初めてジャンク・ジャンクをご利用になるお客様へ その②
ここまで四つの課を紹介しましたが、お客様が「こういう風に殺してほしい」などのように何かご要望がございましたら、遠慮なくお申し付け下さい。我々もお客様のご期待に添えるよう、全力で努力いたしますので。
では次に、何回も出てきた「序列」についての説明をしますね。
「序列」とは、各課につけられたランキングのようなものとお考え下さい。序列はそれぞれの課によって分けられており、序列十位以内の殺人者のことを序列上位者と言います。「ジャンク・ジャンク」全体の総合序列も存在してはいますが、こちらはお客様どころか、内部の人間にも公開はされていません。ゴミくずのような彼らにも競争心みたいなものはございまして、下手に課同士を刺激しあうのはあまり好ましくないのです。
この「序列」が何を表しているのかと言いますと、その殺人者の「強さ」、「依頼達成数」、「経験値の高さ」等の要素を総合的に表していると言っていいでしょう。つまり、序列が高くなればなるほど、その殺人者は強くて、信頼できる殺人者だということです。
ですので、どの殺人者に依頼をすればいいのか分からないといった場合には、まず序列を見て判断していったほうが良いでしょう。
ただし、序列上位の殺人者ほど依頼成功率と比例して契約金と報酬金は高くなり、逆に、序列が下位の殺人者ほど依頼成功率も下がるかわりに、契約金と報酬金は安くなります。依頼の成功率を取るか、お金を取るかはお客様次第です。
ちなみに、こちらでは序列十位までの殺人者の序列を公開しておりますが、もちろんこれ以外の殺人者(十位より下の殺人者)に依頼をしていただいても結構です。というより、序列上位の殺人者に依頼をするお客様はものすごく限られてきますね。お金をたくさん持っている、そういった方々ばかりです。
以上で、序列についての簡単な説明を終わります。
…長々と疲れたでしょうが、もう少しだけお付き合い願います。
はい、最後に「契約金」と「報酬金」の説明をさせていただきます。
まず「契約金」ですが、こちらは殺人者の指名と同時に支払っていただきます。言ってしまえばそれだけのことなのですが、重要なのは「依頼が失敗したとしても返金できない」という点です。
契約金を払い、無事に依頼が達成された後に支払っていただくのが「報酬金」です。こちらは依頼が失敗すれば払っていただかなくて結構です。当たり前ですね。フフ。報酬金ですので、契約金よりも多くのお金をいただきます。殺人者によってはお金ではなく、珍しい道具や宝石なんかでも報酬金とすることはできますが、基本、報酬金はお金で、できれば現金でお願いします。
…あと、お客様に限ってこのようなことは無いと思いますが、期日以内に報酬金が支払われない場合は………。分かりますよね?
・・・ ・・・ ・・・
もちろんです。お客様がそのような、信頼を裏切るような行いをするはずがないことくらい、お客様の顔を見ればすぐに分かります。
ただ、このような無粋なことをわたくしがきっちり説明しますのも、「ジャンク・ジャンク」にいる人間の唯一の収入がお客様の報酬金だからなのです。我々だってお腹は空きますし、貯金だってします。お客様から報酬がもらえないとのたれ死んでしまいます。
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ありがとうございます。お客様のような方がいるからこそ、我々は全力で依頼をこなすことができ、日々を暮らしていけるのです。
これで一応全ての説明が終了しました。お疲れ様でした。
これまでのなかで分からなかったところや疑問に思ったことなど、何か質問等はございませんか?
・・・ ・・・ ・・・?
え…?ああ!「異名」のことですか!そういえば課の説明の中で少し出てきましたね。
おさらいではありませんが、大量殺人課長は「処刑場」、猟奇殺人課長は「十三日の金曜日」、暗殺課長は「夜霧」、特殊殺人課長は「ヘルレイザー」…のように、それぞれ変な単語が付いていますね。これが「異名」です。
異名に特別な意味はございません。称号や、こちらの世界の通り名みたいなものとお考え下さい。ただし、どの殺人者にも付けられているものではありません。「ジャンク・ジャンク」で異名を持っているのは、序列上位の者のみです。というのも、異名を持つ殺人者は一流の殺人者だからなのです。大層な異名が多いのは、お客様や一般の方々に付けられたものだからです。これだけで、異名を持つ殺人者が有名だと分かりますね。
些細なことではありますが、異名を見て、依頼する殺人者を決定するお客様も少なくありません。特に「暗殺課」の序列上位者は異名しか公開しておりませんので、「暗殺課」をご利用の際は一つの判断要素として、「異名」をお役立て下さい。
「異名」についての説明はこのくらいです。他に何か気になったこと、分からなかったことはございませんか?
・・・ ・・・ ・・・
よろしいですか?また分からないことが出てきましたら、遠慮なく聞いてくださいね。
では!いよいよ本題に入りましょう!お客様の本日の依頼をお聞かせ下さい!
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・・・ ・・・ ・・・
…なるほど。では、依頼は「ダゼル」という「村の壊滅」でよろしいでしょうか?全滅ではなく、壊滅で間違いありませんか?
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分かりました。さあ、いよいよ殺人者の指名をしていただきます。
村の壊滅なので、やはり「大量殺人課」の殺人者に依頼したほうが良いかと思います。
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わたくしのオススメですか?
やっぱり序列第一位のアンセムが一番でしょうか。すごいですよ、アンセムは。異名通り、周囲を処刑場に変えてしまいますからね。
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あ!い、いえいえ!そんな…!もちろん序列上位の殺人者に越したことはありませんが、序列下位にも腕の良い人間はたくさんいます。序列ばかりに目を向けるのも、考え物ですね。お客様によってはお気に入りの殺人者を見つけ、ずっと依頼を頼んだりする方もおりますし…。
ただ、やり遂げてほしいという気持ちが強いのであれば、上位の者を…と、お考え下さい。
・・・ ・・・ ・・・
は…?あ、この殺人者、ですか…?随分下位の者に興味を持ちましたね…。
ええと…ユエル・オルティナ…。ああ、ユエルですか。
……お客様。もしかして、写真を見てお決めになりました?くすくす。
珍しいですもんね。女の、しかも十五歳の少女の殺人者…なんて。くす。
フ、フフフフ…。お客様、幼女趣味でもお持ちですか?フ…フフ。
・・・ ・・・ ・・・
アッハハハハハハハ!フ…し、失礼…。こ、このようなアンダーグラウンドな世界にいるせいか、どうにも下衆な考えばかり浮かんでしまいます。しかし、ここで自らの性癖を隠す必要などどこにもありませんよ?「猟奇殺人課」など、それはそれは多種多様な趣味と………いえ、ゴミくずとお客様を同じように考えるなど、あってはならないことです。わたくしとしたことが、まことに申し訳ありませんでした。
・・・ ・・・ ・・・
お優しいのですね。そう言っていただけると助かります…。
さて。ユエルですね。
最近「ジャンク・ジャンク」に入った新人で、なかなか素質のある面白い娘です。将来は「ジャンク・ジャンク」の看板娘になってもらいたい、将来が楽しみな、色んな意味で楽しみな…フフ…殺人者です。
・・・ ・・・ ・・・
依頼はユエルにしてよろしいですか?
うーん……契約金はほとんどいりませんし…村の大きさ等によって報酬金も変わりますが、断然安く付くでしょうし…。なにぶん入ったばかりで、圧倒的に経験不足なのが心配ですね………。ん?……えと、ちょっと…待ってください………。
…あれ?
ああああああああああーーーーーーーー!
すごい!お客様!今ユエルに依頼をすると、レオナも一緒に同行させることができますよ!
・・・ ・・・ ・・・
はっ!すみません。少し取り乱しました。レオナは、同じく「大量殺人課」の殺人者で、その序列は第二位!異名は「虐殺爆弾」。名前から想像できるとおり、女性の殺人者です。
すごいですよー?レオナは。スタイルも顔も抜群ですし、何より強いんです。けれど、本当にすごいのはそんなところではありません。
レオナはですね…、「ジャンク・ジャンク」創設時からのメンバーでもあるんです。分かりますか?レオナは二十年も「ジャンク・ジャンク」で人殺しをしているんです。つまり、五歳の頃から。そして、レオナは「ジャンク・ジャンク」のボス、「マーダーサーカス」に育てられた「ジャンク・ジャンク」の最高傑作とも言える殺人者でもあるのです。
・・・ ・・・ ・・・
いいえ。普段はこのようなことはありません。ですが…このような場所でも新人教育といったものは必要でして。期間限定のサービスみたいなものです。ですから、レオナへの契約金や報酬金は一切必要ありません。それでレオナが仕事をおろそかにすることもございませんので、ご心配なく。無論、レオナの同行をナシにしていただくこともできます。どういたしましょう?
・・・ ・・・ ・・・
はい。ではレオナも同行…っと。ありがとうございまーす。
それでは、ユエルとの契約金二万ムック支払っていただきます(この世界での通貨単位はムックです。一ムック、一円とお考え下さい)。
…はい、確かに受け取りました。これでお客様と「ジャンク・ジャンク」との契約は完了いたしました。依頼達成、もしくは失敗の報せは後日お知らせします。依頼は殺人者の気分次第で実行されますので、気長にお待ち下さい。まあ、この二人ならそれほど時間もかからないでしょう。
では…、本日は「ジャンク・ジャンク」にお越しいただきありがとうございました。
次回お越しいただけることを、心よりお待ちしております。
うあー!なんか、削除してしまい全部書き直してました・・・。いそいで書いたので誤字脱字が多いかも知れません。
次回から一話として更新していきますので、よろしくおねがいします!