第15話 野心進行中暗殺執行中
サブタイは敬愛する荒木飛呂彦先生の短編集、「死刑執行中脱獄進行中」から……。すごく面白い短編ばっかです。タイトルの「死刑~」は映画の「ソウ」とかに似たものがあるんですよね。
――――…………あの二人は、この街を仕切るギャングマフィアの一つ、「ガジリィネファミリー」の人間で、えと……前を歩くのが……ファミリーの若頭、エイジル・バンツェッタさん。今回のターゲット……。後ろを歩くのは……んーと……ああ!若頭の舎弟さんだ!名前は忘れたけど、常に若頭の側にいるって資料に書いてあった。
依頼は「エイジル・バンツェッタの暗殺」。
殺害方法は、問わず。
誰に殺されたのか分からないように殺してほしい、とのこと(暗殺は大体そうしなければなりませんね)。
依頼主はガジリィネファミリーの現組長さん。エイジルさんは頭のキレも腕っぷしもカリスマ性も、次期組長に申し分ない組織のナンバー2。
しかし、野心が強すぎ協調性に欠けている。ファミリー内ではもう自分がボスになったように振る舞い、内部で無意味な抗争を起こさせ、他のファミリーにもちょっかいを出し、ガジリィネファミリーの存在を危うくしている。
それが暗殺理由……。
悲しいですね……。
組織の人間が、しかもトップの人間が同じ組織の人を暗殺なんて……。
もしも私が同じ立場だったら、ひどく傷つきます。「ファミリー」とは、「家族」という意味なのでしょう?血の繋がりは無くとも、血の結束で結ばれているのではないのですか?
……まあ、私があれこれ考えても無意味なこと。私はただ、与えられた仕事をきちんとこなすだけです。
そんな訳で、エイジルさんの周りには常に護衛が付いているんですが、火曜日の昼下がりだけは、少数の護衛だけで街に遊びに出かけるらしく、その情報通り、今日は護衛とも言えないチンピラが一人。
運が良いみたいですね、私。
暗殺目標はエイジルさんだけですが、護衛の人は何人いようと殺さなくちゃいけない。数は少ないほうがやりやすいですから。一人として逃がすわけにはいかない。
それが「暗殺」。
……でもなぁ……私って……。
女が色々と考えている内に、暗殺目標の二人が女の「間合い」に足を踏み入れる。
(あー、もう!考えるの終わり!二秒で片を付ける!)
心の中でそう決意し、くわえていた串を「ぷっ」と空高くへ飛ばした。
くるくると回り地面へと向かう長い串。同時に女も二人へ駆ける。
素早く人をかき分け、最短で距離を詰める。
そして二人の目の前に飛び出し、急停止する。草履の先が地面の土を抉る。
「あぁ?何だお前」
後ろに控えていた舎弟が、いきなり現れた奇妙な女にすごんでくる。神経質なその視線は、真っ先に腰の刀へ向く。次は脇に抱える紙袋。
前を歩くエイジルも、最初は少し驚いたものの、すぐにその目を冷たいものへ変え、ゴミを見るような目で女を見下ろしてきた。
女はすぐに体を屈め、上体だけを回し、その手を刀の柄へと伸ばした。その瞬間、女は鞘から刀を抜き放ち、その刀身を二人めがけて横へと滑らした。
居合い抜き。
ジパングで生まれた、刀を使っての神速技。
エイジルも、その舎弟も、一体何をされたのか分からないといった表情。周囲の人間も刃物が抜かれているというのに、誰一人として悲鳴を上げない。そこだけが静寂に包まれる。
串が、地面に落ちた。
「また、つまらぬものを斬ってしまっ」
女が目を閉じ、刀を納め、カッコをつけて言い終わろうとした、その時――。
「何しやがんだ、このガキィーッ!」
と、舎弟が怒鳴ってくるのが聞こえたので、女はすぐに目を開け確認する。
何も変わっていなかった。刀で斬ったはずなのに、二人とも血の一滴も出していない。
「うそ……」
恐怖と驚きが混ざり合った表情。女の背中がひんやりとする。ずんずんと近づいてくる舎弟に、思わず後ずさる。
「おうコラ……お前、自分が何やったか分かってんのか?もうお前生きて帰れると思うんじゃねぇぞ!」
近づく舎弟を視界の中央に入れ、女は後悔した。
……やっぱり……やっぱり、私には暗殺なんて無理だったんだ……!
また失敗しちゃったよ――――!
素早く反転し、来た道を一目散に逃げた。
暗殺は失敗しても成功しても、すぐにその場は立ち去ったほうが良い。後ろで「待ちやがれ!」という声が聞こえてきたが、待ってなどいられない。
後ろを振り向くことなく女は走った。大量のたい焼きをしっかり抱えて。
「待てっつってんだろ!」
「もういい……。ほっとけ」
追いかけようと舎弟が走ろうとしたとき、エイジルが冷静な声でそれを止めた。周囲も、何事もなかったように歩き始めていた。
「ですけど兄貴!……あいつ、どこからか雇われた暗殺者かも知れませんぜ!口を割らせりゃ……」
エイジルはどこまでも落ち着いた様子で踵を返す。「今日はもう止めだ」
「あ、兄貴?」舎弟も慌てて後を追う。
「誰の差し金かくらいすぐに分かる」
「え、本当ですか」
エイジルの目は鋭く前方を睨み、禍々しいオーラを体全体から放っていた。
「ッはあ……!はぁ、はぁ……。はあああー……!」
休みなく全力で走った女は、両膝に手をつき、息を切らせていた。
「……はあ……。まただ……また失敗した」
今にも泣き出しそうな声と表情で空を見上げる。裏路地に逃げてきたので、周囲を囲む建物等で空は小さく切り取られていた。
しばらくはそうしていたが、意味の無いことと思い、女はとぼとぼと歩き出した。
これで何回目だろう……。
暗殺が失敗したのは今日だけに限ったことではない。
前回も、前々回も……というより、この女は依頼された暗殺を「全て」失敗していた。
なのに……確実性が一番大事な仕事なのに、依頼が途切れることはなかった。仕事仲間も何も怒らず「お前は仕事が早いな」などと言う。
「みんな私のことイジめてるんだ……。はあ」
本当に泣きそうになる。
そんな時、彼女はある「唄」を歌う。
子どもの頃に覚えた数え唄だ。
その唄を歌うと、妙に安心し、体が軽くなるのだ。
女の澄んだ、それでいて子どもっぽい明るさを持ち合わせた声が、ひっそりとした裏路地に響く――。
次回!予告!!
ポケットモンスターBWだが、プレイした人はいるかい?オレはクリアし、殿堂入りも果たしたんだが……。
今回のポケモンは、何か……
エロくなかったか!?友達は「全然、お前の頭がおかしい」なんて言うんだ!
いやいや、おかしいけれど!ポケモン(任天堂、ゲームフリーク)もおかしいでしょっ!エロいよ!それに怖いよ!
ん、でもね。
それもあわせてポケモンBW……
名作ですw
次回もポケモ○、GETだぜ!