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まだ世界に疑問があるそうです。

 何だか疲れが溜まっているのか、出社して席に座っても眠いしどうも身体が重い。

 これは決して私の身体が幼いからではない。

 いや、体力は問題無く19才並みにあるはず、かな?


 広いフロアの遙か彼方にはミントちゃんたちが飛び回っているのが見える。

 あれは3班の職員にお菓子をもらっているに違いない。

 いいなあ、いくら食べても太らないらしいし、何て思っていると早速コールされる。



「ご利用ありがとうございます。異世界転生カスタマーセンター、お客様サービス係でございます。」

「私、だいぶ以前にお電話した向田拓と申します。ナターシャ様はご在席でしょうか。」

「ムコウダ・ヒラク様ですね。覚えております。ナターシャです。」


 実はこれでも天使、記憶力は神に近い。

 よく忘れたフリしてすっとぼける神がいるが、あれは嘘であることを今ここでバラしておこう。


「ああ、B-AW2006、『神の考えたワクワクてんこ盛りの世界』の方ですね。」

「覚えていてくれてありがとうございます。」

「その後、世界征服に向けて前進しましたか?」

「いえ、まだ冒険者をやってます。まずは装備を調え、資金と同志を集めないといけませんから。」

「大変な道のりですが頑張って下さい。それでは、ご用件をお伺いします。」


「まず、前回のお電話で教えていただいたとおり、種族が無数に存在することが分かりましたが、何でこんなに設定されたのですか?」

「神のみぞ知る、と言ったところです。他種族が共存する世界を作りたかったのではないかと思います。」


「でも、対立と混乱に満ちています。」

「こういったファンタジー世界に転生した日本人がよく感じる不満の一つだと聞き及んでいます。まあ、さすがに宇宙人や幽霊が普通に歩いていて混乱するのは人類共通でしょうけど。」

「それぞれがテリトリーを決めて居住すれば、少しはマシになると思うのですが。」

「一度混ざったものを分離するのは困難ですが、ムコウダ様はそのために人の国を建国するのではありませんか?」

「そうですね。頑張ります。」


「ところで、クーデターでも起こすのですか?」

「全くどの勢力とも戦わないという訳ではありませんが、辺境などのあまり国の統治が協力で無いところに新しい国を作る方がやりやすいなとは考えています。」

「そうですか。その場合でも他国や他種族と全く戦わずに済むとは考えられませんが、その方が困難は少ないかも知れませんね。」


「それと、魔法の属性は先日教えていただいたのですが、実際は属性ごとにはっきり系統化されていないようなのです。他の冒険者に聞いても曖昧でした。」

「その世界においては、トルネードに炎や石などを混ぜて攻撃したり、植物の生長促進のために光属性と聖属性をミックスした魔法を使うなど、とても柔軟に魔法が発達しておりますので、皆さんあまり深く考えずに新たな魔法を開発し、使っているようです。」

「なるほど、しかしそれでは教えるのが大変ですね。」


「はい。ですから一個人、あるいは特定の地域でのみ使われている特殊な魔法だってあるはずです。魔法の研究者にとってはとても魅力的なフィールドですね。」

「むしろ混乱してるようですけど・・・」

「ですからスクラップとビルド、硬軟両方でムコウダ様独自の魔法を産み出すことも大事なことかと存じます。」


「分かりました。それと、魔族と魔獣の違いは何でしょう。」

「魔素をベースに進化した人と獣の違いです。」

「ドラキュラは魔族なのですか?」


「良い所に気が付きましたね。ヴァンパイアやドラキュラといった物は魔素の影響下にありますので魔族とも言えますが、半魔族というのが最もしっくりくるはずです。鬼や妖怪も同じようなものですね。ただし、サキュバスやインキュバスは明確に悪魔です。人間のいろいろな物を吸ってしまうのでよく混同されますが。」


「なるほど、半魔族もいるのですね。」

「元々そういった分類がある訳では無いのです。ムコウダ様の世界では人間だって魔素を使用して魔術を使っている訳ですし、魔族だって酸素を使って呼吸します。生物のはっきりとした線引きはどこの世界でも難しいのです。」

「獣人や鬼人などはさらに分かりにくい存在です。ネコからどうすればケットシーに進化するのか全く理解できません。」

「まあ、あれは妖精ですから進化論とは無関係ですけどね。」

「鬼人もそうですか?」

「はい。そういう設定です。そもそも鬼だって進化論的にはどうやってもああはなりません。」

「確かに身も蓋もないですが、そのとおりです。」


「とにかくムコウダ様の世界は摂理よりもてんこ盛りを重視した世界です。設定をあまり深く悩んでも仕方無いです。それよりは設定の矛盾や弱点を衝いた方がいいと思いますよ。」

「なるほどそうですね。アドバイスありがとうございました。」

「また何かございましたらご連絡下さい。」

「ありがとうございました。」



「あら、元気無さそうだったので心配していましたが、調子が出てきたみたいですね。」

「ありがとうございます。先輩。」

「あらあら。もしかして、この仕事にやり甲斐を見つけてくれたのかしら。」

「いいえ、これから私がどんな成長をしてもそうはなりませんよ。」

「あら残念。優秀な後輩には残って欲しいんだけど。」

「いくら先輩のお誘いでも、それはお断りです。」

「フラれちゃった・・・」


 私もブラックから抜け出すという、大変な道のりの途中である。


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