表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/119

初めての忘年会

 さて、天界も忘年会シーズンである。

 もちろん、本来はそんなこと必要ないくらい満たされた世界なので、忘年会で騒ぐのはもっぱら天使たちである。


 今日は夜明け前から遅番勤務の従業員が集まり、24時間営業の居酒屋で騒いでいる。

 残念ながら、ウチは三交代制の職場なので、全従業員が一堂に会したイベントができない。

 このため、いつものメンバーのみの宴会となる。


 すでにテーブルには沢山の料理とジョッキが並ぶ。

 こんな華やかな食卓、ついこないだまで学生だった天使には初めてのことだ。


「じゃあ、カスハラ被害者の会遅番グループのみんなお疲れ~、かんぱ~い。」

「かんぱ~い!」

 3班サブリーダーの発声で、何だかグダグダの忘年会は始まる。


「できれば元クラスメイトと飲みたかったです。」

「そうね。ナターシャさんは同期が特に少なかったものね。」

「去年は退職者が少なかったのですよね。」

「今年は5年刑期が終わって転職する子が14人、2班のエミール先輩が地上勤務で退職だから、少なくとも15人は入ってくるわね。」

「やっと後輩ができます。」

「それだけいれば、最低一人は1班の遅番に配置されるから、ナターシャさんの負担も減るわね。」

「吟遊詩人担当にしちゃいます。」

「いきなり止めてあげなさい。可哀相よ。」

 どっちの誰が?


「さあさあナターシャちゃん、もう飲めるのよね。」

「天使19年生ですけど。」

「あら、まだノンアル組なのね。」

「私は見た目幼児なので、お酒は生涯控えるつもりでいます。」

「別に20年生になれば飲んでもいいのよ。」

「いえ、各方面から非難を浴びる絵面になりますので・・・」

 そうなのだ。

 私はおばあちゃんになってもこの見た目なのだ。


「それはそうと、班長がいない飲み会って最高よね。」

「それどころか、全員女子なんだから。」

「でも何でうちのシフトに男いないんだろう。」

「まあ、ここは元々男がほとんどいない職場だから。」

「一人でもいると気を使っちゃうから、いっその事、いない方がいいのよねえ。」

 最後のねえはみんなでハモる。


「ということは、昼番は班長もいて雰囲気悪いんですか?」

「生活するには通常シフトが一番いいんだろうけど、班長が目を光らせてるといろいろ五月蠅いらしいよ。」

「だから誰もシフト変更願を出さないんですね。」

「早番に出す子はたまにいるわよ。」

「でも、エリザベス先輩がいるから・・・」

「出たわね。勤続百年日の出の魔女。」

「そんなに凄いんですか?」

「新人なんてあのキツい視線だけで石になるわね。」

「天使が石化しちゃうんだから相当よ。」

「お局コワい~!」


「かなり妙齢の方なのですね。」

「見た目は若いのよ。だからあんなにイジける必要なんて無いのよ。」

「単なる承認欲求の暴走よ。」

「後輩のエミール先輩が先にご栄転だもんね。」

「そうそう、そうでなくても次期2班の班長とかエースとか言われてたんだから。」


「では、最近ずっとお局状態だったんですね。」

「誰か正常化スキル持ってない?」

「それどころか、あと千年したらヒステリアの後継者になるわよ。」

「うわぁ、ツインヒス・・・」

「まさにエリザヒスね」

「それ言った子、徹底的に叩かれたそうよ。もう何年も前の伝説だけど。」

「神も天使もこけが生える頃には腐るのよ。」

「魔女って呼ばれる時点で、お察しよね。」

「神もロクなのいないけどね、」


「直接関わることがほとんどないから、まだマシね。」

「でも、先月おくされ様が昼間に来たって言ってたよ。」

「ああ、みんなでオフィスの一斉清掃になったらしいわね。」

「清浄化スキル持ちがいたから助かったって。」

「おくされ様の清浄化はできないの?」

「天使ごときじゃ無理よ。匂い除去が限界ね。」


「何しに来たのかしら。」

「水の綺麗な世界を紹介してくれって言ってたらしいわね。」

「その世界、滅ぶじゃない・・・」

「地球が何とかなってるんだから、大丈夫じゃない?知らんけど。」

「あそこホントに頑丈よね。」

「下手なシステムを組んで無いからよ。」

「存在そのものがバグって噂もあるけど。」

「あそこまで行ってしまうと、誰も手が出せないある意味聖域よね。」


「でも、そこで育ったとびきり生命力の強いのが転生するんだから、異世界にとっては迷惑よね。」

「でも、それやってるの神だから。」

「やっぱりク○よね~!」


 またハモった。

 こうして天使の中では若者の騒ぎは日が高くなっても続いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ