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ショックからのラッキー

バンッ!


「それで? 次はなにが現れるの?」

朝、教室に入った朝香が、席に座っていた夜月を見つけて机を叩いて言った第一声だった。

「いきなりですね……」

夜月は見ていた教科書から顔を上げて朝香を見た。

「いきなり……そう、いきなりよ。早く教えてよ」

まるでお菓子を欲しがる子供のように目を輝かせて朝香は再度机をバンバンと叩く。

しかし、夜月は目を伏せた。

「……すみませんが、分からないんです」

「え?」

「その日になって現れると分かるのですが、その日の何時なのかは決まっていないんです。もちろん、何が現れるのかはさっぱり分かりません」

「あぁ……そう……そうなんだ……へぇ……」

出鼻を挫かれたどころか、砕かれた朝香は、フラフラと力無く歩き夜月の隣、自身の席に座り、頭を机に落とした。その際に少し頭を打った。

「いたっ……はぁ……せっかく頑張ろうと思ったのに」

「分かったら教えましょうか?」

「うん……よろしく……」

顔は机に突っ伏している為、手を挙げひらひらと振って応えた。役目を終えた手はくたりと落ちる。

「はい」

夜月は再び教科書に視線を戻した。

「……なに見てるの?」

首だけ動かして夜月の方を見た。

「黒板を見て下さい」

「?」

再び首だけ動かして前を見ると、黒板の右上に文字が書かれていた。



5〜6時間目 家庭科・調理実習



「あーそうだったわね、だからエプロン持って来たんだった」

「忘れてたんですか?」

「別にいいじゃない……エプロン、持って来てるんだし……」

「……落ち込み過ぎですよ」

「……くぅ」

「あ、眠った」

朝香がふて寝を始めた瞬間、始業のチャイムが鳴った。






「……で、まだ分からないの?」

「はい、全く」

「そう……」

すでに四時限目が終わり、昼休みに入っていた。

クラスの生徒達は次が調理実習なのもあり、昼飯をどうしようか等と会話している。

朝香達はとらない予定で自身の席についていた。

「ところで、いつまで読んでるのよ?」

「はい?」

机の上に頬杖を付き、朝香は休み時間の度に家庭科の教科書を読んでいた夜月に訪ねた。

「長くない? 読む時間」

「そうですね、ですが調理実習は初めてで、足手まといにはなりたくないので」

「料理苦手なの?」

「はい、お恥ずかしながら」

「ふーん」

「朝香さんは得意なんですか?」

「……別に?」

「それにしては余裕ですね?」

「根詰めてやるもんじゃないわよ、4、5人集まれば1人くらい上手い人はいる筈だし」

「はぁ……」

その時、

「お〜い、光〜」

明花が2人の席に近づいてきた。

「どうしたの?」

「調理実習の班が決まったよ」

そう言って黒板を指差した。そこには先ほどまでは無かったプリントが貼ってあった。

「私もまだ見てないんだ、一緒に見に行こ」

「えぇ、夜月も行きましょ」

「はい」

2人は席を立ち明花と共に黒板へと向かった。黒板の前にはすでにクラスメイト達が集まってプリントを見ている。

「え〜っと……」

3人はプリントを見る。そこには今日の造る料理名とクラス全員……34人を7つの班に分けた名前が書かれていた。

料理名の下に書かれた班の中に3人は自分の名前を探す。

「どこかしら」

「七班ってことは、どこか4人班だね」

「あ、ありました。お二人の名前も」

「え、どこ?」

夜月はプリントの一番下に書かれた班を指差す。

そこに書かれていたのは、


七班(4人)

朝香光

加藤明花

佐々木稲荷

夜月光


「七班、4人班ですね。お二人共、よろしくお願いします」

「……」

「……」

班分けを見た朝香と明花は、互いに顔を見合わせた。

「……明花」

「うん……」

「どうかしました?」

「……」

互いに頷きあった朝香と明花は教室の後ろの方へ歩いて行く。

「あのー?」

「……」

朝香は無言のまま夜月を手招きで呼んだ。

「?」

呼ばれるままに2人の後を追う。朝香は自分の席、明花がその前の席に座ったので、夜月は自身の席に座った。

「どうしたんですか?」

再度夜月は訪ねる。

「夜月、私達はついてるわよ」

「うん!」

「? どういう事ですか?」

「それは……」

朝香は教室を見回した。

「居ないか」

だが目的は見つけられなかったようだ。

「誰かお探しですか?」

「そっか〜、ムーンは知らないよね〜」

「はい?」

「私達と同じ班に、佐々木稲荷って書いてあったでしょ?」

「はい、4人目ですね」

「稲荷はね、料理が得意なのよ。部活も料理部だし」

「なるほど、だからついてる、ですか」

「そうよ!」

朝香は夜月をビシッ! と指差した。

「調理実習で稲荷と同じ班、それは絶対に美味しい料理が食べられる。そう、食べられるのよ!」

その時、チャイムが鳴った。

「あ、昼休み終わった! さぁ行こう!」

3人は席を立ち、エプロンを持って教室を出た。


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