴った。


『ニャーーーーン』

「!?」


小ネコのアクセサリーからネコの鳴き声が聞こえると、突然呪印銃スペルガンの周囲に魔法陣と共に8本の光のスジが浮かび上がる。それはまるでネコが両手の爪で引っ掻いたようなスジだったが、見る見るうちに小さな光の槍のように変化していった。



・八つ当たり属性発動(呪い)

 発動すると8連続の強力な攻撃が追加されるが、

 代わりに8連続攻撃でしか攻撃できない。

 また使用するには敵を800体討伐して八つ当

 たり成分を補充する必要がある。

 呪いなのでデロデロという音がして装備解除は

 できなくなっている。



なんの前触れも無く発動した効果に慌てたフーレンスジルコニアスだったが、それでもロアを逃がすまいとトリガーを引こうとする、しかしガチッと音がして撃ち出す事ができない。すると警告音声で『8連続攻撃を選択してください』と促されるが呪印銃スペルガンの装弾数は7発な為、全弾発射(フルバースト)でもロックが掛かって撃つ事ができない。

よりによって何で今この時なのかとパニックになりつつも、手持ちのスキルの中で8連続攻撃が無いかと高速で思考していく。


そんな状態でも僅かな時間で唯一にして最強のスキルである七門(ソワサント・)皇帝(アンプルール)の8連続スキルを思い出したのは、女子高生という若い頭脳の成せる業だったのだろうか。

これで勝てると前提条件となる刻まれし(カースド・)烙印(ブランド)スキルの為の弾倉をアイテムインベントリーから取り出し、ロアに投げる為に振りかぶったフーレンスジルコニアスの眉間にコツリと何かが当たった。


振りかぶった姿勢で固まったフーレンスジルコニアスの眉間に当たったものは、麻痺(スタン)の拘束から開放されたロアの持つ黒い呪印銃スペルガンの銃口だった。


「………お早いお帰りで」

「御陰様で♪」

「………暴力反対」

「世知辛い世の中よねぇ」

「無念なりぃ…」

「痛快なりぃ!」


ゆっくりとトリガーが引かれていく様子を成すすべなく無く見つめるフーレンスジルコニアス、身体がクリスタル化する直前にバシャリと音をさせて何かがロアによってかけられたが、それが何なのか確認する前に強制的に復活ポイントへと飛ばされていくのだった。








「くひ!ひはははははは!!」

「ぷふ、それでまんまと負けた上に、置き土産までされたわけだ」

「レアちゃん………眩しいにゃ」

「師匠、輝いてますわ(物理)!」

「撮っていい? ………はい、自重します」

「なんつーか、慰めようがない……」

「あ~、まぁ何と言うか。何時もの事だ、そんなに気にするな」

「ずーーーーん………」


銃職人ガンスミス工房の喫茶スペースでユカリアスが笑い転げ、テンテアとニャンデストそして舞姫がクスクスと笑っている。句朗斗が例の如く動画撮影しそうになるが、フーレンスジルコニアスにマジ睨みされ残念そうに諦めている。

オスマがそのヤンキーのような外観とは対照的に慰めようとするが、現状どう慰めていいか解らず放棄する。年長者であるコーネリアスが取り繕うとするが、何気に傷口に塩を塗る的発言で追い討ちをかけていたりする。

因みにセバスちゃんは無言で拝んでいる。


さて、周囲を爆笑と苦笑に陥れている原因は何かというと、テーブルに突っ伏してイジケているフーレンスジルコニアスが『輝いている』からである。

そうまさに『輝いて』いた、ロアに撃たれクリスタル化する直前にかけられたのは一時的にアバターであるプレイヤーの外観にペイントするアイテムであり、フーレンスジルコニアスは頭の先からつま先まで全身が全て金色に染められていた。



挿絵(By みてみん)



死に戻りポイントである『古代種の都』の転移魔法陣からフーレンスジルコニアスが出ると、周囲に一気にドヨメキがあがった。何があったのかと、一瞬自分の後ろに注目を集めるような人が居るのかと振り返ってみるが後方には誰も居ない。

チラチラと見られることはあっても、ここまで奇異の視線で見つめられる事は無い。段々と不安になりつつも逃げるようにその場を後にして、足早に銃職人ガンスミス工房へと歩みを進めていたが、ふと住人(NPC)商店のガラスに映りこんだ自分の姿に、盛大に両手から地面にスライディングした。



「くふふ、ここまで強い殺意を覚えたのは初めてです。どんな手を使ってでも絶対に仕留めてさしあげます」



金色だけど黒レアになっているフーレンスジルコニアスなのであった。






まともに書けていたでしょうか?

すっごく不安な回です><;


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