表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イリーガル・コール  作者: 山吹
Ver1.5
15/37

平穏を望む彼女の日常的な、

鍛冶スキルそして銃職人ガンスミススキルの修練とは、反復製作である。

                     byフーレンスジルコニアス


小さな部屋に置かれた机の上に同じ改造カスタムパーツを並べ、その前で椅子に腰掛けて腕組をして考え込むフーレンスジルコニアス。小さな筒状のパーツは一見するとLEDライトのようでもあり、微妙な差異はあるが50個もの量になっている。

コツコツと作り続け先程やっと銃職人ガンスミススキルのランクが上がった所だが、その過程で作り出したパーツの使い道に、頭を悩ませているところであった。


LEDライト、もとい照準器レーザーサイトが作れるようになってから、呪印銃スペルガンに組み込んだ物以外にも修練のために反復製作していた。材料の欄にある宝石の項目に特に指定が無かったので最初は手持ちにあったエメラルドで作ったのだが、それ以外の宝石でも製作できる事が分かり宝石の種類によって照準器レーザーサイトの光線の色が変わる事もあって、調子に乗って作りすぎた結果50個もの在庫を抱えることになってしまった。


「う~ん、他の部品もバランス考えて作るべきだった…」


ど~しよ~と頭を抱えながら考え込むフーレンスジルコニアス、彼女のアイテムインベトリそして保有する倉庫のスペースにはあまり空きがないのだ。過去に『アーカイヴミネルヴァ』に連れて行かれたLVUP(サボってないで)強化週間(貢献しなさい)の時に強制的に分配されたレアっぽいアイテムに、βから続けている為に色々な思い出が詰まった処分できない物、鍛冶と銃職人ガンスミススキル用の材料、そして有り余る呪印銃スペルガンのための魔弾。


「流石にこの空きスペースだと不便よねぇ。そして溢れる物に反比例するこの資金難もどうにかしないと…」


むむむ、と呻りつつ眉間に皺をよせ半眼で目の前の照準器レーザーサイト達を睨みすえる。今の所、呪印銃スペルガン以外に使い道の無い改造カスタムパーツであり、しかもPT時には自主的に使用を控えているパーツでもある。ソロではその命中補正の高さから重宝しているフーレンスジルコニアスであったが、PT時には反動消化の身体を回転させる動きからPTメンバーに目潰しをするという、なにその地雷仕様!?のため使えないでいた。

しかも現状では呪印銃スペルガン使いはフーレンスジルコニアスだけであり、露店商店を開店しても需要が無い状態でもあった。


机の上に両足を乗せ椅子の背もたれに寄りかかって、ギッコギッコと無作法にしながら頭の後ろで手を組み1人愚痴をこぼす。


「回転時に目潰し効果発動ってどんな仕様よ。気分で色を変えるとしても数個取っておけばいいだけだし、いっそ回転しないで撃てるパチンコにでも装着させちゃおうかなぁ」


と、そこまで愚痴ったところでハッと閃いたフーレンスジルコニアスだったが、その拍子にバランスを崩しズッテーンと頭から引っ繰り返ってしまう。折角アイデアを閃いたフーレンスジルコニアスだったが、ショックでそのアイデアが飛んでしまい小一時間程また腕を組んで悩む嵌めになるのだった。


「きゅ~…」






弓使い用『新照準器(レーザーサイト)』数色あるよ♪

弓使い用に改造カスタマイズした照準器です、装着後に各弓毎に微調整が必要ですが命中補正はかなり高いです。

ドレスアップ装備としてもお洒落ですよ。


「うん、これでよし」


数日をかけて弓にも装着できるように改造した照準器レーザーサイトを、露店に並べ終えて満足気に頷く。少し高いだろうかと思いつつ1個1M(1,000,000)程で、広場で自動販売型の露店機能を使って売りに出してみたフーレンスジルコニアス。

日課のソロ狩りを済ませ、ログアウト後も露店維持の費用をシステムに支払いその日はログアウトした。


翌日、学校で母親手製のお弁当をつついていると、一通のメールが届いた。

不良主婦ユカリアス(本人に知られたら怒られるので登録名は極秘)からのメールで、慌てて携帯端末からイリーガル・コールの掲示板を見る。




    20〇〇年 6月04日 1:45


 タイトル 弓使い刮目せよ!


古代種の都の第3広場の隅っこの所で照準器レーザーサイトってのが売ってる!

微調整にちょっとコツがいるみたいだが、命中補正がアホみたいに高くなってるw

10Mとかボッタクリやがってと思ったが、この性能なら納得だw

全色買っちまったぜ!!


・俺も買った、まだ調整済んでないけどそんなに良いのか!

・!まだ売ってるか?

・知らん、けど俺が見たときはまだ30個くらいはあった

・よし走る!

・ワープる

・寝ようと思ったがインする俺ガイル

・ちょwガイルとかいつの死語だよw

・死語とか言うお前がなにをいうw

・買えた!

・買えんかた (´・ω・`)

・やべぇwカッコイイww

・れぇぇぇざぁぁぁぁ!

・おい!販売者THEレアじゃないか!

・マジか、レアタソ手作りハァハァ

・ハァハァ

・売り切れてた (´・ω・`)

・↑チェックメイトですw

・↑↑チェックメイトですww

   ・

   ・

   ・

   ・



なんでこんな盛り上がってるの…しかも値段設定間違ってるし…。


「どうかしたの?」


同級生の言葉に何でもないよハハハ…と返し、内心でOrzをしながらトホホとタコさんウインナーを齧るフーレンスジルコニアスだった。






ズズズズズズ…ズッゾゾゾゾゾッゾッゾォォォ~    ケプっ。


「それは年頃の女の子としてどうかと思うにゃ…」

「ゥニャ」

「いろいろあるのよ。いろいろと」


ポカポカとした快晴の空のした広場のベンチに腰掛けながら、何故かイリーガル・コールの中で売っている、スタミナドリンクを小さなストローで飲み干すフーレンスジルコニアス。その親父臭い様子にニャンデストが苦笑気味に注意をするが、フッとニヒルに笑いながらフーレンスジルコニアスが答える。


先日の露店にて一桁多く設定してしまった照準器レーザーサイトが何故か大好評で、買えなかった人からの追加製造依頼が殺到し連日対応に追われていた。ついには個人で対応できる範囲を超えたので、他の人のエルフ古代種転生を支援したほうが早いという提案をして、その製造から(シッポを巻いて)撤退した(逃げ出した)のだった。


「大体50個作るのだって結構大変だったんだよ。それなのに追加で30個作った私はがんばったよね!なのに残りの追加依頼が500件超えてるってどうなのよ!どんどん増えてく依頼数と所持金額に私の許容量(キャパシティ)はもう限界よ…」


ブルブルじゃぁ~と肩を震わすフーレンスジルコニアスの様子に所持金増加に恐怖するとか、ちょっと羨ましい悩みだなとか思うニャンデストだった。製造スキルの面倒臭さにその方面はバッサリ切り捨てている身としては、やれといわれたら絶対嫌だというニャンデストなのだがそこは棚に上げている。


実際今回の件で弓職の多いエルフの中で、古代種転生を目指している鍛冶系エルフを支援しようという動きが出始めている。同じ遠距離職である呪印銃スペルガン改造カスタムパーツが、照準器レーザーサイト以外にも弓に転用できる物があるのではないか?という、打算的な考えからだが鍛冶エルフ側にしても転生後に呪印銃スペルガン所持以外でも資産運用的に明るい展望が見えたと喜ばれている。


実際PK(プレイヤーキル)行為に対して転生条件的に反撃ができない鍛冶エルフを守る為に、弓職エルフが鍛冶場までの護衛と修練中の護衛を交代制で請け負っているらしい。もちろん転生後には優先的に改造カスタムパーツの購入権を有する、という条件付らしい。

しかし何気にその護衛エルフ小隊の創設者がフーレンスジルコニアスになっていることを、当の本人はまったく知らないで居るのだが…。


ぶちぶちと泣き言を溢すフーレンスジルコニアスを、よしよしと宥めるニャンデスト達に不意にフッと影が差す。反射的に見上げるその視線の先には青い肌をしたスキンヘッドの巨漢が、高みから2人と1幼女を見下ろしていた。

思わず姿勢を正して背筋を伸ばすフーレンスジルコニアス、ビクッと二股のシッポを膨らましたネコ精霊(タマキ)の鈴が鳴り、近くを歩いていた数人がフライング土下座をする。


「にゃにゃ、久しぶりにゃ~」

「おう、しばらく見ないうちに派手な外見になってるじゃないか。古代種になったんだってなぁ、おめでとうって言うべきか?」


がはははと豪快に笑う青い肌の巨漢は、次いでチラリとフーレンスジルコニアスに視線を向けると興味深そうにニヤリと意味有り気に笑う。


「それで?そちらの人が色々と話題豊富なTHEレアさんって人か」

「レアちゃんの紹介は手間が省けて助かるにゃ、そうにゃ今回の依頼主のレアちゃんにゃ」

フーレンス(・・・・・)ジルコニアス(・・・・・・)と言います!よろしくお願いします」


口と尖らせて名前の訂正をする様子にまたもや、がはははと豪快に笑うと噂通り面白い奴だといった後、周りの惨状を指摘する巨漢の男。辺りを見渡せば数人が土下座をした格好で、何故自分は土下座してるんだろうと悩んでいる。


「タマキ~、スキルを解くにゃぁ~。怖くないにゃぁ~T T」


固まったネコ精霊(タマキ)を胸に抱きつつ、プランプランと左右に振って宥めるニャンデストを見ながら楽しそうに笑っている青肌の巨漢。

自分の依頼内容と目の前の巨漢とのイメージがどうにも繋がらないフーレンスジルコニアスは、本当に大丈夫なんだろうか?と不安になるのだった。






巨漢の紹介と依頼内容は次話で。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ