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第 3 話  いつもと違う

 

 翌日は、朝から快晴になった。

 真夏を思わせる陽射しが、スピリタスを飲んだように刺し込んできた。

 太陽が望んだのは、女性の素肌と体の曲線、そして男のタメ息だった。



「嫌いなお方の 親切よりも  好きなお方の 無理がよい」


 麗子の鼻歌にも似たどどいつ々逸が、洗い場から流れてきた。

 “いい男”の話を聞いた、彼女の当て付けのようだ。

 女の噂話は、1秒で地球を七周半回り、しかも拡大する。

 辰巳芸者の血を引く彼女なら、抗議の唄の一つも出てくるだろう。

 食べ物・色男を無下にした恨みは、主君をも殺すそうだ。



 店の駐車場に、オブシディアンブラックのベンツが止まった。

 麗子が乗って来たロッソコルサのフェラーリの隣だ。

 二台の車高が、はっきりと分った。

 ジャージを着ないでも乗り込める彼女を、少し尊敬した。


 紺色のブレザーに赤いタータンチェックのスカートの少女が車から降りた。

 学校帰りの真子だった。

 必ず、胸に何かを抱えて走って来る。

 どうやら今日は黒猫のオモチャらしい。

 あと半年もしたら、ペットショップを開けそうだ。


 裏口から、いつも遠慮がちに入って来た。

 最初に気付くのは、由香里か調理助手の小田拓人だった。

 二人に小声で挨拶をして、深々と頭を下げた。


 そして……

 私の所に、うつむきながら来て、恥ずかしそうに「今、よろしいでしょうか?」と尋ね、私が「もちろん、どうぞ」と答えると、彼女は「ありがとうございます」と言って、満面の笑顔で目を輝かせながら、二階に駆け上がって行く。

 ハズ、なのだが……


 今日は違っていた。


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