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土魔法ですが、何か?

 早くも3月。もう少しで私もお客様係歴一年になる。

 後輩も入って来るんだろうし、もうちょっと楽になるかなあ・・・


「ご利用ありがとうございます。異世界転生カスタマーセンター、お客様サービス係でございます。」

「儂はこの世界に来て四十ウン年になる、ロアンダール・オーベルジュという者じゃ。」

 これは私史上最長不倒だ。きっとお爺ちゃんに違いない。


「ロアンダール様は大ベテランなのですね。」

「もうこの世界に来てからの正確な年数は分からんなってしもうたわい。」

「そうですが。凄いことだと思いますよ。それでは、ご用件をお伺いします。」

「そうじゃの。もし無理なら儂の愚痴でも聞いておくれ。」

「承知いたしました。」


「儂はこれまでずっと魔術を極め、今では大賢者と呼ばれるまでになった。若い頃に魔王すら倒したことがあるんじゃぞ。」

「世界の歴史に名を残しましたね。」

「そうなのじゃ。しかしそんな儂にも大きな不満があっての。それは儂の魔術属性が土なのじゃ。」


「四大属性ですが、何かご不満な点などございましたか?」

「確かに四大ではあるが、お主はこれを三大にするとすればどれを省く?」

「・・・つか、ぜですかね。」

「良いのじゃ。百人に聞けば百人が土と答えるのは分かっておる。それに、土の主役などまずおるまい。全くとは言わぬが。」

「確かに火や水、氷、雷、闇や光、聖属性が多く、たまに死霊術や無属性がいますね。」

「四大でない主人公も多かろう?」

「確かにそうですね。」

「でも土が四大なのじゃ。いっその事、四大から外した上で超レア属性にしてくれれば助かるのじゃがのう。」


「四大属性とは、あくまで魔術が自然に根ざしたものとして捉えられている世界において採用されたものです。西洋では古来より四原質説が用いられ、土、水、空気、火が始原の物質とされてきました。東洋なら陰陽五行説でしょうが、それでも光、闇、火、水、木、金、土です。」

「じゃが、土曜日は人気だが、土属性は不遇で不人気じゃ。」

「そうですね、地面が割れたり地震が起きたり、地面から岩の槍が突きだしてきたりとなかなかビジュアル演出的にも優れているのですが。」

「じゃが悲しいかな、人気が無い。」

「何故でしょうね。」

「せめて、儂の所有属性を他にチェンジしてくれれば良いのじゃがのう。」


「ロアンダール様の世界は単一属性保有の世界なのですね。」

「そうじゃ。生まれ持った属性が生涯変わらぬ。」

「残念ですが変更もできません。しかし、その不遇な魔術を駆使して成功を収めたではありませんか。」

「しかし、儂の属性を聞いた者が皆、一瞬固まって、その後微妙な顔をするのじゃぞ。つ?土?って感じでの。」

「それは先入観に囚われすぎた相手が悪いと思います。」

「魔王だって一瞬信じられんような顔をして鼻で笑いおったのじゃぞ。悔しかったからいつも以上に容赦無く消し去ってやったわ。」


「そこがロアンダール様の凄い所ではありませんか。それに、土魔法の素晴らしさを世に問うことができるのは大賢者たるロアンダール様だけです。」

「土魔法を褒めてもらったのは魔王討伐後以来じゃ。」

「その素晴らしさをもっと広めるとともに、もっと凄いのを開発して人々を驚かせましょうよ。」

「この年寄りにできるかのう。」


「大賢者様なら大丈夫です。元々土属性魔法は範囲攻撃に適していますし、魔法でありながら物理的な破壊力が大きいですから。きっと単一属性の世界であっても砂嵐や隕石落下などはできると思います。」

「なるほど。目つぶしや落とし穴だけではないのう。」

「そんなケチ臭いことを考えていてはいけません。土魔法の新たな可能性を探るのです。」


「分かった。腐らずに頑張ってみよう。しかしさすがは天界の者。なかなかの知恵者よのう。」

「お誉めいただき有り難うございます。まだ19ですけど。」

「ありゃま、儂の三分の一以下しか生きておらんのか。若いのに大したものよのう。」

「ありがとうございます。励みになります。」

「では、元気で頑張るのじゃぞ。さらばじゃ。」

 こうして、気の良いお爺ちゃんはご機嫌で去って行った。



「不遇な属性はあるって聞いていましたが、土がそれとは盲点でした。」

「土っていうだけで泥臭いというか、洗ったり飛ばしたり燃やし尽くすのとは違うイメージよね。」

「埋める・・・」

「でも、人間味があるのは土属性よね。」

「性能的には全くの互角なんですから、そう邪険にしなくてもいいんですけどね。」

「まあ、人気が無いというだけで、他と同じだけの時間と労力を書けて編み出された数々の力があるものね。」

「お爺ちゃんにはいつまでもお元気で頑張って欲しいと思っちゃいました。」


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