夜月観察レポート by朝香
外国人!?
でも日本の名前だね?
結構カッコいいかも〜
教室内が更に騒がしくなった。
「えーと、それじゃあ一番後ろの、朝香の隣が空いてるからそこに座って」
「はい」
夜月は席の間を抜けて一番奥の席に座った。
「よろしくお願いします」
隣の朝香へお辞儀する。
「えぇ、よろしく」
朝香は挨拶しながらも、昨晩の記憶と照らし合わせていた。
間違いないわね、逆光だから顔とかは分からなかったけど、声が一緒だわ。それにあの目、黄金色の瞳なんて他に居ないし、何よりいきなりの転校というのが一番決定的ね。きっとこの学校に巣くうモンスターとかを倒しに来たんだわ。
「それじゃ、ホームルーム始めるぞ」
担任がいつも言葉を言ってホームルームが始まった。
それと同時に、朝香の、夜月観察が開始された。
絶対に尻尾をつかんで見せるわ!
一時間目―――――数学。
夜月は教科書を全て持っていた為、朝香が見せることは無かった。
それが幸いして、朝香はじっくりと夜月を観察した。
転校生なので制服は新しい。ノートも新品らしく、開いた一ページ目に数式等を書いている。
なるほど、右利きなのね。
一時間目が終了すると、先生が教室を出るより早くクラスの生徒が夜月の席の回りに集まった。
転校生にありがちの質問攻め、それに夜月は一つずつ応えた。
外国ってどこの方?
「南の、オーストラリアの方です」
外国から来たのに日本名なんだね?
「生まれは日本なんです。それから外国に行ったので」
やっぱり英語ペラペラ?
「それほどではないですね。ただ、日常でよく聞きましたので翻訳ならおそらく出来ます」
そんな感じの質問が止めどなく向けられる中、隣の朝香は、
「光は質問しないの?」
「人が多すぎてムリよ」
自らの席に座り、夜月の応答に耳を傾けていた。
二時間目―――――歴史。
思っていたより書くことが多く、夜月は初日にして二ページに書き始めた。
その時、朝香は見た。
二ページにいった途端、夜月は左手にシャーペンを持ってそのまま字を書き始めた。
左手でも書けるのね。両利きなのかしら?
三時間目―――――体育。
『体操服がまだ無い』ということで、夜月は見学していた。
あの大きなヘビを刺すような身体能力の持ち主だし、きっと運動は上手い筈よ。
四時間目―――――英語。
英語は右から左へノートにスペルを書くためか、夜月は一ページ目から左手にペンを握って書いていた。
なるほど、特に利き手とかは無くて、どちらか使いやすい方を使うのね。
そして、昼休みになった。
とりあえず観察は休憩して食堂に行こう。そう思い朝香は教室を出た。
それを見た夜月は、
「ねぇ夜月君、良かったらお昼一緒に食べない?」
「すみません。ちょっと用事がありまして、お誘いありがとうございます」
誘いを断り、教室を出た。