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イリーガル・コール  作者: 山吹
Ver2.01
19/37

彼女の本気的な、

作者の個人的な恨みから作中にキラービー退治を入れたかったのですが、展開上入れることが出来ませんでした。

無念なり……。

新MAP最下層の『神の間』

幾つものクエストを攻略し、最期には巨大な魔獣を倒して進んできたそのダンジョン。そのMAPを形作ってきた大理石の質感を伴う外壁の上を透明なクリスタルが覆うその道程において、常にその中を流れるようにはしっていた光が集約するようにその中央に据えられた装置へと流れ込む。

集められた光達が虹色の光へと変わり『転送装置さわるな危険』と書かれた装置の中で、ゆっくりと揺蕩(たゆた)うように明滅を繰り返している。


PTリーダーのユカリアスが新システム実装時間に合わせて装置を動かし、『アーカイヴミネルヴァ』のメンバー5人、フーレンスジルコニアスとニャンデスト、そして新たに加わった黒い剣士を特別サーバーへと転送させてゆく。



ログアウト……


■■■■■■■■■□□□□ 

68%ローディング中……


イリーガル・コール・システム最適化…

時間軸乖離最適化…


特別サーバー転送中 しばらくそのままでお待ちください


……ログイン



3柱の神の1人、月光の女神フローティアは神々によって作り出された古代種達の器に生命と死を吹き込んだという。神々にとっても初めて行なう世界創造そして初めての自らの子供達の誕生に、試行錯誤を繰り返した結果、古代種達は大きく2つに分けられた。

短命種と長命種として分けられた7つの種族達は、生み出した神によりその身を包む神気(外見エフェクト)に特徴的な差が見て取れた。


3柱の神の1人、主神オーガスティンに生み出された短命種にして全ての可能性を与えられた神人には黒い神気が、長命種にして創造の可能性を与えられたエストドワーフには灰色の神気が、そして短命種にして自由な可能性を与えられたハーフブリンガーには白い神気が与えられた。


そして整合神マーノレスにより生み出された長命種にして調停と孤高の宿業しゅくごうを与えられた神竜と、短命種にして混沌と苛烈の宿業を与えられたギガンテスにはそれぞれ蒼い神気が与えられた。

最期に月光の女神により生み出された長命種にして平穏と呪印を与えられたロードエルフと、短命種にして変革と神眼を与えられたライカンスロープには虹色の神気が与えられたという。



微かな浮遊感を伴い足元に映し出される幾つもの星々が、光の帯を引きながら頭上へと流れていく。神々による生命創造の映像(イベントムービー)を見ながら、やがて足元には巨大な惑星が迫ってくる。

その中の1つの大陸にぶつかるかというスピードで迫り、思わず目を閉じて庇うように腕を前に突き出した所で視界は黒一色に染まった。




小鳥がくちずさむ歌にゆっくりと目を開ければ、そこは森の中だった。鬱蒼と生い茂る木々に囲まれた深い森の中に、ぽっかりと拓けた小さな広場のような場所。小鳥のさえずりが耳をくすぐり、葉擦はずれの合い間からは優しい光が降り注ぐ。


稲穂のような草の先端には小さな鈴のような白い花が群生し、流れる風に涼しげな音を奏でる。緑と白のコントラストで飾られた広場の中心には、大きな切り株が鎮座し訪れた冒険者達を出迎える。

そして切り株の上には小さな妖精が座り、悪戯っぽい微笑みを浮かべ目の前の冒険者達を楽しそうに見つめている。


「やぁ、久しぶり。みんな随分と立派になったねぇ、以前会った時とは別人の様に逞しくなってるよ」

「あ、お久しぶりです。その節はお世話になりました」

「こらこらレアちゃん、住人(NPC)相手にかしこまらないの…」


切り株の上の手の平サイズの妖精に、織り目正しく頭をさげるフーレンスジルコニアスに苦笑しながら、ユカリアスが妖精の元まで歩いて行く。


「アンタがいるってことは、ここはチュートリアル(初心者用)エリアかい?」

「ご名答、ここは始まりの森。特別サーバー専用チュートリアルエリアさ」


葉っぱをモチーフにしたような濃緑の衣装を纏う少年風の妖精が、ニカッと無邪気に笑いかける。イリーガル・コール・オンラインを始める際に誰しもが必ず訪れる始まりの森、そしてチュートリアルが終れば二度と入る事はできないエリア。一期一会にも等しい懐かしの妖精からの、チュートリアルが始まるという雰囲気に自然と皆が中心の切り株へと集まっていく。


「まぁチュートリアルとは言っても前回みたいに通常の生活や戦闘について教えるわけじゃないから安心していいよ、これからボクが教えるのはこの特別サーバーについての少しばかりの注意点さ」

「公式HP(ホームページ)に記載されてる以外にも仕様変更点があるということか?」

「うん、流石コーネリアス君、話が早くて助かるよ。まず公式HP(ホームページ)に記載されてる点で、通常サーバーには存在しない住人(NPC)が多く配置されてるのは知っているね? 注意点と言うのはボク以外の住人(NPC)は、本来存在する者も含めて全て自分がNPC(人工知能)だとは自覚していない……という点だよ」


住人(NPC)が全て自分をNPC(人工知能)だと認識していない……その説明にその場に居た者に空白の時間帯が発生する。いち早く立ち直ったコーネリアスだったが、しかしその思考が上手くまとまっていた訳ではない。


住人(NPC)NPC(人工知能)だと認識していないのはわかった、だが何か問題があるのか?」

「大有りだと思うけど?」


困惑した様子の冒険者(プレイヤー)達の反応に、逆に意外そうな顔で答える妖精。コーネリアス君やテンテアさんがわからないとはちょっと意外だったかな、との妖精からの呟きに少し落ち込むコーネリアスと憮然とするテンテア。


わかったその住人(NPC)達に自分達がNPC(人工知能)だと認識させるのがクエストなんだな! と自信満々に答える大野さんの答えを、まったくの見当違いと一蹴する妖精。ガッカリ感漂う空気を放出する大野さんの横で、腕を組んで小首を傾げていたフーレンスジルコニアスがオズオズと手を挙げる。


「はい、レアちゃん」

「レアって言うな! …えと、NPC(人工知能)だっていう意識がないってことは、住人(NPC)達は決められた場所に必ず居るとは限らないってこと?」

「大正解♪」

「わ~い♥」


パチパチと拍手を交わす妖精とフーレンスジルコニアスに、更に落ち込むコーネリアスとは対照的に穏やかに見つめるテンテアだったが、ふと気づいたように慌てて妖精に詰め寄る。


「ちょっと待て、じゃぁ何か、物を預けに倉庫へ行っても倉庫番の住人(NPC)が居ないってこともあるってことか?」

「そうだね、それどころか売り上げが伸び悩めば武器屋や雑貨屋をやってる住人(NPC)が店を辞めてしまうこともあるかもしれないし、特定のクエストに必須の住人(NPC)が旅に出てしまうこともあるかもしれないね」


それってシステム的にどうなんだ? というテンテアの呟きに、妖精がニンマリと笑う。


「だってココは『特別サーバー』だよ? 本来のクエストなら通常サーバーでいくらだって進められるじゃないか。ココにも本来のクエストは存在するけど、それ以上にココだけのクエストが多く存在するんだよ。でもそれは運営が用意した物じゃない、自由に生きる住人(NPC)達を陰ながら支えるも良し逆に自分達に都合が良い様に誘導するも良し、どうせココでの戦闘なんて君達(転生組)には大した旨みは無いんだ、なら存分に擬似異世界ライフを楽しみたまえよ」


いっそ清々(すがすが)しいとも思わせる大胆な仕様に、呆気に取られ呆然とする一堂を面白そうに見渡しながら、チュートリアルはこれで御仕舞いと宣言した妖精が腕を振るうと、フーレンスジルコニアス達を光の粉が包み込む。

有無を言わせずチュートリアルエリアから追い出されるフーレンスジルコニアス達には、『数十年後にまた会おう我が子達よ』と妖精の姿をしたオーガスティンが呟いた言葉が届く事はなかった。






小さないおりの床に書かれた幾何学模様きかがくもようをした魔法陣が淡く輝きだす。壁の無い6本の柱だけで作られた簡素な庵の周囲は、緑豊かな森のようになっている。

エルフのホームタウンである迷いの森の一角に位置する、深緑の都市『ディープ・プランタン』の転移ポータルの中からフーレンスジルコニアスが歩み出てくる。


銀色に一滴だけ蒼を落としたようなブルーシルバーと呼ばれる髪色を基本としつつも、虹色に輝くエフェクトが流れるように彩る絹糸のような髪が背の中程まで流れている。スッと通った鼻梁に細い顔立ち、髪色と御揃いの眉と影を落とすような長い睫毛に彩られたアーモンド形の目に納まるのは、イチゴのような甘さを感じさせる淡いピンク系の瞳であった。


スラリと細身のその身体には一切の無駄な肉は付いていないが、髪から覗く長めの耳は途中から枝分かれするように二股に別れている。そして乱れた髪を直すように伸ばされた手の甲には、不思議な紋章が刻まれていた。その身を包む服装は森の民であるエルフらしからぬ、白地にエメラルドのラインが入るどこか近代的な感じのスタイリッシュな物だった。

結果、転移ポータル周辺に居る他の冒険者(プレイヤー)の中で1人異様に目立っていた。


「うっ………視線を感じる、エルフinエルフ状態のはずなのに……」


木を隠すには森のはずなのに…とかブツブツ呟きながら、気のせい気のせい目立って無い目だって無いと俯きながら自分に言い聞かすが、周囲の冒険者(プレイヤー)どころか町民風の住人(NPC)すら立ち止まりコチラを凝視している。

プルプルと震えながら俯いていたフーレンスジルコニアスだったが、ぷはっと息を吐き出すと視線を上げてしまう。どうやら息を止めて気配を消そうと努力していたらしいが、結果としては何をしているんだろうと余計に周囲の感心を引き、顔を上げた事で周囲からの視線を完全に認識しただけであった。


「あ、逃げた」

「レアちゃんの逃げ足異常じゃねw」

「くっ、あの娘は私の嫁!」

「お前同性だろ…」


精霊魔術を行使して風を纏って森の中へと逃げていったフーレンスジルコニアスだった。




『やほ~レア子まだホームタウン?』

『ううん、森の中』


アンタもう狩りとかしてんの? というユカリアスからのプライベートチャットに違うけど…と返事をしつつ、昔はよく逃げ込んで隠れていた大きな木の洞(樹洞)の中で体育座りをしていた。


『私はこの後しばらくはギルドの方でこのサーバーでのギルドハウスの調達と、未転生組の手伝いとかがあって手が離せないんだけど、レア子の方は何か予定とかある?』

『んと、古代種の都の銃職人ガンスミス工房の様子を確認する予定だけど、その後は特に予定は無いよ』

『そっか、ならそれが済んだらコッチに来て合流する?』

『うん』

『なら猫とぼっちには私から連絡しておくよ』


了解~♪とプライベートチャットを切ると、一路『古代種の都』へ向かう為に一度ホームタウンへと戻らねばならないが、もうそろそろ皆居なくなってるだろうと期待しつつモゾモゾと樹洞から這い出すフーレンスジルコニアス。

しかし無常にも転移ポータルの前には未だ多くのエルフ達がガヤガヤと集まっていた、どうやらこの機を狙ってまだギルド無所属の新規参入者(ルーキー)の勧誘などを行なっているらしい。


「ぬぬ、迷惑な! そういうことは他所でやってください」


中々自分本位な文句を言いつつ、どうやって転移ポータルまで目立たずに行くかを思案する。樹の陰に隠れながら周囲の様子を窺うが、見つからずに歩いて行くのは不可能と判断する。

油断無く周囲を警戒するその顔は、普段の彼女を知るものが見れば驚くほどの精悍さを思わせる。眼光鋭く深く息をつくと呪印銃スペルガンを右手でホルスターから抜き出し、左手に魔力を集めていく。


隠匿の対流(サンシーブル)(精霊魔術)

 一定時間の間、対象の出す音を周囲に聞こえないようにする。

 隠密性が重要視されるスカウト系が好んで使う、主に対人戦

 で効果を発揮する。


スキル効果を表す光の膜が呪印銃スペルガンに現れたのを確認すると、風を纏ったフーレンスジルコニアスがスルスルと樹の上へと登っていく。樹上へと顔を出し転移ポータルの方向を確かめると纏った風を使い一気に空へと飛び出していく、しかし転移ポータルに辿り着く遥か手前で失速してしまう。

完全に失速してしまう手前でクルリと振り返ったフーレンスジルコニアスが呪印銃スペルガンの引き金を引く、マズルフラッシュと共に魔弾が撃ち出されるが精霊魔術の効果で周囲にその銃声が聞こえる事はなかった。

そして呪印銃スペルガンの反動によって一気に加速したフーレンスジルコニアスは、転移ポータルの手前に音も無く着地しそのまま庵の中へと飛び込む。


「転移『古代種のみにゃきょ』」


一瞬の空白の後、魔法陣が光りだしフーレンスジルコニアスの姿が消えてゆく。


「噛んでる噛んでるw」

「レアちゃんの滞空距離異常だなw」

「むしろ私があの娘の嫁に行く!」

「だからお前同性だろ…」

「気のせいか、一瞬魔法陣が戸惑ってたな…」


無駄な努力に終ったことを彼女は知らない。





今回の話よりイリーガル・コール・システム(擬似異世界ライフ装置)実装後のお話になっています。


キーワード等に書いていない通り、作中では異世界転生や異世界迷い込み等には展開しない方針でいます。

あくまで擬似的な異世界風であり、ゲームシステム上での展開であるとお考えください。またデスゲームにもなりません、ご安心ください。


話は変わりますがw 知り合いがこのイリーガル・コールを偶然読んでいまして、感想を聞いた所これってジャンルがファンタジーじゃなくてコメディーじゃね? と言われまして、うっ、やっぱり? と思いまして現在ジャンル変更をしようか考えています。一応ストーリーはあるのですが要素的にはコメディーが8割位は占めてる気がしますし……。


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