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第10話 カーニヴァル~Ⅲ~

 台詞一切ありません。

 また、レクターが逃亡するまでのプロセスはかなり省いております。なので、詳しく知りたい人は「羊たちの沈黙(映画・小説)」を観てくださいww

 あと、作中に「警察」といった単語が出てきますが、この世界での「そういった存在」を分かりやすくするため、便宜上「警察」と呼び、「警察官」とも呼んでいます。やっすい設定といたらなさを笑ってくださいww

 レクターがその身を囚われ拘束されて、数年が経っていた。世間一般の「レクター事件」の騒動は、既に収まりを見せていたが、それはあくまで「世間一般」の話で、医学界ではなお、レクターの存在は大きなものであった。……というよりも、捕まったことでよりその名と存在感を上げていた。レクターの房には若い医学生から多くのレポートが送られ、レクターにそのアドバイスを求めるほどであった。

 ――その頃世間の目と興味は、別の事件に向けられていた。

「オックス・ジェル事件」。

 後にそう名付けられる連続誘拐殺人事件。

 レクターの件と同じく、こちらも難事件だった。浮かばない容疑者、増える被害者。既に六人もの人間が犠牲になっており、その全員が女性であった。

 ……レクターを追い詰め、捕らえたあの刑事はもういない。そして、事件を解決まで導けるような人間も残っていなかった。

 しかし……。

 新たに残ったものもある。


 どうにもならなくなった警察は、レクターに捜査協力を依頼したのだった。


 普通なら考えられないことだった。捕まって以降大人しくし、何も問題を起こさずにいたレクターであったが、凶悪な殺人犯であるということに変わりないのだから。

 かといって、レクターは元・精神科医でもあり、加えて殺人鬼の素質も併せ持っている。

 レクターには殺人鬼の行動を分析し、そこから行動原理を割り出すこともでき、そしてその心理も分かるはず……そう考えてのことだった。

 ただ……レクターが簡単に捜査に協力することはなかった。

 レクターが収容されていたのは、刑務所ではなく精神病院であった。その中でレクターは、他に収容されている囚人達と比べてもマトモであり、そして――だからこそ、その異常さが際立っていた。

 何か問題を起こすことや、そういったつまらないことを嫌うレクターはまた、警察といったものが大嫌いだった。

 レクターの反応ももっとものことで、警察も強く出ることができなかった。それでも諦める訳にはいかない。警察にだって面子やプライドといったものがあって、それだけで出来上がっていると言っても良かった。だから焦った。もう時間が無い。これ以上殺人鬼を好き勝手にやらせていては、色々な方面に顔が立たなくなる。

 だからレクターと取引をした。

「この房内のみであれば、レクターの望むことを叶える」……といった具合に。

 減刑や、身体の拘束を外して外へ連れて行くことはできない。なので、警察にとってはこの提案が限界だった。

 それでもレクターは協力しないだろうと、半ば諦めていた警察であったが、意外なことにレクターはそれで協力することを了承したのだった。

 ただしそれにも条件があった。まず、「直接的に犯人の名前や居場所が分かってもそれは言わない」そして、「与えるのはヒントだけ。ヒント一つにつき自分の願いを聞け」というものだった。

 これを反対する余裕は無かった。警察は早速、レクターに捜査資料や情報を、独房越しに渡していった。


 成果と結果はすぐに出た。

 レクターが捜査資料や被害者の殺害方法など、与えられた情報から分かったことを「ヒント」として、いくつか警察に渡すと、すぐに犯人は捕まった。無論、レクターは直接的に教えていないので、そこは警察の力を誉めなくては、なのだが。

 ……「ヒント」を貰いすぎれば、それだけレクターの言うことを聞かなくてはいけない、というのもあった。「ヒント」一つにつき、すぐにレクターの要望は受けなくてはならなかった。それができるまでは次のヒントも貰えない。レクターもそこは計算してなのか、一発で分かるような「ヒント」を出したりはしなかった。また、それで分かってもどうとも思わなかった。大事なのは、約束を守らせることだった。

 警察も素直にレクターの言うとおりにするのは気が進まなかったし、「ヒント」だけ聞き、約束を反故にすることもできた。しかし、それはできなかった。もしそんなことをしてしまえば、レクターはもう二度と警察に協力することはないと分かっていたから。

 レクターの頭脳は、ここだけに役立てるのではない。今回のような事件が起こり、お手上げの状態になった時、必要になるのは多くの警官などではなく、この殺人鬼の方なのだ。

 だからレクターの要求を素直に聞いた。それはレクターの要求がそれほど無茶苦茶なものでもなかった、というのもあった。

 レクターが求めたのは、「美味い料理が食べたい」や「読みたい本がある」などのようなものばかりだったからだ。

 独房という狭い世界で、たったそれだけのことを与えてやるだけで凶悪犯が捕まると言うのであれば安いものだった。

 警察は喜んで独房に一流のシェフを呼んでやった。


 レクターと警察のそういう関係が数年続いた頃、それは起こった。

 またしても解決困難な殺人事件が起こり、またしてもレクターに力を求めた。それはもう、警察内部では当たり前のこととなっていたのかもしれない。「分からないことがあればあいつに聞けばいい」……学校で勉強を教えてもらうようなノリで、警察はレクターを頼っていたのだ。

 ただ、今回のは少しばかり……事件の重要度というのが高かった。いや、人の命が危険に晒される事件に、重要度が高い低い云々というのは間違っているのかも知れないが、ただやはり、これまでの事件以上に早く片付けなくてはならないものではあった。

 とある政治家の娘が誘拐されたのだ。

 犯人の特徴として、誘拐した人間をすぐには殺さないということは分かっていたので、警察もすぐに手を打った。

 これまでのようにレクターに協力を仰いだ。しかし、「ヒントは無しにしろ」と。まどろっこしい「ヒント」なんぞではなく、一発で、直接に、犯人の名前を教えろ。もしくは住んでいる場所、外見的特長……等等。すぐに犯人を挙げたかった。

 そんな考えを見透かしているかのように、レクターは相変わらず「ヒント」のみを与えてきた。そして相変わらずそれに対しての報酬も、求めてきた。

 そんな余裕は無かった。自分達の力ですぐに解決できる事件であればレクターに捜査協力など頼まない。この事件は、それプラス「警察の威信」というものが懸かっていた。

 なので警察も強引な手をとった。「ヒント」の報酬を、レクターの求めた以上のものを与え、もしくは、与えず奪う形でレクターに犯人の名前を言わせようとした。

 政治家の娘が誘拐されて二日が過ぎたとき、レクターはようやく警察の頼みを聞いた。


「犯人の名前を言おう。ただし、それは、私が、直接、当人の前で、だ。それ以外では絶対に言わない」


 ――と。

 つまり、独房越しにではなく、レクター自身が政治家に直接犯人の名前を言うと、そう言っているのだった。


 結果、レクターは拘束衣で自由を奪われたまま、手押し車に乗せられ房を出た――――。

 警察に失敗があるとすれば、この時レクターを外に出したことではなく、レクターに「捜査協力を頼んだ」というところにまで遡るかもしれない。

 外に出たレクターは、一瞬の隙を突いて厳重な警備の中を逃げ延びた。無論、犯人の名前は一切語っていなかった。

 この時、食事を運んできた警察官二名を殺害している。

 普通ならば……。普通の人間だったならばどうするだろうか?息苦しい地下にある独房からようやく出られて、何を思い、何をするだろう。

 普通以下の神経を持った人間だとしたら、「絶対に捕まるものか」と、日々を物陰に隠れるかのようにビクビクと過ごすかも知れない。もしかしたら、「自首」などというこの世で最も愚かで、アホで、マヌケな行動に出るかもしれない。

 レクターの神経と精神は普通以上だった。

 何故ならレクターは、その後、何に怯えることなく、普通に生活したからだ。

 普通に。

 一生牢に入っていなければならない犯罪者であるのに、市場や屋台へ買い物に行き、音楽を聴いたり、オペラを観に行ったりした。

 勘違いしてはいけない。レクターは表に出てきてはいけない人間であり、指名手配だってされていた。なのに、普通に、楽しく、過ごしていた。

 だが、殺人は止めたのだろう?……って?

 止める訳がない。相変わらず人は殺した。

 こう書くと、レクターを残虐で、冷血なだけの殺人者にしか思わないかもしれないが(それはそれで正しく、間違ってはおりません)、レクターは何も、誰彼構わず人を殺しているのではなかった。

 いや……信じられないだろうが、レクターは殺す相手は選んだし、善人と言える人間を殺したこともない。

どんな人間にも、殺意や殺人衝動といったものは宿る。ほとんどの人間はそれを抑えている。ギリギリの限界を越えたとき、善人でさえも人を殺す。

 レクターは、その限界が来るまでの沸点のようなものが極端に低かったのだ。自分が許せない人間は、次の瞬間殺したりする。自分の好きなオペラ女優の悪口を言う奴がいれば殺したし、自分に酷い演奏を聞かせるヴァイオリン奏者がオーケストラにいたら、コンサートが終了した後に殺した。

 恨みや思惑があって殺人をしているのではない。だから、レクターに罪悪感などのようなものは一切宿らない。

 だから全力で人を殺せた。

 だから強かった。

 そんなレクターが「ジャンク・ジャンク」に来るまでに、それ程の時間はかからなかった。

 これまではまだかろうじて「表」の世界の人間だったレクターも、めでたく「裏」の世界の住人となった訳だ。

 まあ、依頼を元に殺人をする「ジャンク・ジャンク」とレクターは、微妙に相性が悪いのだが、マーダーサーカスがレクターを気に入ったことと、レクター自身もマーダーサーカスを気に入ったたため、そこは問題なくやって来れた。

 つまり、レクターは「ジャンク・ジャンク」の殺人者ではあるが、基本的にレクターに殺人を依頼することはできないのだ。レクター自身がムカつく相手でないと殺してくれないのだから。

 それでも、レクターの居場所と存在は確立していったし、他の殺人者もレクターに文句を言うことはなかった。

 レクターは「ジャンク・ジャンク」で一番年上だったし(ゴミのような私達でも、年上の方を敬うことはできるのです)、仲間であろうとレクターを怒らせれば、それは即「死」を意味していた。

 レクターにとって「ジャンク・ジャンク」は、共通の趣味を持つ人間が集まる倶楽部……。そんな場所だった。

 年の離れた友達がたくさんいる。そんな、居心地の良い場所。


 独房なんかより、断然――……。

 次回!予告!!


 今、ホラーのイベントやってるよね?いいよね!なんか、そういうの。

 オレ、ホラー好きなんだ!

 え?ホラー小説?

 書いたことないよww

 書くより見る!体験するより聞いたほうがいいよ!!


 次回、期待して待っててください!

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