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悪役令嬢多過ぎ問題

 いつの世にも流行廃りはある。

 それに仕事や生活が影響を受けることも多々ある。


 今日はそんなお悩み・・・


「もしもし、カスタマーサービスでしょうか。」

「はい、こちらは異世界転生カスタマーセンター、お客様サービス係でございます。」

「私、3年前に転生させていただいたステファニー・オルコットこと、中本沙月と申します。」

「ナカモト様ですね。ご用件をお伺いいたします。」

「私は『私のスペシャルな恋路を邪魔する方は、速やかにご退室願いますっ!』という恋愛シミュレーションゲームの世界に転生させていただいた者なのですが、悪役令嬢が多すぎて私のストーリーが全く進まなくて困っているのです。」


「少々お待ち下さい。ナカモト様・・・・B-OQ3210-3D の世界ですね。」

「はい。ここでステファニー・オルコット子爵令嬢をさせていただいております。」

「この世界はヒロインと悪役令嬢双方に転生枠が設定されており、メインのジェニファー・フレミング公爵令嬢を始めとして、クラリス・アーネット様、ルイス・ファーマン様を始めとして現在、104名が悪役令嬢としてシナリオを消化中です。」

「はい。先週もさるご令嬢が婚約破棄イベントを起こし、先月起こした私のイベントは既に過去の物として話題になることもなく、忘れられた存在なんです。女子は性悪だらけ、男子はいつ婚約破棄を言い出すか分からない地雷だらけです。これじゃ出会いもありません。」


「婚約破棄なんて早く忘れられた方がいいとは思いますが、まあ、それは大変ですね。今、悪役令嬢モノは旬で希望者が殺到していますので、どうしてもこういう事態に陥ることになります。」

「周囲に婚約者のいない殿方が多いのは良いことなのでしょうが、石を投げれば事故物件に当たる状態なんです。とても両親が納得する相手と出会うなんて不可能です。」

「そうですね。まだストーリーがほとんど進行していない方もかなりおられますので、まだまだ婚約解消するカップルが出てくる見通しとなっております。」


「どうして同じ世界にこれだけの希望者を詰め込む必要があるのでしょうか。」

「現在、B-OQ3200から4200までは、地球上に存在する恋愛モノに対応するスロットとして確保しておりますが、ライターさんの都合などにより、世界の数が著しく不足している状態にあるのです。」

「でも、私の周りは性悪なご令嬢だらけで学園も非常に空気が悪いですし、攻略対象の方々は警戒して女性に近寄りすらしない状態なのです。」

「貴族社会ではそれも普通では?」

「いえ、この年齢で許嫁が決まっていない方が溢れ、さらに婚約破棄が日常茶飯事の状態が正常であってはなりませんわ。」

 確かにそうかも知れないが、それは私の責任ではない・・・


「しかし、現状ではどなたか良い殿方を捜し当てていただくほかございません。」

「まだこんなことが続くのでしょうか。」

「はい。まだストーリーが未完の方が37名、スタート年齢に達していない方が21名、他国で活動中の方が19名おります。」

「そんなに・・・」

「今とても人気のある物件でございますので。」

「私はどうしたら良いのでしょうか・・・」


「そうですね。比較的悪役の少ない別の国に移住していただくか、ヒロインに転向していただくのがよろしいかと思います。」

「私が、ヒロイン?」

「ええ、子爵令嬢なら身分的に良くある設定では無いでしょうか。」

「あの、光属性がないので聖女になれないのですが・・・」

「いえ、ヒロインが聖女である必要なんて無いじゃないですか。」

「あの、シナリオが・・・」

「大丈夫でしょう。何かあれば本物の聖女様に頑張ってもらうとして、あなたはヒロインらしい振る舞いで殿方をゲットしてしまうのです。」

「でも、ざまぁ展開が・・・」


「つかぬことを伺いますが、元のご婚約者の方のお名前は?」

「モーリス・ベック伯爵令息です。」

「う~ん、データにありませんのでモブですね。」

「せっかく転生したのに相手がモブだったなんて・・・」

「恐らくこの相手では大したざまぁ展開に持ち込めないでしょう。いわゆる微ざまぁかと。」

「私はこれから何を楽しみに生きていけばいいのでしょう。」

「とにかく、幸せになることが一番のリベンジですので、ヒロインに転向の上、安パイを狙うのが常道かと考えます。」

「安パイって・・・」


「騎士団長の息子さん辺り、脳筋キャラなのでチョロいのでは?」

「確かに、そのような雰囲気を醸し出していますね。」

「とにかく、これだけ悪役令嬢が溢れているのです。良い物件は早い者勝ちで埋まってしまいますから、躊躇している時間はございません。」

「しかし、彼には婚約者がいるはずです。」


「考えても見て下さい。彼は恋愛ゲームの攻略対象なのですから、落とせないはずがございません。ある時はヒロインのように可憐に振る舞い、またある時は悪役令嬢の経験を活かしてお相手を絡め取ってしまえばいいのです。」

「そ、そうですね。それしかありませんね。」

「どのみち、恋は一筋縄ではいかない試練多き道です。」

「はい。何だか元気が沸いて来ました。」

「では、ナカモト様のご健闘を心からお祈りしております。」

「ありがとうございました。私、頑張ります。」


 こうして、今最も熱い問題を解決した。

 でも私、ちゃんとキューピッドの役割果たしたよね?

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