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凸凹パーティーの凸凹な旅

「へえ、未来ちゃん、前世ではニートだったんだ。」

「ニートじゃ無いよ、自由人だよ。自慢じゃ無いけど前世じゃ今より美人だったから、人生イージーモードだったんだよね。」


 私とテンちゃんが合流したパーティーは、一路東を目指すことにした。

 ここに四天王の一人、ゲラムという怪物がいるのだ。


 もちろん、このぐうたらパーティーに四天王を倒す実力など無いが、早く帰りたいし、彼らの成長を待っていられるほど、この世界に余裕は無い。


「何かやりたいこと無かったの?」

「一応、美容師の専門学校には行ったけど、そこでいい男にたくさん捕まっちゃってさあ、結局、彼らと遊んでたらいつの間にか28よ。そんでカレシとバイクで事故ってここに来たって訳。」

 いくらこんな世界を希望する者がいないって言ったって、こんなの勇者にしなくても・・・


「それで、パーティーは5人なんだね。」

「そうそう、魔法が使える大賢者A、前の勇者パーティーにもいたから結構年増の聖女B、道端で知り合った盾持ちのC、アタシの剣を盗んだ雑用係Dよ。」

「オーリー様、レイチェル様、ダン様、ミゾグッチ-ニです。」

「知ってたわよ。」

「大変ですね。」

「ずっとこんな感じです。」


「それで、半年前に魔王城に向かったんですよね。よく生きて帰れましたね。」

「はい。レベルが足りずに門をくぐることすらできませんでしたから。」

「滅んでしまえ・・・」


「そんな、助けて下さいよ。私なんかただ巻き込まれただけなんですから。」

「それを言ったら私もそうよ。」


「でも、お強いんでしょ?」

「このパーティーのメンバーよりはね。でも、彼らを守りながら四天王や魔王と戦うのはさすがに荷が重いわよ。」

「そんなに絶望的なのですか?」

「あんなのが本物の魔王と戦えると思う?」

「いえ、私は最初からナターシャ様とアレックス様しか頼りにしていませんよ。」

「ポンコツ勇者とそのお世話係だもんね。」


「さあ、そろそろ今日の宿よ。」

「まだ昼過ぎですが。」

「次の街なんて、夜までに着くわけないじゃん。」

「野宿でもいいじゃないですか。」

「また聖剣忘れてもいいわけ?」

 ホント、何とかして欲しい。

 宿にチェックインした後、勇者をテンちゃんに押しつけて、私たち被害者の会は別の酒場で夕食を取る。


「皆さん、お疲れ様でした。」

「天使様にお会いでき、また、こうして晩餐にご同席賜り、本当にありがたいことと、神に感謝しています。」


 この人は聖女レイチェルさん。若い頃はさぞかし美人だったんだろうなって感じの温厚な女性。

 まあ、今は優しい若奥様といった雰囲気のちょっとふっくら美人だ。


「まあ、あんなのに感謝しなくてもいいですよ。それにしても長年に亘って大変でしたね。」

「いいえ、これが私の勤めですから。」

「前の勇者に実力があれば、こんなことにはなってなかったでしょうに。」

「はい。婚約まで結んでいましたので、それは残念ですが、彼は今でも修行を続けて魔王討伐を目指しているらしいですし、応援しているのですよ。」

「聖女様のお幸せを願っておりますわ。」

「天使様に祝福をいただいてしまいました。」

 私なんかの言葉で、ちょっと申し訳ない。


「オーリー様は魔術が得意だそうで。」

「いやいや、ナターシャ様の魔術を見た後では、とても得意などと胸を張ることはできません。まだまだです。」

「ご謙遜を。期待していますからね。」

「何と有り難い。励みになります。」

 しかし、勇者以外はマトモなんだなあ・・・


「ダン様はどうしてこのパーティーに?」

「腹を空かして街道でうずくまってるときに勇者からパンを分けてもらい。」

「それで加わったと。」

「いえ、アタシのパン食ったんだから働いて恩を返せと言われ・・・」

 桃太郎以下だ・・・


「ミゾグチ様は拾った剣を届けたら、半分以上言い掛かりで加入させられたんですよね。」

「まあ、ダン様と五十歩百歩です。」

「まあ、皆さんがいい人だから何とか持ちこたえているんですよ。このパーティー。」

「でも、聖剣を扱えるのは世界でただ一人、ミラノ様だけですから。」


「何であんなのが使えちゃうかなあ。」

「神の気まぐれ、かしら。」

「そうでしょうね。神はいつも気まぐれの考え無しですからね。」

「ウフフッ、さすがは天使様、お詳しいのですね。」

「いつもとばっちりばかりですから。」

 良く考えたら、ここのメンバーも私と似たもの同士なのか。


「それで天使様、これから順に四天王を倒して行くのですよね。」

「そうですね。四天王を倒してレベルを上げつつ、世界滅亡までの時間を稼ぐって感じですね。」

「それは頑張らないといけませんね。」

「ミゾグチ様もですよ。」

「私は何もお役に立てることはありませんから。」

「でも、さすがに戦闘経験はあるのですよね。」

「まさかまさか、とんでもない。私は自分にスリープをかけて死んだふりをしてるだけですよ。」

「戦闘BGMで盛り上げてくれてますよ。」

「ザコ相手なら挑発もお涙頂戴も効果的じゃないか。」


 やっぱこのパーティー、ポンコツだわ。

 でも、勇者以外はほっとけないんだよね。


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