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これから迫る試練

七夕から一夜明け、時刻は10時。

朝香は夜月の部屋へ、

「おじゃまします!!」

扉を文字通り押し入った。

だがそんな急な来客にも夜月は驚くことなく、

「座って待っていて下さい、直ぐにお茶を入れますから」

冷静に対処した。

「うん」

朝香は言われた通り椅子に座り、夜月がティーポットとカップを2つを運んできて机に置き、自らも椅子に座る。

カップに紅茶を注いで方々朝香の前に置いてから、ようやく夜月は訊ねた。

「急にどうしたんですか?」

「んー、まぁ、あんな事しなくても普通に入れば良かったんだろうけど。とりあえず訊きたいことがあってね、それでよ」

「そうでしたか、では聞きましょう。ちなみにですが、星座が出るかはまだ分かりません」

「それじゃないわ。聞きたいのは2つ、まずはコレよ」

そう言って朝香が取り出したのは、星座早見表。

「昨日、コレについて分かったことがあるって言ってたじゃない?」

「はい。光さんは昨夜、『おおかみ座』を呼びましたよね」

「えぇ、呼んだわよ」

「では一つ思い出してください。道具類の星座が人を操った場合、どうしたらよかったですか?」

「それは……満月の力よね?」

「では、何故朝香さんは『こと座』から波浜さんを救うことが出来たのですが?」

「え? えーと……」

朝香は昨夜のことを思い出す。

『こと座』に操られた波浜と対峙し、自作の呪文を唱えながら星座を呼び出して。

『いて座』の矢を放ち、『おおかみ座』の牙が琴を引きはがした。

「……おおかみ?」

「それです」

正解を言った朝香の言葉を、夜月は受け継いだ。

「呼び出された星座には、個々に能力があるそうです。全ての星座を調べたわけではないのでそう言いましたが、現在の限りでは全てに能力がありました。その中で『おおかみ座』は、引き剥がす事、満月の力と同等の能力を持っているのです」

「へー、おおかみ座ってあの時初めて聞いたけど、凄いものなのね」

「元より全ての星座を知る人は少ないですし、おおかみ座は南天の星座ですから」

「え? 南天って、ここから見えるの?」

南天とは、オーストラリア等、南半球の空を指す言葉。要はここからは真逆の空だ。

「全てでは無いですが、場所によっては見えるんですよ」

南天の名前の通り、南の方に行くほど見ることが出来る。

「ここまでは分かっていたことです。次に、新たに分かったことを話します」

夜月は語り始めた。




星座には自ら動く動物・生物類と、人を操り使わせる物・道具類の2種類に分類しましたが、呼び出した際も、同じように2種類に分けることが出来ました。

まずは名称、武器(ウエポン)種。

「道具類の方ね」

「はい、呼び出して自らが扱う星座を指します。これは自分だけでなく、耐性を持つ人にも持たせることが可能です」

「じゃあ、稲荷やイチバンにも使えるのね」

続いて2つ目、名称、召喚(サモン)種。

もちろんこれは生物類のことで、呼び出して共に戦ってくれる星座を呼びます。

「『おおかみ座』ね」

「後は『へびつかい座』もそうです。個々に能力を持ち、個別に戦ってくれます」

「それは分かるけど、問題は戻し方よ」

それは調べた結果、自分では戻せないことが分かりました。

「光さん、あの時おおかみはダメージのようなものは受けましたか?」

「えぇ、『こと座』の音色を聞いて倒れたことがあったわ」

星座には個々に呼び出せる制限時間が存在し、ダメージの類を受けた際はそこから引かれ、戻る時間が早まるのです。

「この辺りでしょうか」

「そう、ありがとうね」

「いえ、それで、聞きたいことの2つ目とは?」

「うん、それはね―――」

今日、星座は現れなかった。





月曜日。朝香は学校に向かって1人歩いていると、前を歩く夜月を見つけて呼びかけた。

声に振り向いた夜月はその場で立ち止まり、朝香を待ってから歩き出す。

「随分と荷物持ちね、夜月」

「えぇ、まぁ」

朝香の見た夜月の学生鞄はパンパンになっていて、中に荷物がたくさん詰まっていることを示していた。

「中身は、教科書よね?」

「はい、今日ある授業の教科書が全て入っています」

「あぁ、そっか、夜月はまだロッカーが無いのね」

学校の昇降口には、入ったところに全生徒用のロッカースペースがある。生徒達の多くはそれを利用して教科書を入れてある為、鞄が軽い者が多い。朝香もそうだった。

「ところで、光さん」

「なに?」

「今日の事は昨日聞きましたが、他の皆さんはどういった方々なのですか?」

「他の人……とりあえずは4人だけど、2人は会えないわ」

「会えない……ですか?」

朝香の言葉に、夜月は首をかしげた。

「えぇ、渡っていう双子なんだけど、この時期になると家族揃って旅行だとかで学校に来ないのよ」

「では、他のお2人は?」

「学と栄太ね。あの2人は…」

「「そこは私達にお任せをーー!」」

「!?」

2人の間に、明花と波浜が割り込んだ。

「ガクシは図書委員で、よく本を読んでるよ」

「サカエもんは空手部で、よく本を読んでるよ」

「後半同じじゃない」

突然の乱入には驚きながらも、台詞のツッコミ所にはちゃんと朝香はツッコンだ。

「仕方ないじゃないか~、光達と違ってあんまり話さないんだからさ」

「ナナの場合話さないじゃなくて、話せないでしょ。クラス違うし」

「そうだけどさー」

「でも本当にあの2人、図書館遭遇率高いよね」

「学は図書委員だから、栄太は読書家だからでしょ……で、どう? 分かった夜月?」

「はい。お2人はよく、本を読んでいらしゃると」

「そこだけじゃない!」

今の会話だけだと仕方ないとは思うが。

「ところで、なんであの2人の話を?」

「自分がお2人について知りたかったからですけど」

「本当はね、アレ……そう、アレの為よ」

「アレとは、まさか……」

アレ、の意味を知っている波浜と明花は息を飲んだ。夜月も昨日朝香から聞いたばかりだ。

そう、彼らは……全校生徒は、今ある大きな壁に立ち向かおうとしていた。

夏休みという、憩いの前に立ちはだかる最大の壁。

生徒の一年間に這いよる。四天王の一角、その名前は――――――




「前期の期末テストよ!」



ビシッ! 朝香は何もない空を差して叫んだ。

「なるほどー、それは確かにあの2人だね」

波浜の言葉に、名家は黙ってうなずいていた。

「え? どういう意味ですか?」

唯一知らない夜月が訪ねると、指していた手を下げてから、朝香は答えた。

「簡単に言うなら、あの2人は、知識のある者達なのよ」



再開しました、『月で願いを星で試練を』

この物語はだいぶ前に書いたものに着色を加えているものなので、書き方が今と違っていると実感します。


新たなメンバー、新たな学園生活、そして新たな戦いの幕開け、どうぞお楽しみに。


それでは、

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