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みんな浮かれてるわ・・・

 さて、来なくてもいいのにやって来ましたクリスマス。

 そして、クリスマスなんだからそっちを楽しめば良いのに電話してくるお一人様ども。


 今日はお客様感謝デーだ。

 今日以外でも感謝したことなど一度も無いが・・・


「ご利用ありがとうございます。異世界転生カスタマーセンター、お客様サービス係でございます。」

「ねえねえお姉さん。クリスマスに仕事?働きもんだねえ。」

「しなくていいならしてません。」

「どう?今どんな気持ち?どんな気持ち?」

「地獄に行きやがれ!」

 乱暴に受話器を置く。

 壊れても別に構わないし・・・


 そしたら間髪おかずまた掛かってくる。

 受話器越しにドンチャン騒ぎが聞こえる。

「ご利用ありがとうございます。異世界転生カスタマーセンター、お客様サービス係でございます。」

「へ~い! お姉さん、こっち来てパーリィしない?」

「お断りします。」

「いいじゃんかよう~。天使なんだから美人なんでしょ?」


 幼女だけどね。

 相手するのも鬱陶しいので、そのまま電話を置く。

 するとエラリー先輩がやって来て、受話器に魔法を唱えてくれた。


「それ何ですか?」

「自動応答の魔法よ。私はまだそんなに魔法の腕前が優れてないから、あんまり役に立たないかもだけど、うんとか、ええとか生返事は得意よ。」

「それって便利ですね。いつも使えばいいのに・・・」

「でも、これって会社の規則違反なの。」


「今日は特別なんですか?」

「緊急シフト敷いてるはずなのに、班長定時で帰っちゃったじゃない?だからいいの。」

「確かに、みなさんムッとしてましたもんね。」

「控え目に言ってサイテーよ。」

「でも、お陰でクリスマスを乗り切れそうな気がしてきました。」


「どうせこの時間は酔っ払いしか電話して来ないんだから、多少のことは気にしなくてもいいからね。」

「さすがは先輩です。有り難うございました。」

「じゃあ、テキトーに質問コーナーを片付けましょ。」

「了解です。」



質問: 天使様は今日、何をしているのですか?

    神の使いですから、通常勤務日です。


質問: 天使様って彼氏いるのですか?

  いなくても平気なシステムとなっています。


質問: 天使様の好物は何ですか?

    スイカバーの種です。


質問: 天使様、僕にも何か素敵なプレゼントをください。

    サンタにお願いしなさい。


「そんな下らない質問、ほっといていいのよ。」

「そうなんですね。分かりました。明日以降、班長に回します。」

「早番の先輩で日の出の魔女と仲いい人がいるから、魔女経由で押しつければ班長ごとき、どうということは無いわよ。」


「では先輩、よろしくお願いします。」

「アレもたまには仕事してもらわないとね。」



質問: スライムやゴブリンが倒しても倒しても絶滅しないのは何故ですか?

    倒されても倒されても絶滅しないほど、よく増えるからです。


質問: 異性の幼馴染は主人公と上手くいかないか、2番手以降になるのは何故?

    ジャンルを問わず、恋愛が絡むと幼馴染みの法則が発動するからです。


質問: 王子の父が皇帝、公爵令嬢の父が侯爵なのは何故ですか?

    ライターさんにとっても日本語が難しいためです。


質問: 電化製品並の魔道具があるのに、何故文明レベルが低いのですか?

    文明レベルを上げすぎると夢が無くなるからです。


質問: 他はともかく、ビールが美味しくないです。

そこは現代日本ではありません。


質問: 農家は注目されているのに、漁師が地味なのは何故ですか?

養殖技術が無いことによる漁獲の不安定さ、保存技術の未熟さに起因する

流通の困難さから、中世において食料生産の主役たり得ないからです。


質問: 魔物が瘴気から生まれたり魔素から生まれたりと統一されていません。

ざっくり分けると、人間に害を及ぼすのが瘴気、そうで無いのが魔素で

す。

設定上の違いで使い分けられるのですが、シナリオの都合で必ずしもそう

なっていない場合もあります。


質問: どうして目に見えないくらい小さな敵がいないのですか?

小さすぎて描けないからです。


質問: 勇者が徹底した鈍感キャラで困っています。

あなたの魅力を知ってくれる人、そして何より、人を好きになれる人を選

びましょう。


質問: 「あれ?僕なんかやっちゃいました?」というのがとても苛立ちます。

みんなそうですので、心配する必要はありません。


質問: 魔術師は神経質なインテリ、という風潮はやめて欲しいです。

無神経で知性ゼロよりはいいと思うのですが・・・


質問: 何故、ギルドに酒場が併設されているのですか?

    冒険者お断りの店が多いからです。


質問: お金があれほど流通しているのに銀行がありません。

みんな派手に使っているのですね。


質問: 宿場町が無くて不便です。

野宿して夜間に襲われるという緊迫したシーンを産み出すためです。


質問: ドワーフは農作業しないのですか?

みなさんの知らないところでこっそりやっているはずです。


質問: キリスト教じゃないのに十字架を持っています。

作りやすく持ちやすく、遠くからでもそれと判別し易い形状ですの

で・・・


質問: アンデッドが白骨なのは何故ですか?

    新鮮でないからです。


質問: いつも何かといえばチョコです。

    地球でもこの数百年、チョコを脅かす菓子の材料は出てきていません。



「まあ、時間の割にたくさん回答しましたね。」

「気分が乗らないので、おざなりな回答が多いですが・・・」

「いいのよ。どうせ誰も見てないんだから。」


「でもこれって、気分次第で随分答えが変わりますよね。」

「そうね。でも、お客様の反応は大差ないのよ。」

「そんなものなのですね。」


 正直、今日はゲンナリしている。


 フロア全体がそうなので、余計に気持ちが落ち込むのを感じながら、ひたすら勤務時間の終わりを神に祈るクリスマス・・・


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