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アドバイス寄越せ!

 1月は31日あるけど何故か早く過ぎる。


 下界の方であれば正月休みがあり、おとそ気分が抜けたら2月が迫っている感じだろうし、学生さんなら3学期は何にせよ短い。

 でも、社会天使一年目で休みが欲しい私にとっても何故か1月は足早に過ぎていく。この現象に名前を付けた人、誰かいないだろうか・・・


「ご利用ありがとうございます。異世界転生カスタマーセンター、お客様サービス係でございます。」

「我は引き算の神セヌラ。カスタマーセンターの天使よ、我に力を貸せ。」

「えっ、あ、あの、神、さま?」

「そうじゃ。我は大いなる全能の神の玄孫。算術の中でも引き算を統べる神。控えおろう。」

「ははっ!」

 いやいや、神様って・・・

 こんなトコに何の用なの・・・


「それでは偉大なる引き算を統べし大神セヌラ様、ご用件をお伺いいたします。」

「うむ。それでは申そう。我が管理するA-GQ5000の世界が今、大変な事になっておる。そちが知恵を出せ。」


「畏れ多くも発言をお許し下さい。全知全能の最高神に連なる高貴な大神様なれば、世界を救う程度の些事、造作も無いことと浅慮いたしますが、これ如何に。」

「それができぬからカスタマーセンターに電話しておるのだ。察せよ!愚か者が!」

「大変失礼をいたしました。この見習い天使、浅慮なる言葉で大神様のお耳を汚してしまったこと、万死に値します。」


「まあ良い。我はこの世界に不要と考える物を引き算をもって消去しつづけてきた。まずは愚かなる人間の戦争を消し去り、汚らわしいGとハエ、鬱陶しい蚊、怖いクモとムカデとヘビを絶滅させ、季候温暖化の原因となっておるCO2を消去し、我以外の神の信仰も消去した。そしたら世界が滅亡しそうになった。」

 アホだ。この神アホだ・・・


「それでは、セヌラ様の管理する世界には二酸化炭素もGも存在しないのですね。」

「そのとおり。理想の世界を作ったら滅亡寸前になった。何故だ。」

 それは全てあなたが悪いからです。


「全て元に戻せば良いのではないでしょうか。」

「我は引くことはできても足すことはできぬ。それくらい知っておろう。」

 いや知らんし・・・


「では、他の神の助力を」

「愚か者!そのような恥知らずな真似、神ができる訳なかろう!」

 天使に相談してる時点でもっとアウトだよ・・・


「しかし、世界から無くした物を蘇らせる力は神のみに与えられた力であり、カスタマーセンターにそのような権限はございません。」

「そんなことは知っておる。だから知恵を出せと言っておるのだ。」


「知恵など出さなくても分かりきったことじゃないですか。神の力無くして世界は救われません。二酸化炭素が無くなれば植物は死に絶え、季候も寒冷化します。Gだって生態系に果たす役割はありますし、神の教えが社会秩序を形成している民族もあります。戦争だって無い方がいいとは言っても、人類がその手段を捨てられない理由があって続いているものでしょう。何を強引に勝手な事をしているんですか。」


「勝手とは何だ!無礼であろう!」

「あんたみたいな大馬鹿者にいちいち礼儀なんて弁えられるか!あんたの浅い正義のお陰で、罪も無い生きとし生けるものがどれだけ死に絶えてると思ってる。」

「だから何とかせよと申しているでは無いか。」

「そっちこそ神なんだから責任取って元に戻して見ろ。好き勝手やって災禍を招くなんて天使どころか悪魔以下だろ。」


「悪魔以下とは、いくら何でもあんまりだろ。」

「アンタさっきから何だ何だとしか言ってないじゃねえか。神なら神の御技くらい覚えとけ、この無能神が。」

「無能・・・何も、そこまで言わんでも・・・」

 何か、ちょっと凹んだみたい。

 いい気味だからもちょっと攻めてやろう。


「だいたい、神は余計なことばかりして生き物に迷惑を掛け、後始末は何もしない能なしで怠惰な者ばかりじゃないか。たまには働け、たまには信徒が有り難がることでもやってみろ。」

「やって、るではないか・・・」

「二酸化炭素が存在しない世界を作ることがか?」

「いや、動物には不要だろう。」

「植物は? 燃えた後に二酸化炭素が出ない世界じゃ火も使えないんじゃないのか?」

「化学式上は・・・どうにもならん、のか?」

「バ○だろ、燃えた物質はどうなるんだよ。」


「我は引き算の神だぞ。」

「小学生以下じゃねえか。早く元に戻してやれ。」

「そちは口が悪いぞ。」

「そんなことを言ってる場合じゃないだろ。さっさとこちらの言うことを聞いて、他の神に頭を下げやがれ。」

「そんな・・・馬鹿にされる・・・」

「既にバ○なのがバ○と認知されるだけだろ。何も問題ないわ!」

「何かお知恵を」

 ガシャン!

 受話器を叩きつけてやった。


 ま~た明日、班長のお小言をいただくんだろうけど、別に痛くもかゆくも無い。

 何か胃がムカムカする。天使なんだけど。

 神のやらかしって本当に質が悪いし、周囲に不快感をばらまく。


 誰かこの現象に名前付けてくれないかなあ・・・


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