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第19話 妖刀・影葵

 寒い……。最近足さむっ!

 あと眠い。朝とか起きれん。

 あ!それはオレが夜更かししてるからだ!w

 その後もユニはアオイの暗殺を監視し続けた。続ける内に、ユニはあることを知る。

 それまでユニは、アオイに刃を向けられたターゲットにばかり注目していたが、ある時、ターゲットではなく逃げるアオイを追ってみることにした。

 人気の無いところまで必死に逃げたアオイは、しばらくすると「歌」を歌い始めたのだ。奇妙な歌で、ユニにはどういった意味がある歌なのか全く分からなかった。後で知ることになるが、その歌はジパングでは「数え唄」と分類されるものらしかった。

 アオイの暗殺を目にし続けることで、ユニは何となく理解し始めていた。

 アオイに刀を向けられたターゲットはことごとく死亡している。それも自然死などではない。死体にははっきりと、深く、刀で斬られた傷が残っていた。それは明らかにアオイに付けられたものであるが、何故すぐに傷は現れないのか。そして傷が現れる時間は一定でなかった。

 刀を振り、傷が現れるまでの時間「差」。その「差」の答えは、アオイにある。ユニはそう考えた。

「歌」だ。「歌」に秘密がある。


 アオイに暗殺依頼が入り、ユニも最後の監視に入る。これまでと同じように刀を抜き、死なないターゲットに驚き慌てて逃げるアオイ。

 ユニはアオイを追い、ターゲットの方を同じ課の別の人間に見張らせた。ターゲットが死んだと同時に、ユニに連絡を入れる手筈となっていた。

 ユニの「考え」は「確信」に変わった。

 アオイが歌を歌い終えると同時に「ターゲット死亡」の連絡が入ったのだ。それを聞き、マフラーに隠されたユニの口元が、大きく上に吊り上った。目を細めてアオイの背中を見つめて呟く。

「アオイさん……あなたは素晴らしい人だ。これからも暗殺課のために働いて下さいね……」

 ユニは有能な人物が大好きだった。


 ユニはアオイの暗殺を理解したが、アオイは未だ理解しておらず、ユニに会うといつも恐怖の表情を浮かべていた。

 しかし、それで良いとユニは思い、アオイには何も語らなかった。

 知らないからこそ良いのだ。

 アオイが殺気を発するのは刀を抜く時のみで、ターゲットが死ぬ瞬間、そこに殺意は存在しない。殺意が放たれる場面で多くの人間に目撃されているが、全員アオイの顔など憶えていない。その場に居る全員の視線は、刀とアオイの服装のみに向けられるからだ。その後ターゲットがどこで死のうが関係ない。アオイとターゲットの距離は十分に離れているし、傍目から見たらターゲットが勝手に死んだとしか思われない。

 どれだけ腕の立つ暗殺者だろうと、完全に殺気を消すのは不可能だ。それはアオイも同様。だが、アオイの「時限暗殺」ならばそれが可能である。

 完璧な暗殺、多くの依頼主に好まれるサムライスタイル、曲者揃いの暗殺課でも人懐っこく扱いやすい。そういった点で、アオイはユニのお気に入りとなった。

 ただ、問題が無い訳ではなかった。アオイの唯一とも言える「問題点」……。


「ユニ殿?どうかしましたか?」

 アオイの刀・影葵に集中しすぎていたようだ。いつの間にかアオイが不思議そうにユニの瞳を見つめてきていた。

「……いえ。何でもありません」

 フッと息を吐き、目を閉じるユニ。

 何にせよ、ユニはアオイの暗殺スタイルを崩させるつもりはなかった。これからも、今までどおりに「失敗した」と思わせておけば良い。その度にアオイに謝られたり、泣かれたりするのは非常に鬱陶しいことだが。

 ユニはもう一度、影葵に視線を向ける。

 アオイはというと、ユニが怒っていないと判断したのか袋に入っているたい焼きを美味しそうにパクパクと食べていた。

 慣れてきているな?と、視線はそのままユニは思う。

 アオイは仕事をきちんとこなしているので何も問題は無いし、怒る必要もどこにも無いのであるが……。

 仮にも暗殺課序列第一位にして課長の自分の前で、緊張感なくたい焼きを食べられるのは、何というか……いただけない。お茶を出し、すすめたのは自分だが。ユニにも威厳というものがある。

 ただ、ここでアオイを咎めることはしない。今の自分に生まれた気持ちなど、なんと小さく下らない感情か、ユニには分かっていたから。

「暗殺課」の、そして、「ジャンク・ジャンク」にとって有益な人材であればどんな人物でもユニは大歓迎だった。特にアオイは色々と。

 アオイ自身のことはその程度に、ユニの思考が影葵に向けられる。

 影葵。

 アオイから直接その名前を聞いた。なんでも、アオイの家に代々伝わる刀だとか。こういうのを「伝家の宝刀」というのだろうか。

 それほどまでに、アオイは、影葵を大切にしており、その存在自体を誇りにしているところもあった。

 しかし、その実体は「宝刀」ではなく「妖刀」である。

 アオイは妖刀などとは思っていなくとも、影葵全体から滲み出ている、あの禍々しいほどのオーラを見れば誰だってそう思う。

 それを感じられるのはごく一部の者だけだろうが……。ユニのような、ある種似ている者でなければ分からない。

 そしてユニが妖刀と断じられる最たる要因は、影葵の持つその「能力」にある。

 アオイの唄によって成される時限暗殺――――。

 この「能力」がアオイ本人によるものであることはまずない。ユニから見るに、アオイはどう見ても人畜無害な人間そのものだ。

 あの刀だからこそ成せる業。

 ……そうは思うが、影葵を持った人間全てが出来ること……ではないとも思う。

 そこまで考えが至ると、ユニの好奇心はいつも刺激される。

 これだからアオイ・ミツバという暗殺者、もとい「人間」という「種族」は面白い。

 楽しみだ。楽しみだなあ。自分にとってワケ分からんものがだんだんと理解できていくこの感覚は何よりも楽しいことだ。

「向こう」じゃ永遠に味わえなかったろう。


 ……そこから少し、落ち着いた静かな時間が続いた。ここが殺人者どもの集まる巣窟とは思えない程、ゆったりとした時間が流れていく。


「そ、そういえば!例の件はどうなりましたか……?」

 静寂を先に破ったのはアオイの方だった。袋の中のたい焼きは全て食べられていた。ちなみに紅茶は二杯おかわりした。

「例の件?」

 眉一つ動かさずユニが訊き返す。普段のアオイならば、暗殺依頼達成を知らせればすぐに(申し訳無さそうに)「ジャンク・ジャンク」を後にするので、珍しいことだった。

「“会議”が……あったと、聞いて……」

 さっきは少し興奮気味に訊いてきたアオイだが、ユニに対してそのような態度をとったことに恐縮したのか、今度は恥ずかしそうに俯いて、小さく声を発した。

「会議……?ああ」

 無表情のまま質問を理解したユニ。

 ここでアオイの言う「会議」といえば一つしかない。

「ジャンク・ジャンク」というグダグダの組織体系の中で、およそ組織らしいと思われる行い。

 それが「四課長特別会議」。

 その名のとおり、「大量殺人課」、「猟奇殺人課」、「暗殺課」、「特殊殺人課」の「ジャンク・ジャンク」全四課の課長が一同に集まり開かれる、「唯一」の会議であった。

 次回!予告!!

 寝るときに靴下を履くか履かないかで対立する作者と何か!

 作者「くそさっむい夜中に寝るんだ。靴下履くだろ!」

 それが作者の主張。思えば中学の頃から冬場は靴下を履いて寝ていた。

 これが少数派なのか多数派なのか!?どちらにせよ、作者は意見を変えるつもりなど毛頭無かったのだった……。


 皆も靴下履いて色々しろ、よ!いや、期待してろよ!

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