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七の日

昼休みが終わり、五時限目。本日は選択授業だった。

選択授業とは、生徒個人が幾つかの内から選択して授業を受けるというもの。

本日は音楽・美術・書道の三種類からの選択授業で、稲荷と明花が音楽。夜月は書道を選択しており、

「……」

美術を選択していた朝香は一人美術室に向かっていた。手には美術の教科書と筆箱のみ持っている。

そんな中、ふと考えていた。

ファンタジーに関係した人と付き合いたい

……確かに昔、そんな事を言った。でも、あり得ないと思っての冗談まじりに言った事だ。勿論ファンタジーを諦めた訳じゃ無いから半分以上は本気の言葉だ。でもまさか、それをファンタジーの住人に聞かれるとは思いもしなかったわ……まぁ確かに夜月はファンタジーの人だし……それに、意外と……

「……何考えてるんだか、私」

稲荷に忘れるとか言っときながら、こんだけ頭の中ではリフレインしてるなんて、

「おーい、ひっかり〜」

そりゃあ望みに望んだファンタジーだもの。それが現実として目の前に現れた、

「? おーいひっかり〜」

予想の通り、ファンタジーは危険と隣り合わせだった。けど、それを踏まえて私は喜んでいた、

「むぅ……ムシですか」

なのに、まさかあんな事でこんなに悩むなんて……

「だったら……」

私、いったいどうしたのかし……

「……ぴかりん」

「うひゃあ!?」

封印したいあだ名を耳元で呼ばれた瞬間、朝香は背筋にぞっと寒気が過り、手に持っていた物を落としてしまった。

「ありゃ、ここまで反応が予想外だよ」

「っ……!?」

朝香は振り向いてあだ名を呼んだ生徒を睨み付けた。

それと同時に、授業開始のチャイムが鳴った。





「あの名で呼ぶなって言ったでしょ!」

「いや〜ゴメンゴメン、全然気付いてくれなかったからさ」

五時限目の美術室。本日の内容は石膏デッサンの為席は自由。なので朝香とその生徒は隣に並び、朝香は怒っていた。ただし授業中なので、小声で。

「だからって、肩を叩くとか、他に呼び方はあったでしょ!」

「そうだけどさ、やっぱりアレが一番確実だったから」

「でもあの名で呼ばないでって言ったじゃない、ナナ!」

「だからゴメンって」

朝香にナナと呼ばれたのは波浜(なみはま) (なな)

彼女は本来朝香とは別のクラスで、この美術の時のみ合えている。朝香の中学からの友達だ。

とりあえず、怒った朝香の気を変えようと、波浜は話題を変えた。

「そういえばさ、光のクラスに転校生来たよね?」

「え? あぁ、うん」

「どんな人? 一度は話した?」

「えっとね……」

朝香は夜月について話した。

席が隣であること、よく話をすること、寮生であること。

そして……右足が義足であることを話した。

「義足!?」

波浜としては朝香の気を変えられれば良かったのだが、夜月の予想外な出来事に驚かされた。

「それは見てみたいような……」

「後で来れば?」

「うーん、でも部活忙しい時期だからなー……あ、ところで光さん?」

ふと思い出したように波浜が語り出した。

「明日はアレの日だけどさ、どうする? やっぱりメンバー集める?」

「明日……あぁ、そういえば明日ね、七夕」

そう、今日は7月の6日。明日は七夕だ。

「そうね、後で皆に連絡しましょ」

「決まり。いや〜しかし、アタシだけクラス別にして先生もヒドイね。そっちはメーカーもコックさんも皆いるし」

「もうナナぐらいよ、皆をあだ名で呼んでるの」

あだ名メーカーこと、加藤明花の作るあだ名は全て独特過ぎる故に、使わない者も少なくない。

「そりゃあるんだし? 使わないて勿体ないじゃん。そう思わない? ぴか…」

「何か言った?」

朝香は鋭い視線を浴びせた。

「な、な〜んにも?」

「そぅ、集合時間は?」

「7時から8時辺りはどうかな?」

「良いわね、じゃあその間……おっと」

2人の近くを先生が通った。2人は話すのを止めてデッサンに集中する。

通り過ぎたのを確認後、再び会話開始。

「全員集まるかな?」

「さぁね、去年は学が来れなかったし」

「その前はサカエもんが来れなかったよね」

「かれこれ何年もやってるけど、全員集合は最初の方だけだったわよね」

「中学から高校になって場所とメンバーが変わったしね」

「まぁ個人の用事が優先だから……あっ、そうだナナ、1人増えてもいい?」

「1人? 誰?」

「うん、あの―――」




「七夕祭り……ですか?」

「そうよ、明日は7月7日。七夕でしょ? その日に集まって皆で楽しむのよ」

ホームルームが終わり、帰宅部の朝香と部活に入っていない夜月が並んで帰路についていた時、朝香が持ち出した話は、七夕祭り。

「まぁ七夕なんて名前だけで、ただ皆で集まってお喋りするだけなんだけどね。笹も短冊も無いし」

「それに、自分が?」

「そうよ、時間帯的に星も見えるわ」

「……」

夜月は思案顔で考える。

「……良いのでしょうか、見ず知らずの自分がそこにお邪魔しても」

「見ず知らずでも無いわよ、明花とか稲荷とか、ナナは知らないから……後は、イチバンとかよ」

「イチバン……?」

「前田よ、今日アンタに勝負吹っ掛けてきた」

「あぁ」

ようやく夜月は分かった。

「で、どうする? 別に心配の必要は無いわよ、皆夜月と話してみたいに決まってるからね」

「……でしたら、お言葉に甘えてお邪魔させていただきます」

「決まりね、これで全員が揃えば8人になるわ」

そこで2人は寮の前についた。

その時、

「あの、朝香さん」

夜月が朝香に話し掛けた。

「なに?」

「あのですね―――」


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