そして、再び
ものの数分で、学生寮へとたどり着いた。
学生寮、ここには学生の約三分の一が住んでいる。三階建てで、二階が女子、三階が男子だ。
その学生寮の入り口で、予想通りの人物を見つけた。
「夜月」
声をかけつつ、朝香は夜月へと近づいた。
「あ、朝香さん」
「やっぱり、寮に済むのね」
外国からの転校生だ、寮暮しに決まっている。そしてこの方向から来た引っ越しトラック。利用者は夜月に間違いないという朝香の予想は当たった。
「はい、三一八号室です」
「! へ、へぇー」
その番号を聞いた瞬間、朝香は少し驚いたが、
「それでは」
夜月はそれに気づかず、寮の中へ入っていった。
「……三一八」
一度夜月の部屋番号を呟いた後、朝香も寮の中へ入った。
階段を昇り、自分の部屋の前で止まる。
鍵を開けて、中に入った。朝香の部屋――――――――――二一八号室に。
「上……なのね」
ふと、上を見上げて、
「ふふふ……ふわーっはっはっはっ!」
声高らかに笑った。
天井を、その上にある三一八号室の住人をビシッ! と指さし、
「待ってなさいよ夜月! 絶対に見つけてやる、そう、見つけてやるのよ!」
声高らかに宣言した。
ちなみに、部屋の壁はそこまで厚くない、だが両隣の生徒は今部屋の中に居なかった。
「ふわーっはっはっはっ! ……ふぅ」
一頻り笑うと、持ったままだった鞄を机の上に置いた。
寮の部屋には、机と椅子、棚、流しとコンロと布団一式が備え付けられている。その他にも持ち込みが可能で、朝香の部屋には他に家から持ってきた組み立て式の本棚、中には本が数十冊収まっている。
それと目覚まし時計と、小物が少し、そして部屋の角に置かれた段ボール箱が3つ。
「……」
朝香は段ボールを見た。だが、
「……はぁ」
特に触れることなく、布団を敷いてその上に倒れ込んだ。
「つか……れた……ヘタに走るもんじゃないわね……」
そのまま、目を閉じて微睡みの中へ……
「……」
落ちていった……
はい、これで良かったんだね?
うわぁー! どうもありがとう!
良かったわね
うん! ありがとうお兄ちゃん! お姉ちゃん!
どういたしまして。それじゃあ……
ちょっと待って! ねぇ今のどうやったの!
え? えっと……
ワタシが言うわ、これはね
これは?
これは魔法です。
「……ん」
時刻は午後7時を回り、空はすでに日が落ちて暗い。
その中、朝香は目を覚ました。
「あれ? ……私、いつの間にか寝てたのね……」
一人呟き、むくりと起きて、自分の服装に気づいた。
「……制服のままだった」
布団から立ち上がり、
「ん……はぁ」
両手を上に挙げて伸び、残った眠気を飛ばした。
「よし、とりあえずは着替えなきゃね」
朝香は部屋の北側、扉から見て正面にある窓のカーテンを閉めるために窓へ近づいた。
カーテンに手をかける。
その瞬間、窓の外を何かが落下していった。
「!?」
驚き、朝香は数歩下がった。
「な……何よ、今の?」
そして慌てて窓に近より、下を見た。
そこには見慣れた風景の中を歩く、黒い人影があった。
「……人? アレが上から……三階から降ってきたの?」
三階から降ってきたということは……もしかしたら、あの人影って!
朝香はカーテンを閉めると、そのまま素早く部屋を出た。
走って来た道を、再び走って向かった。
黒い影を追って、学校の方へ
朝香が見た夢、それは今の朝香を作った重要な一ピースだったのです。
しかし、朝香はすごいですね……声高らかに笑うとは……