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第16話 遅れて聞こえる殺人歌

『タカ!』『トラ!』『バッタ!』


 タッ!トッ!バッ!タトバ、タットッバ!


「ええ!ナニコレ!?」

「歌は気にするな!」


 視聴者(気になる!)


 ネタが分からないひとにはごめんなさい。「仮面ライダーOOOオーズ」初変身時のアレですww

 つまりはそういうことです。

 歌はきにするな!(笑)

 ひとつ ひとのいのちと おのれのいのちをくらべても どちらがおもいか わかりゃあせん 


 ×


「誰です?アニキを殺ろうなんて……」

 舎弟は怒りの表情を浮かべ、誰とも無く周囲を睨みつける。

「ウチのボスに決まってんだろうが……」

 感情を込めずに言うエイジル。

 舎弟は表情を、怒りから驚きのものへと変える。

「……まさか、そんな……ボスが?」


 × ×


 ふたつ ふたつのいのちを えらべというならば だれがおのれいがいを えらぶだろ


 × ×


「分かんだろうが。ボスはオレにその座を奪われんのを恐れてる」

 ボスはファミリーを率いていくに十分な器を持っている。老いたとはいっても、迫力とその権力は未だ強力だ。

 自分も、そんな力に魅せられガジリィネに入った。そしてここまで来た。

 何事も新しくなるものだ。

 魅せられたとは言ったが、ここまで往生際が悪いとは思わなかった。ある意味、今回のこの件によって、エイジルが進むべき道は一つに定められたと言っても過言ではなかった。

 古いものはいつか死ぬ。

 その、「いつか」が目の前にまで来ていた。


 × × ×


 みっつ さくりときってみたけれど どうしてどうして ふしぎなことが


 × × ×


 エイジルの言葉を聞き、舎弟は困惑しているようだった。が、すぐに決意めいた顔となる。

「いや……でも安心してくださいアニキ」

「あぁ?何が?」

 舎弟の言ったことが分からず、後ろを振り向くエイジル。真剣な表情の舎弟はどこか面白く、笑いそうになる。

「オレはどこまでもアニキについて行きますから!」

 馬鹿らしいほどに真っ直ぐにエイジルを見て、決意表明をする舎弟。

 あちらの気持ちと気合は本気で、エイジルもそれは分かるのだが、今の自分にとっては気休めにもならなかった。

 ただ、嬉しくはあった。

「オレについてくるんだったら、いつでも死ねる覚悟してろ。全部終わったらそれなりの地位は用意しといてやる」

「は、はいっ!」


 × × × ×


 よっつ しなず たおれず いのちが きえない


 × × × ×


「……にしても、さっきのガキ何だったんですかね」

 舎弟は話題を先程の女へと変える。

「ボスに雇われた刺客だろ。ボスももっとまともな奴送り込んでこいよな……」

 さっきの女の、暗殺が失敗した時の慌てた顔ときたら……。今思い出しても笑えてくる。おそらく経験が浅い、もしくはほとんど素人なのだろう。遠くから狙撃してくるならまだしも、こんな街中で襲ってくるなんて。

 しかも刀を振ってきて……、自分たちを斬る前に、他の人間に当たるではないか。


 ん――――――――――…………?


「いや、オレが言いたいのは」


 × × × × ×


 いつつ いつかいつかと まちつつも そまらぬじめんと このからだ


 × × × × ×


「あのガキの格好ッスよ。あれ、サムライスタイルでしたよね」

 舎弟は嬉しそうにそう言った。

 エイジルも女の姿全体を思い出す。おかしな格好だとは思ったが、言われてみればなるほど。直に見るのは初めてではあるが、あれはジパング特有のファッション、サムライスタイルであった。得物も刀と抜かりない。

 しかも、あの刀は見た感じ真剣だった。

 ……あれだけの装備、いったいどうやって手に入れたのか。

「フン。女のサムライか?ボスもなかなか良い趣味してるぜ」


 × × × × × ×


 むっつ ろくろくと そのてににぎるは かげあおい


 × × × × × ×


 舎弟は興奮した様子で身振り手振りを加えて言った。

「アイツの格好、本場モンでしたよ!しかもあの刀、本物でしたよね?オレ、本物見るの初めてでしたよ!」

「そういやお前……ジパングマニアだったな」

「オス!」

 エイジルは呆れてため息を吐く。

 ……こういった稼業で、ジパング好きって奴はけっこういる。文化やファッション、その独特の雰囲気は、この世界では異質で、珍しく、格好良い。特にサムライやヤクザ(こちらで言うところのマフィアみたいなものです)の生き方に憧れる者も多い。

 エイジルもそういった気持ちは分かるし、自分にもそういう部分はある。が、たった今自分たちは命を狙われたばかりなのだ。相手がヘボだったとはいえ、もう少し緊張感を持つべきだ。

 そう。もはやいつ殺されてもおかしくはないのだ。

 エイジルは、まだ熱のこもった舎弟を横目に、気を引き締めた。


 × × × × × × ×


 ななつ なくなくそのばを たちされば


 × × × × × × ×


「ていうかアニキ……。何か、寒くないですかい?」

「あぁ?」

 さっきまで暑苦しいくらいにジパングを語っていた奴が何を言っているのだ。エイジルはそう思った。

 しかし、言われてみれば……。

「確かに……少し、寒いか……?」

 背筋が嫌な感じでひんやりする。血の気が引いていくような。そんな感じ……。

「ア、アニキ……な、何か変ですぜ……。こ、今度は腹が、スゲー熱く感じ、ます……」

「!ッ……!」

 エイジルの目が大きく開かれる。その瞳には、驚きと恐怖。

 舎弟の着ている白いシャツの、腹の部分が赤く染まり出していた。赤い、小さな点が、シャツを侵蝕するように広がっている。

「あ……っ!なっ……!」

 このような職業柄、見間違うはずがない。

 あの赤は、血の色だ。

 しかし、いつだ?いつ刺されたというのだ!

 エイジルの頭が混乱し始める。

「まさか……!」

 答えに辿り着こうとしたその時、エイジルも腹に生暖かさを感じた。


 × × × × × × × ×


 やっつ やっとこ くびが とぶ


 × × × × × × × ×


 ブシュウウウウ――――……!

 ほぼ同時に、二人の腹から盛大に血飛沫が立つ。

「キャアアアア!」

 悲鳴で支配されていく街の雑踏。一瞬でその場はパニック状態となった。

 返り血をシャワーの様に浴び、赤く染まった数人の通行人。未だ大量の血と内臓をどくどくと地面に流し続ける二つの死体。


 数時間後、この二つの死体は、「無かったもの」として処分された。


 ×


「はぁ……」

 全て歌い終わった女は、少しだけスッキリしたのか満足気に息を吐き、狭い空を見上げた。自分のいる暗く汚い世界とは違う、真っ青と真っ白の世界。

「でも……」女は表情を曇らせる。

「今度はどうやって言い訳しようかな……」

 仕事の後はいつもこうだ。仕事の後、とは言っているが、失敗しているから、どうとも言えない……。


 私の心も、あの空みたいに晴れてくれたら良いのに。

 次回!予告!!


 最近の金遣いの荒さよ……。

 服とか買ってる訳じゃない、趣味に関する金がさあ。


 次回も、ご期待テンパイ・一発・跳満ですよ!


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