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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。

"真夜中"

掲載日:2026/02/17

屋敷の広間の床は大理石だが、いまだけは紅い



「なんでだよ」


尖った石片を持った色白の、一糸纏わぬ少年が

同じような歳頃で同じ姿をした、活発そうな少年を殴打しながら泣いて居る



「抵抗しろよ」


石による殴打は繰り返されるが、殴られる側の少年は手で頭を庇いこそしても、絶対に反撃はしない

もしかすれば、彼はこのまま殺される自分の姿を求めて居るのかも知れなかった



「頼む、なあ」



「お願いだ………」


先に心が折れたのは、殴って居た側の少年だった


血がべっとりと付いた石片を取り落とすと、彼はその場に崩折れ、声を上げて泣き始める


僕は苛立ちながら、少年たちに「殺し合わないなら」「二人とも殺すけれど」と告げる

二人が、弾かれたように僕を視た


歩き寄ると血で紅くなった石を拾い上げ、舌を這わせる

幼い血の粘つくような甘さの中に、絶望の仄かな苦味が味わい深かった



「ちゃんとやらないから、武器は没収」


僕がそう言うと、我慢の限界だったのか、活発そうな方の人間の子供が大声で悪態を吐きながら、僕に殴り掛かってきた


彼の拳が僕に触れるかに思えた刹那、むしろ僕の拳が少年の鼻を打ち、軟骨の割れる音が耳に、感触が打ち付けた指の付け根に伝わってきた


少年は自分の付けた助走の勢いのままに、僕に打擲された事になる

生きているか心配だったが、倒れたあとも彼は断続的に「あっ…あっ……」と声を発し続けた

そうしている間にも彼の顔から、びゅくびゅくと鮮血が床に破棄され続けて居る



損失だ

苛立ちのままに僕が彼を踏み殺そうとすると、もう一人の人間の子供が、踏む為に上げた足にしがみついた



「彼は」


「僕に………っ」


「僕に、殺させて下さい」


涙でぐしゃぐしゃになった声で、それでも少年が出した提案は双方の実利を備えたものだった

僕は提案を受け入れ、腕組みして彼を視守った



引き攣りながら血を床に捨てるだけの肉になった『死にかけ』に、少年が泣きながら馬乗りになる

殺す側の流す涙が、殺される側の胸の上で血液と合流する

その一雫はまたとない美味に違いなかったが、それでも僕は、この瞬間そのものの与える陶酔の方にこそ酔い痴れて居た



少年が親友の首に両手を掛けて、弱々しく圧迫を行う


───全然だ

全く力が足りて居ない


僕が彼を罰そうかと考え始めた頃、少年はぼろぼろと泣きながら叫び声を上げた

既に生死も解らない状態になって居た彼の親友が、死に瀕した事による反射から、首を絞める両手を潰しそうな程に掴む


しかし、直ぐに躰重を掛けた圧迫が始まった

最初の圧迫で既に生命は奪われて居たようだったが、恐慌を起こした少年はそれに気付かない



金切るような叫び声が、終わりなく繰り返されるように続き


しかし終わりは訪れて

ぼぐん、という音と共に、手の中で喉の構造が砕けると、少年は呆けた表情で、眼を視開いたまま動かなくなった


程無くして、少年の頭上には血で出来た光輪が形成され始める

彼が『僕と同じもの』になった証だった



「これで君も」


「苦悶だけを食べて生きる、けだものになったね」


少年を抱き締め、頬擦りする


彼はもう"友"だ

僕は上着を脱ぐと、彼に羽織らせる



「ハッピーバースデー」


わざと音を立てて、僕は少年の唇を吸った

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