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あの国民的ヒーローなのですが

「ご利用ありがとうございます。異世界転生カスタマーセンター、お客様サービス係でございます。」

「私、もうすぐ転生して一年になる東京太郎こと、両角謙太といいます。」


「ヒガシ様ですね。少々お待ち下さい・・・A-FH8878、昭和的21世紀の世界ですね。」

「はい。私はそこで超人太郎というヒーローをやっています。」

「もしかして、変身して巨大化する労働時間週3分のヒーローですか?」

「失礼な!他の時間はちゃんと地球セキュリティ警備隊で働いてますよ。」


「ところで、つかぬことをお伺いしますが、警備隊員でタロウって、バレてません?」

「バレてません!全くの灯台下暗しです!」


「ところで、そのヒーローであればわざわざ異世界に行かなくてもなれると思いますが。」

「できれば地球でなりたかったのですが、あそこには怪獣も宇宙人もいませんし、なる前にトラックにはねられてしまったので、せっかくのチャンスを生かしてみました。」

「そうだったのですね。では、ご用件をお伺いします。」


「はい。私はこの一年、40体近い怪獣や宇宙人を倒し、疲労が溜まったので帰任を打診したのですが、M78星雲まで300万光年も離れていることを知ったんです。王様ですら30万歳なのに、帰る途中で寿命が来てしまいますよ。ですから、どうしようかと思い悩んでお電話したところです。」


「あのストーリーって、最後に変身アイテムを返却して、その後は地球人として生きたのではなかったですか?」

「あれは本人が生きた状態で任命されたから可能だったもので、私は死んでますから返却したら死んでしまいます。」


「それでは、ヒーローが生涯就職先ですね。」

「でも、さすがに戦いっぱなしの毎日は疲れました。」

「週一度ですよね。」

「確かに放は週一送ですけど、戦闘シーンは何日にも亘って撮影したものを編集しているんです。だから皆さんが考えているよりはずっと働いてます。」

「だから3分以上あったのですね。」

「はい。夏は熱中症の方が手強いですけどね。」


「熱中症に倒された怪獣はいそうですね。」

「ああ、私の時ではありませんが、ゼッ○ンが倒れたそうです。」

「自分は一億度の火球が出せるのに?」

「撮り直したそうですよ。」


「でも、戦闘中は結構余裕かましてますよね。」

「そう見えるなら私もまだまだですね。脚本によってはかなり戦闘の尺が長いですし、建物もある程度は破壊しないと視聴者が喜びませんし、苦戦の末勝つ演技って結構大変なんですよ。」

「たまに無駄に吹き飛んで、壊さなくてもいいビルを壊してますよね。」

「コンクリートって着ぐるみ着てても地味に痛いんですよ。」


「私、毎週東京タワーが建て替えられてて凄いなと思いました。」

「あれ、私の世界では本物と、押せばすぐ倒れるニセモノと、壊れた後の3本があるんですよ。ちなみに怪獣と揉み合ってタワーが倒壊するシーンは使い回しです。」

「さすがは異世界ですね。」

「それでも毎日どこかで復興作業が行われてますけどね。」


「たまには大阪とか名古屋でやればいいじゃないですか。」

「いえ、そこは同じプロダクションの正義の怪獣の縄張りですので・・・」

「ああ、亀・・・」

「変に彼らと絡んでしまったら倒さなくてはいけなくなりますから、適度な距離を取ってますよ。」

「だからいつも東京なのですね。でもそうですよね。彼らも怪獣ですもんね。」

「まあ、私は未だに正義の怪獣と悪の怪獣の見分けがつきませんけどね。」


「実際、人から見れば全て悪では?」

「私にとっては監督の指示が全てです。」

「頑張ってますね。」

「それで、どうすればいいのでしょう。」

「後任は要求するとして、彼の師匠として、困った時だけ助っ人に入る、というのはいかがでしょう。怪獣退治を目的に起業してもいいですし。」

「なるほど、社長になるということですね。」


「今まではボランティアでしたが、年間いくら、とか1回当たりいくらといった請負契約を国と結ぶのです。大して強くない警備隊に莫大な税金を投入するよりずっと効率的だと思いません?」

「確かに良い考えですね。仲間が失業してしまいますが。」

「それなら、警備隊の現有機材を国からリースしてもらって、怪獣の位置特定や出現地までの運送をしてもらえばいいと思います。」


「なるほど。それなら元手が無くても起業できますね。でも、活躍し過ぎて怪獣が絶滅したらどうしましょう。」

「亀でも倒せばいいのではないでしょうか。」

「まあ、最後の手段に取っておきます。」

「では、世界の平和をお祈りしております。」

「ありがとうございました。失礼します。」


「ヒーローも大変ね。」

「はい。もっと余裕のある美味しい仕事だと思っていました。」

「どんな仕事も楽なものはないですわ。」


 一日の終わり、他の方の人生をまた一つ垣間見た寂寥感を感じる。

 私の心の中には夕陽に向かってトランペット吹いてる人がいる。

 頑張れ超人太郎、負けるな超人太郎。


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