番外編 十三日の金曜日
ごめんなさい!今日「十三日の金曜日」なんで、「これはあいつを出さなくては!」と思い、書きましたww
本編を読んで下さっている方は、見なくても良い内容ですし、もしかしたら見ないほうが良いかもしれませんww
楽しみは後から、って人は本編を待ってて下さい。
簡単に言えば、課長が登場します。本編でもいつか出るんで、本当に読んでも読まなくても良いお話になってます。
ええ。本当に、企画モノみたいなもんですww
……日付も変わった真夜中。
とある湖近くのキャンプ場で、一組の、若い男女が、テント内で夜を共にしていた。
テントの中にはランプが一つあり、灯りはそれだけだった。しかし、周囲は森に囲まれていることもあって、その唯一の光は十分に明るい。外から見れば、くっきりと、それでいてぼんやりと、テントの形を教えてくれるだろう。
電気ではなく、火の明るさというのは、二人に、奇妙な、温かい安心感と、ロマンチックな雰囲気を与えていた。
男女は、二人ともテント内で寝転がるような格好で、お互いを見つめ合っていた。
男が微笑みながら、女の長い髪を触る。このキャンプ場に来てから湖でずっと遊んでいたので、女の髪はまだ、しっとりと濡れていた。
そのまま、手を女の頬へと、やる。
女も微笑み、男もまた、微笑む。
いつの間にか二人とも、くすくすと、小さく笑っていた。
「そういえば、今日って何曜日か、知ってる?」
男が唐突に、それでいていたずらっぽく笑いながら女に訊ねた。
「え、今日?……金曜日でしょう?日付変わったし」
不思議に思いつつ、女は答えた。
「何日の?」
男が訊く。
「えー、何?何かあるわけ?」
「いいから」
女のリアクションを見て、男の笑みが、より子どもっぽくなる。
「十三日、だっけ」
「聞いたことない?」
「何を?」
「十三日の金曜日だけ現れる殺人鬼の話」
こころなしか、男の瞳が光る。
「ないよ~。何それぇ」
女は笑いながら男の目を見た。
「けっこう有名なんだぜ?実際にもう何人も殺されているらしいし」
男は相変わらず楽しそうに語る。
「子どもっぽいなぁ。噂でしょ?」
女は呆れながらも、男の話を止めようとはしなかった。こういった下らない話も、こういった場所で、そして二人きりの時には、案外良いものだ。そう思った。
「それに……、十三日の金曜日だけしか現れない、って、けっこうマヌケじゃない?それだったら、そこらへんにいる麻薬中毒者とかの方がよっぽど危ないと思う」
女がおかしそうに笑い、男も釣られて笑った。「確かにな」
「んで、その殺人鬼がどこに現れるか、なんだけど」
「まだ続くの?」
「ここから面白くなるんだって!」
疑うような目を男へと向ける。
男は声を低くし、雰囲気を出しながら言った。
「その殺人鬼は、ある湖に潜んでて……そして、その湖ってのが……」
「ここってわけ?」
「そ!どう?」
満面の笑みを浮かべる男。まるで自慢話か何かをしたかのようだ。
「どう?って言われても……。っていうか、今日ここに来たのも、それ考えてのこと?」
殺人鬼の現れる湖。十三日の金曜日にしかそいつは現れない。
そして、今日がその十三日の金曜日で、ここがその湖近くのキャンプ場……。
男がこの話を知っていて、今現在話している状況からして、まるっきり考えなしでここに来たとは考えにくかった。
「それだけじゃねえけどさー。こういうのあったほうが面白いだろ」
「誰から聞いた話?」
「え……あぁ、いや、これは――」男がそこまで言いかけた時だった。
ガサッ。
外から草と何かが擦れあうような音が聞こえた。
二人の身体はビクッと、すぐさまその音に反応した。
「今の音、何……?」
震えた声で女が訊ねた。
「か、風とか……動物だろ……」
風。動物。……確かにそうかもしれない。だが、何故二人は「人ではないのか?」と考えなかったのだろうか。
当たり前だ。
昨日からここに来ているのは自分達だけなのだから。
そして、先程までしていた話が、二人から「人」という選択肢を消していた。このタイミングで人が来るなど……。来たらそいつは……。
二人の間に、無意識に緊張が流れていた。
今まで気付かなかったが、話をしていなければ、ここはこんなにも静かなのか。そんなことが頭に浮かぶ。
しばらくの間、息を潜める二人。
それ以降、音が聞こえることはなかった。
しかし……。
どうしてか、「何かの気配」といったものが消えることは、なかった。
「ね、ねえ!ちょっと、見てきてよ外!」
女の声は小さく抑えていたものの、焦りと緊張からか、もしくは周囲の静寂からか、普段の声量よりも大きく聞こえた。
「……わ、分かった」
そう言って男は立ち上がり、テントの外へと顔を出した。怖かったが、誰かが確認をしなければ、この気持ち悪さはずっと続く、そう思っての行動だった。
音はテントのすぐ近くから聞こえた気がしたので、周囲をランプで照らしてみた。左右へゆっくりと、照らしていく。
周囲には動物どころか、風一つ起こっていなかった。
男がホッと、息を吐く。
そして、女に何もなかったことを伝えようと、顔をテント内に向けた時、想像していた中で一番最悪の部類に入ることが起こった。
「ねえ」
バッと身体を前方に向け直す。
声だった。声?
人の声であった。まるでこの世のものとは思えないほどの、低く、絶望感に満ちた、男の声。
「誰だ……!」
ランプの灯りに、さっきまでは映らなかったものが映った。
ずぶ濡れの男がそこにいた。
身長はかなり高く、二メートルはありそうだったが、それとはアンバランスに身体は痩せこけていた。
そして、男が驚いたのはそいつの表情や、全身から溢れるオーラのようなものであった。
顔面蒼白、どころか、全身が青白く、その背後からは夜闇の漆黒よりもどす黒いオーラが滲み出ていたのだ。顔の弱弱しさや、体格の貧弱さから、男は「万が一こいつが襲ってきても勝てる」という自信があったが、どこかしら恐怖も覚えていた。今まで味わったことのない恐怖で、体を動かすことも躊躇われた。
「どうしたの……?」
男の様子を察してか、女もテントから出てくる。そしてすぐにランプに照らされる不気味な男を視界に捉える。
「な、何あいつ……」男の背後に隠れるようにして、女が言った。表情は言い知れぬ恐怖と不安によって歪められている。
「あぁあああああ――……」突然現れた不気味な男は、急に声を出しながらいっぱいに伸びをした。
いきなりの行動だったので、男と女は体を固まらせる。この男から目を離してはいけない、と、無意識に意識していた。
伸びを終えた男は、やはり気味の悪い笑みを浮かべたまま口を開いた。
「ねえ、君達……この後セックスするんだろ」
「……」
「……は?」
予想外、というか……場違いなその台詞に、女は顔をしかめながら息を吐いた。
「するんだろ。セックス」なおも同じ質問を続けてくる。
「だから何だってんだよ!それがお前に関係あんのかよ!気持ち悪ぃからさっさとどっか消えろよ!」
男は声を荒げて言った。普段ならば笑いながら流すところであったが、この男、この状況ではその「軽さ」が余計に怖くて、気持ち悪かった。
「セックス……嫌いなんだ。やるのも見るのも。どうしようもなく吐き気がしてきてね。薬をキメてヤッてる奴らなんか、どうかしてると思う。昔っからなんだ……昔っから。トラウマってやつ……」
……何だこいつは。空ろな目と表情、およそ人の肌とは思えないその蒼白さ……。そこから発せられる意味の分からない台詞。
男は気付かれないようにテントの中に目をやった。
一応、銃は持ってきていた。あいつがこれ以上近づいてくるようなことがあれば、すぐに銃を持ち、撃とうと思った。
ブギョッ――!
そこで男の思考は止まった。
「え……?」
女は何が起こったのか、数秒経っても分からなかった。
分かるのは、目の前に立っていた男が倒れ、離れた所にいた不気味な男が目の前にいた、ということだけ。そして、段々と分かってくる。自分の顔の半分が、血に染まっていることに。
自分のものではない。倒れた男の血だ。しかし、どこの……。そういえば……男が倒れる瞬間、変な音が聞こえた。「ブギョッ」って……、そんな音。
おそるおそる足元に目を向ける。倒れた男がランプで照らされる。
死んでいる……。
「ぃ……い、や……」
しかし……男の体に傷、というか、血は付いていない。
血は……男の頭から……。
「は……っは、っは、はぁ……!」
女の息がどんどん荒くなり、目はそれを視界に入れる。
「あ、あた、ま……!」
男の頭、頭頂部に穴が開いていた。そして、よく見れば男の顔面も信じられない形に破壊されていた。
ランプは照らしていた。その「中身」も。
「!……の、のう……」
「あ、ごめん。久しぶりだったから我慢できなかった。君らがセックスしようがしまいが、関係無かった。いや、でも、うん。だったら、あんたも死んでよ……」
血に染まった手が、女の顔にゆっくりと近づいてきた。
「い、いやあああああああああああああ!」
――――。
――――……と、これが、ユエルがフレディから聞いた「猟奇殺人課」序列第一位「十三日の金曜日」ジェイソン・クリスタルの話。
聞いたときは安っぽく聞こえ、それは今も続いている。
しかし、納得したこともある。序列一位にも係わらず、ジェイソンが普段「猟奇殺人課」課長ではないのは、十三日の金曜日にしか動けないから、と聞いたときは「なるほど」と思った。
が、今度は「何故十三日の金曜日にしか動けないの?」という疑問が沸いてきたが、そこまではフレディも教えてくれなかった。
……一体、十三日の金曜日以外は、どこで、何をしているのだろう。
ユエルは未だジェイソンを見たことはない。「ジャンク・ジャンク」でも見たことがある者はわずからしい。
どのような容姿で、どのように人を殺すのか……。ジェイソンのことはほとんど分からない……。
「そういえば……今日は『十三日の金曜日』だったな……」ユエルがぽつりと呟いた。
運が良ければ、今日、その姿を見られるかもしれない。
ユエルはそう思い、期待し、でも無理かな、と思いつつ笑った――……。
……今日になって書きたくなってしまい。
十三日の金曜日ってなかなか来ませんもんねww
あ、ていうか、この世界での曜日とかの数え方とか、全部一緒ですから、現実と。
十三日の金曜日=不吉……って考えがあるかは分かりませんがww
いやあ!にしても!十三金にカンパーイッ!