表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/29

第4話 キラキラ


 その後、幸い死神は俺の頭から手を離し立ち上がった。


 俺は薄目で死神の動向に注意しつつ、ゆっくりと慎重に少しだけ頭を動かし、辺りの状況を確認する。


 やはり死神の他には誰もいない。

 そうしてる間に二人の会話はエキサイトしてきていた。


『……まさかとは思うけど、抱き締められたから意識しちゃってるとか〜?』

「は!? ハアーー!?」


 え?


『あちゃ〜、箱入り娘には刺激が強かったわネ!』

「ち、違うからーっ!!!」


 は、()()()()()()だとぉーっ!?

 と、とんでもないコトしちゃったのかぁー!?


『それにあんた、また酔ってるわよネ!?』

「は、はぁ? な、ナ、ナニ言ってるのォ……?」


 よ、酔ってる?


『アタシが気づかないとでも? 禁酒するって約束したわよネ!? だいたい今は公務中よォっ!』

「……エヘッ、バレたかーーーぁぁっ!」

『ったく! アタシを甘く見ないでよネ!』


「アノネ、こんなシゴトぉ〜飲まなきゃヤってられネェっつーの! アハ、アハ、アハハハ〜……」

『開き直るんじゃないわよ!』


 おいおい、この死神、酒飲んで酔っぱらって仕事してるってーのかよ。

 ってか、いつの間にかフラついてきてるし……。


 死神は、右へ左へと大きくよろめいては大鎌を杖代わりに使い、なんとか踏ん張ってる状態だった。


『ハァ〜あ……。だから、せめて別のお酒にしなっていつも言ってるでしょ。アレは超キツくって後から更に酔いが増してくるんだかラ、もーぉ……』


 死神が大鎌の()を畳の上に突き立てた!


 そして刃を睨みつけながら……言う。

「だって〜! アレじゃなきゃ、キモ、キモ……キモチよく、ヨえないんだからぁ〜、……シカタなぃ、でしょー! ケタケタケタ〜……」


『それで現場で倒れてたら意味ないんだってバ!』


 ——え……? 

 死神と大鎌が、会話してるのか!?


「ダぃジョブ! ……アヘ……、アヘのんだほうがぁ〜、シンケイがぁ〜、……ッと、ト、トトギスマ、セル…サラ…レルルル〜〜……、ヒャッホー!」

『ゴキゲンかーっ! ……って、あ〜あ。もう呂律(ろれつ)も回らなくなってきてるしィ〜!』


 あ! 

 アニメとかでたまに見る、武器に命が宿ってる的なヤツか……。


 興味を引かれ大鎌をジッと見つめる……

 が、それがマズかったようだ。


「ナニみとんじゃボケーーっ!!」


 死神に気付かれ、顔面にパンチが飛んできた!

「————うぐぅっ——!」


 ……ノックアウトされ、また意識が飛びそうになる……

 が、しかし今回は朦朧としながらも意識をかろうじて保てた。


『もー、マジで二度死にしちゃうでしょ!! ニーナのバカん! アホん ボケナスんっ!』


 ——オネェ声で罵声が飛び、そして——


「————ギャッ——!」

 金属と、何か固いモノがぶつかった鈍い音、そして死神の悲鳴!


 ……大鎌が死神の顔面に一撃喰らわしたっぽい!

 何かが落ちてきて横にころがる。

 ゴロッ……


 いつの間にか死神の動きが止まっていた。


 落ちてきたモノを良く見てみる。


 ——ゲっ!?

 し、死神の髑髏しゃれこうべ!!!


 床に転がっていたのは()()()()()だった。


 はぁ……!?

 一瞬、何がどうなったのか訳が分からなくなる。

 ……し、死神の顔面だけがもげたのか? 


 しかし、よく見るとそれはお面のようなモノだった。

 ってことは……

 どうやら大鎌の一撃でドクロのお面が取れたっぽいが……。

 元々死神の顔があった部分には別な顔が覗いていた。


「!?」

 び、美女……?

 そこには紅潮した女の顔があった。


 どこか冷たい感じのする美人さんだったが、ただし、瞳は赤くギラギラ光っている。

 あ、赤い目って……リアルだと怖すぎやろ……。


 ついその顔を覗き込んでしまう。


 やっぱ女だったんだ……。

 ってコトは死神じゃなくて死神女(シニガミオンナ)? ……それとも死女神(シニメガミ)……?

 ——いやいや今そういう事はどうでも良いんだって……。


 そんな事を考えながら暫くの間、死神女の顔を見つめてしまっていた。

 はしたなく口もポカーンと開いてたかもしれない。

 死神女とは一瞬だけ目が合ったような気もしたが、それは勘違いだろう。

 彼女の瞳は既に焦点が定まっておらず痙攣(けいれん)しているようでもあったからだ。


 しかし次の瞬間、顔面パンチより強烈なものを喰らった!


「うぷっ——」

「え?」


 キラキラキラキラ………………


 七色に光るソレが顔面に降り注いだのである……。


 キラキラ…………

 キラ……


 そのキラキラ光る物体は霊魂にとっても強烈すぎたのか……。

 それとも、原料のキツイ酒がこの身体に作用したのか……。


「く、くそっ、……し、死神……オン……ナ…………め……」



 ……そこで意識が途絶えた……



 …………



 ……ん?


 こ、これ……また例の走馬灯だよな?


 ……中学生……の頃か……。


 ……中学に入ったばかりの頃は新たなグループに目をつけられ、少し暴力的なイジメを受けたりもした。

 ただ、暴力的なイジメの場合、こっちも『このままだとマジでヤラレル!』みたいな防衛反応が発動するポイントがあって……。

 いや、つまり追い詰められた時に、こちらもキレて反抗したりしたのだ……。

 だからなのか中学でのイジメは深刻な事態にはならず、途中からはそういう事は無くなった。

 

 ってか、ヤバイ奴って思われただけだろ、それもう……。


 ……


 そして、高校時代。


 この時は想像もしなかったが、後々俺の人生に大きな影響を及ぼす出来事が起こる。


 パソコンとの出会いだ。


 友達に詳しいヤツがいて、彼に影響されて初めてパソコンを買った。

 富◯通のF◯-7っていうキーボードが分厚くて、それがパソコン本体になっているユニークな機種だ。

 入門用としては安い方だったのだが高校生にとっては高い買い物で、新聞配達のバイトで貯めてた財産がほぼ無くなった。

 今のPCと比べたら、超、ちょ〜低スペックなんだけどね……。


 で、Wizard◯y(ウィザード◯ィ)ってRPGゲームを一本だけ買って大事に遊んだ。

 さらにゲーム雑誌を買ってきて、ゲームや画像、音楽などのベーシックプログラムを夢中で打ち込んだりしてた。


 ただ、結局その時はパソコンやプログラムを極めるまでには至らず……。 

 もしその当時、今のようなWEB(ウェブ)A.I.(エーアイ)があったら、もうちょっと何とかなったとは思うんだけど……。

 

 そんなこんなで高校をなんとかやり過ごし……



 …………



 ——と、そこで眠りから覚めるようにゆっくりと意識を取り戻した……。


『……だから! 諦めなさいってばァ、もー!』


「チッ! 気付かれたか……」


 もう聞き慣れたふたりの声……。


 なんかこの二人、いつも同じような会話してねーか?



 ……



 我々は今、薄暗い森の中をトボトボと歩いている。


 俺の首には例の鎖が巻きついていて、前を行く死神がその鎖の端を握っていた。

 死神の右肩には布製の袋が(かつ)がれている。


 ……あれって狐っ子が入れられた袋だよな。

 そうか〜、やはり連れて来られちまったか……。

 巻き込んじまって申し訳ないなぁ……。


 ——ってあの子、大丈夫なのか?


「……あ〜、お、おい、死神女(しにがみオンナ)!」


「なんだ……。というか、その死神()()()と呼ぶのはよせ! ワレは死神だ」

 死神は歩みを止めず肩越しに後ろを見て言った。


 こちらも会話を続ける。

「いや、でも中身は()()()だったし……」


 死神が苛立った口調で反応する。

「クッ……。それは忘れろ! 他から見ればただの死神だ。死神と呼べ!」


「へいへい分かったよ死神さん。で、その袋の中の狐っ子は無事なんだろうな?」


「これか? ……今は薬で眠らせているだけだ」

 そう言いながら死神が肩に担いだ布袋をポンポンと軽く叩く。


 少しホッとした。

「そ、そうか……。良かった……」


「フン……」


 ……


 気を失っていた間もずっと歩き続けていたようだ。

 というか、催眠術か何かで歩かされていたのかな……?


 ん?

 いやいや、こちらの意思に関係なく足が勝手に動いてるじゃん!

 ……と、止まる事も出来ない……。


 そう言えば死神は『閻魔庁』へ連れていくと言ってたな。


 ……って事は閻魔様の所って事か……。


 幼い頃から昔話なんかを通して閻魔様の事は何となく知ってるつもりだ。

 人が死んだら閻魔様の御前に連れて行かれ、罪の告白をさせられ、それで天国行きか地獄行きかが決まるって話とか……。

 その時ウソをついたら舌を引っこ抜くっていうおっかない魔王様だったよな?


 あれ? 

 ……魔王なのか? それとも……神様なのか? 

 どっちだったっけ……?


 どっちにしろ閻魔様が普段どこに御座おわすのかとか、今まで気にした事無かったな……。


 いや、そもそもこれら全て、宗教の教えとか人が作った資料や創作物などから得てきたあやふやな情報に過ぎない……。


 いつの間にか辺りは薄らと霧に包まれている。

 木々の隙間から見える空は暗い紫色で雲はドス黒く不気味な雰囲気を(かも)し出していた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ