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メンテナンスって地味よね

 現地で飛行機から降ろされた私たちは、取りあえずボトグ山頂に行き、アンテナ交換から始めることにした。


 ちなみに、空港無いのにどうやって着陸したかって?着陸なんてしないわ。

 だって私たち飛べるもの。空中でポイされるのよ。


「どうせなら山まで運んでくれてもいいと思わない?」

「決められた所までしか運んでくれないよ。」

「お堅い仕事だもんね。」

「そうそう。」


「でも、遠いんじゃ無い?」

「真っ直ぐ飛んでも二日はかかるね。調べたけどこの星、地球の丁度倍の大きさだって。」

「ああ、かつて無い壮大なスケールだもんね。星まで壮大にしなくてもいいのに。」

「そんな所に派遣しなくていいのにな。」


「ところで、そんな大きな星、重力とか大丈夫なの?」

「だから機器が壊れやすいのかもな。」

「結構勇者もぶっ壊れてるわよ。」

「そこはお前一人で対応してくれ。」

「ちょっとは手伝ってよ~。」

「いい歳こいたレディが情けない声出してんじゃねえよ。」

「だって、0才だし・・・」

「嘘こけ。」


 こうして約二日半、休み無く飛び続けることになった。ブラックだ!

 しかし、何とかこの世界の最高峰に到達する。


「と、とにかく寒いし息苦しいわ。早くやっちゃって。」

「分かったよ。風が強いからアンテナを押えててくれ。」

「いいわよ。でもホント風は強いし、天使でなきゃ死んでるわよ。」

「天使だから平気だけどな。」


「ところでここ、何mあるの。」

「標高14,378mだってよ。そんなとこまで桁外れだな。」

「何もかも、地球人を驚かせようっていう演出なんだよね、これ。」

「壮大なことに拘ったらしいからな。しっかり持ってろよ、もうすぐ外れるから。」


 アンテナは0歳児には重いけど、こういうワチャワチャしたのって、小学校時代を思い出す。

 テンちゃんは外したアンテナを空間転送で天界に送り、代わりに新品のアンテナを取り出す。


「もう一度持っててくれ。ネジで固定するから。」

「何か、魔法とか使って一瞬で取り替える方法無いの?」

「おいおい、俺たち神じゃねえんだから、そこまでの器用さも魔力もねえよ。」

「でも、アンテナ送ったじゃない。」

「その位なら装置を使えばできるけどさ。取付は俺たちがやるしかねえんだよ。神は絶対こんな労働しないし・・・終わったぞ。」

「早く降りよ。寒くて堪んないよ。テンちゃん先に言ってトイレ探しといて。」

「草むらじゃダメなのかよ。」

「仮にも天使が地上でそんなはしたないことできないわよ。」

「分かったよ。」

 まあ、トイレは無事済ませた。


 そして、電波受信機本体のチェックを行うため、私たちはアーレン王国のハナ神殿に向かった。

 これもやたら遠かった。


「ホント、景色だけは良かったわね。」

「そうだな。雄大過ぎるな。」

「さあ、ハナ神殿よ。これからどうするの?」

「まずは神官長に会って挨拶しなきゃな。」

「私たち、堂々と正面から入ってるんだけど、大丈夫なの?」

「大丈夫さ。まさか本物とは思うまい。」

「こんな羽根生やしてるのに?」

「一般人ってそんなものだって先輩が言ってた。名乗ったってコスプレだろって信じてもらえないんだって?」

「0歳児がペラペラ喋ったり飛んだりするのに?」

「魔法と区別が付いてないらしいぞ。」

「もうちょっと神とか天使とか崇拝した方がいいんじゃないかしら。」

「さっきまで散々悪口言ってたのにか?」

「私たちは不利益被ってるじゃない・・・」


「神官長、天界から定期メンテナンスに来ましたアレックス・テンペラードと言います。」

「おお、これはこれはご苦労様です。百年点検ですかな。」

「ええ、あまり調子がよろしくないようですので。」

「そうですか。それにしても、生まれて初めて天使様にお会い致しますが、作業服なのですね。」

「はい。私はエンジニアですので。」

「それでは早速ですが、祭壇下までご案内します。」


 こうして大聖堂の祭壇に一旦上がり、大きな像の足下から機械が設置されている小部屋に入る。

 場所柄、祭壇の下には多くの一般客が礼拝に訪れており、結構賑やかな中での作業となる。


「さて、動作状況のチェックからだな。」

 テンちゃんは受信機の調子と、現在のバージョンをチェックしている。

 最新バージョンに更新されていない場合は、受信機の不具合か過去のパッチの更新漏れでバグが発生したかを調べるのだそう。

 これを何かすっごく器用にこなしていく。

 そういやテンちゃん、やれば出来る子だったなあ・・・


「あ~こりゃ重症かもね。」

「直らないの?」

「取り替えた方が断然早い。」

「じゃあ、そうしましょうよ。」

「機器の在庫を調べないといけないから、最低1週間はここに滞在だ。」

「私は別にいいわよ。」

「いや、お前は別にいなくていいんだから、顧客のところに行ってやれよ。」

「いやよ。」

「相変わらず我が儘だよな。」

 この日はこれで作業を終了し、レストランに入る。



「お前、見た目0才だから酒は無しな。」

「あんただってまだ未成年でしょ。ダメよ、抜け駆けなんて。」

「分かったよ。合わせてやるよ。でも、来月二十歳だからな。」

「ああ、そうだったわね。それで?仕事はどうなの?」

「まあまあだよ。先輩もいい人達に恵まれた。」

「良かったわね。でも、メンテナンスって地味よね。」

「メンテナンスが派手である必要なんて、どこにもないぜ。」

「それもそうね。」


「お前こそ、ちゃんと仕事やってるのか?」

「やり過ぎだと感じてるから、今ここでのんびりしてるのよ。」

「むしろ、お前があくせくしてるとこ、一度見てみたいよな。」

「それ、幼児虐待にしか見えないから・・・」


 こうして久しぶりに幼馴染みとの時間を楽しむ。

 と思ったら、機械の到着に10日要した。 


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