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イエローゲート

 私たちはチェイニーの街で装備や食料類の調達を行い、3日後に出発した。

 向かうはアーレン王国の東にあるズマ王国である。


 3日かけて国境を越えてさらに2週間。

 ひたすら東に場所を走らせ、着いたところは同国最高峰のザドラ山。

 ここにイエローゲートの塔がある。所謂ダンジョンであろう。



「あれがそうなのでしょうか?」

「おそらくそうでしょうね。」

「あんなヒョロっちい塔、外から攻撃して倒しちゃえばいいのよ。」

 またしても勇者様が先走る。

 考え無しな所は、予想以上に予想通りだ。


「あの~、あれって壊せるものなんでしょうか?」

「人間では絶対無理ですね。私たち運営側なら可能ではありますが、中の敵が一度に溢れ出て来るのがお望みでしょうか?」

「いいえ、絶対イヤです。」

「では、地道に最上階を目指しましょう。」

 塔の外壁に攻撃を仕掛けている勇者を入り口まで吹き飛ばし、侵攻を開始する。

 ドアを突き破ると中は和風の古式ゆかしい屋敷と庭園が広がる。


「何奴っ!」

「アタシは勇者ミラノ・アスプリアーノ。お前たちを倒しに来た。」

「ここを代官ウラデ・ワルサノスケの屋敷と知っての狼藉か。」

「お前たちの悪事、すでにお見通しだ。」

「お代官様、ここは南蛮から取り寄せたこの短筒を試し撃ちしとうございます。」

「おおエチゴヤ、お主もワルよのう。」

「まだ明日が来ると勘違いしているようだが、ここが年貢の納め時と分かった時には手遅れなのだぞ。」

「フンッ、たかが勇者ごとき、返り討ちにしてくれるわっ、者共出会えっ、出会えーっ!」

 セットの袖から沢山の侍が出てくる。


「構わん、斬れ、斬れ~っ!」

「ポンコツ勇者、やっておしまいなさいっ!」

 さすがはミゾグチ様。BGMの始まるタイミングが神懸かっている。

 エチゴヤは短銃を構えるが、あんなもの、そうそう当たる物では無い。

 しかも、勇者は目まぐるしく動いている。そこに、大賢者の攻撃魔法が連続して襲いかかる。


 威力、手数ともに古代兵器で対抗できるようなものではなく、すぐにエチゴヤは沈黙する。

 その間にも勇者は次々と侍を斬って捨て、私たちが手を貸さなくても戦況は次第に有利になっていく。


 そしてエチゴヤにトドメを刺したらウラデだけが残った。


「ハッハッハ。貴様ではこの私の相手にはならなかったようだな。」

「おのれ~、ちょこざいな。」

「成敗っ!」

 勇者が聖剣を一閃。ウラデがゆっくりと崩れ落ち、勝負が決まった。


「魔王四天王が一人、悪代官、討ち取ったり。」

 いや、まだ入口すぐ後ろにあるんですけど・・・


「じゃあ、2階に進みますか。」

 この後、直参旗本コガネ・ダイスケや渡世一家の大親分ノゾキ・スケベエといったザコ敵を駆逐し、5階に上がった。

 そして勇者が襖を蹴破って中に侵入した。


「ハッハッハ。随分下で騒いでおるようじゃったが、悪人の方から出向いて来るとは、珍しいこともあるものよのう。」

 床の間に老人が座り、脇を7体のモンスターが固めている。


「アタシは勇者ミラノ。怪しいジジイを倒しに来た。」

「これはまた威勢のいいお嬢さんだ。いいでしょう、ズケさん、ガクさん、セブン、エイト、シルバー、モンキー、懲らしめてあげなさい。」

 またここでBGMが鳴る。あっ、これ聞いたことあるヤツだ。


 まず3人の忍者らしきモンスターが襲いかかってくる。

 勇者パーティー全員でも勝てないだろうから、テンちゃんが加勢する。私は忍者じゃ無い2人を相手にする。もう一体はボスに寄り添っている。


 私は目の前に躍り出てきた一体に向かってアイスランスとフレイムウォールを同時発動させるとともに、後ろにいたもう一体にロックファングとライトニングをお見舞いしてやった。

 この発動スピードなら、敵の挟み撃ちに遭っても関係無い。


 2体はあっさり黒焦げになって倒れる。

 向こうでもテンちゃんが一番ガタイのいいサルの忍者を物理で倒したようだ。

 あの程度なら魔法すら必要ないらしい。


 私がイエローゲートの前に立つと、ヤツに付き添っていた小太りのモンスターが鈍重そうな身体を起こして襲いかかってきた。

 しかし、何かにつまづいたか、足をもつらせて倒れてしまい、私は難なくトドメを刺す。

 そしてほぼ同時に、勇者パーティーが赤い風車を咥えた忍者と夜にとても目立つであろうピカピカした服を着た忍者を倒した。


「さあ、もうアンタだけよ。」

「お、おのれ、この儂がどなたか心得ておるのか?」

「アンタみたいなジジイ、アタシが知るわけないでしょ。」

「儂は前の副将軍、イエローゲート・ミトであるぞっ!頭が高~い、控えおろう!」

「何言ってんの?証拠はあるの。」

「この、あれっ?ない・・・」


「私が知っているパターンなら、そこに倒れているモンスターのどちらかが持っていたのでは?」

「あっ・・・」

「証拠がないならアンタはただのザコね。」

 相変わらずの勇者は聖剣を振りかざし、斬りかかっていく。


「いや、ちょっと待て待て、老人に手荒な」

「うるさいっ!」

 まさに一刀両断。

 声すら上げる間もなく四天王イエローゲートは絶命する。


「コイツ、一際弱かったわ。」

「現役じゃないですからね。」

「しかし、あのサルの忍者とそこの2人は相当強力なモンスターだったようだね。」

「ええ、実質はこの3体が主力ね。かなり年老いたのが多いけど。」

「往時は相当強かったと思うぞ。」

「そうね。四天王を名乗って恥ずかしくない実力はあったと思うわ。」

「そう? これなら雑用係でも倒せたんじゃない?」


「そんなことはどうでもいいですから、次に行きましょう。」

 勇者と会話するのは戦うより消耗するので、早めに切り上げて撤収する。


「次はバスク帝国との国境付近に陣取る召喚師ギョングを倒すわよ。」

 


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