第4話 双子姉妹
白銀の大江戸山脈の山肌に黒ずんだ滲みが見えていた。
黒い煙が木枯らしで高く上がり東都の方角に棚引いて流れている。
雪面の雪はヘリコプターの残骸で爛れオイル臭が混ざって見る陰がない。
降雪の中でオレンジ色の制服の救助隊員数人が、おろく袋を乗せた担架を担いで山腹を降りた。
麓には救助隊のヘリコプターと軍用ヘリコプターが待機していた。
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高石百合欠席のまま、臨時国会が招集され開催された。
首相指名選挙は予想通りの展開で決選投票の2名に絞り込まれる筈だった。
自戒党内部で想定外の大量造反が発生した。
高石百合のトレードマークの純白のスーツが見えていない。
高石不在のまま、高石百合と小石川麗子の決選投票が始まった。
会場内にざわめきが広がり自戒党は分裂した。
高石百合の得票が想定を超える筈だった。
しかし現実は投開票が始まる前に小石川麗子の勝利が確定していたのだ。
首相指名選挙がイベントだったことを国民は知らない。
通信社は予め決められた同じ大見出しを各社に配信して投開票の前に仕事を終えていた。
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経済界の重鎮が集まる定例会合のホテルの特別室で為替相場が囁かれた。
「高石が勝てば、この国の経済は終わりだ。なんとかならんか」
「頭取、既に刺客は手配済みです。今頃はーー 」
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丸山警部と間抜けな門田警部補のコンビは、丸山が運転するスポーツタイプの覆面パトカーで首都高速を疾走した。
「警部、いつもと違いませんか? 」
大柄な門田の無意識は助手席のアシストグリップを思い切り掴んだ。
力を入れラリー用のシートベルトをも掴んでいる。
緊急走行用の赤色ランプが回転しながらヒステリックな警告音を奏でた。
「門田、お前の馬鹿力でグリップが壊れたら外れるぞ」
「警部、そんなことより早すぎます」
「俺は、このタイミングを待っていた」
門田は隣にいるスピード狂のオヤジに吐き気を覚えて肩を竦めた。
苦い胃液が逆流した。
2人が向かっているのは羽畑第2空港。
「門田、証拠隠滅される前におろくを確保しないとな」
「警部、おろくですか。俺、死体が苦手なので」
「大丈夫だ。お前に検死はさせないから、ただ、事故にしては手廻しのタイミングが良すぎてなあ」
「そうですね。最新の消滅処理場に持ち込まれたら蒸発して骨も残りません」
この時代の政府は古典的な荼毘システムを廃止し消滅処理に切替えたばかりだった。
墓地は消え、全国にメモリアルセンターが大量に設置された。
管理が難しく不衛生な仕組みは時代の流れの中で自然淘汰されて行った。
変わらず残るのはベニヤ板と鉛筆選挙。
確定申告のネット申請時代ににもかかわらず、不都合だけはアナログ優先だった。
「門田、どう思う」
「これは抵抗勢力の陰謀です」
「いや、そこじゃないよ。利権屋の対立じゃないかな」
「火葬利権とベニヤ板ですか」
「近いけどなあ。まあいい、急いでも変わらない」
「でも、丸山警部、めちゃくちゃ急いでいるじゃないですか」
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羽畑第2空港の裏ゲートのランプパスゲートが開いた。
無愛想な警備員が両側に立って手招きした。
覆面パトカーがゆっくりと空港検問を通過し制限区域内に入った。
「丸山さん、映画みたいで緊張しますね」
「お前と話していると緊張が消えそうで怖いわ」
門田は坊主頭をさすって丸山警部に頭を見せた。
「昨日から最新のスキンヘッドシェーバーにしたんですよ。頭が寒くて困ります」
丸山は門田の頭を一瞥して苦笑いを押し殺した。
「警部、今、笑ったでしょう」
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空港警察が丸山警部と門田警部補を、とある一角に案内した。
前後を制服警官に囲まれている。
「門田さん、なんかやばい感じですが」
「お前もそう思うか」
門田が丸山の革靴にぶつかった。
「警部、すみません」
その時、門田が野球のボディサインを丸山に見せた。
「・・・・・・ 」
2人は、空港警察の控え室でしばらく待たされ、空港内の専用車両に乗車して42番格納庫に案内された。
オレンジ色の救助隊員の1人が丸山の腕章を見て掛けつける。
「私、責任者の関口と申します」
「警部の丸山です」
「担当直入に申しますとDNA鑑定が必要かと・・・・・・ 」
隣にいる門田の表情がこわばる。
「分かりました。それなら仕方ないですね」
関口が丸山の前に焦げた身分証を見せた。
丸山は門田に指示して写真を撮らせる。
「門田、写真は撮れているか」
「はい、大丈夫です」
関口が丸山に捕捉する。
「身分証の生年月日は確認できるのですが、苗字のあとの名前が見えないのです」
「意味がよく分からないのですが」
「高石百合さんには双子の妹がいます。確か名前は百合枝とかーー 」
「ーー 」
「状況証拠を見る限り、妹さんの可能性は低いのですが」
「関口さん、結果が分かり次第ここに連絡をお願いします」
丸山は捜査本部の名刺を関口に渡し、一礼して空港内の移動車両に乗車した。
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しばらくして、赤いヘリコプターが羽畑第2空港の24番スポットに到着した。
ヘリコプターから降りた黒いサングラスに純白のスカートスーツの女は大きな赤い帽子をピクシーカットを隠すように深く被っていた。
横付けされた白い車に女が乗車すると猛スピードでその場から走り去った。
空港のアプローチライト(進入灯)が雪雲の下で点滅して次々に旅客機が着陸している。
遠くに富士山のシルエットが夕闇に浮かび上がる中、旅客機の着陸灯ライトが夕空で一列に順番待ちしていた。
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三日月未来




