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逆ハーでドロドロ・・・

 さて、下界は師走。

 そろそろ憂鬱なクリスマスが来るのだが、そんなある日の出来事。



「ご利用ありがとうございます。異世界転生カスタマーセンター、お客様サービス係でございます。」

「私、異世界転生10年目の東屋朋美、こちらの名前はジェルカ・ユルゲンヴィッチです。」

「アズマヤ様ですね。少々待ち下さい。」

 もう名前と口調でだいたい分かるようになってきた。

 少なくとも脳筋勇者ではない。


「お待たせしました。B-CC7710-3Dのヒロイン様ですね。ご用件をお伺いします。」

「はい。私はこの世界で幸せを掴むため恋に邁進し、無事逆ハーエンドを実現させたのですが、今はその事後処理に奔走する毎日。とても困ってしまい、お電話しました。」

 逆ハーあるあるは最近の風潮だけど・・・


「それで、お客様はエンディングを無事に迎えたのですね。」

「はい。7年前に。」

「その後、どなたかと結ばれたのですか?」

「最終的に王子殿下と結婚し、来年王妃となる予定です。」

「それはおめでとうございます。特に問題は無いように思えますが。」

 確か10年前と言っていたから、まだ逆ハーの難易度が低く設定されていた時代だろうし、エンディング後の現実目覚ましシステムが一般化する前の仕様なのだろう。

 そうであれば、めでたしめでたしのはずだが・・・


「問題は山積しておりまして、まず、元カレたちが今でも私にしつこくつきまとうのです。王宮内での噂も後を絶ちませんし、行く先々で付きまとわれるのも困ります。」

「しかし、攻略対象はいずれも側近ですよね。」

「それが余計に質が悪いと言いますか、殿下も元婚約者追放や私を強引に奪ったいきさつがあり、強く出られない状況なのです。」

「そうですか。」

「そのため、貴族たちも私たちを遠巻きに見ている感じで、協力者もほとんどおりません。」


「攻略対象関係者を味方にするほか無い状況と。」

「はい。宰相、騎士団長、魔法術長、貴族学校長、英雄将軍、枢機卿、国内最大手の貿易商、隣国の国王陛下が攻略対象の親です。」

「最強の味方であり、敵ですね。」

「もう一人、平民の方がいます。」

 10人も攻略したか~、多すぎるなぁ・・・


「それで、元カレの皆さん方は、それぞれ父の後を継ぐ感じなのですね。」

「はい。将軍の御子息は私の護衛を任されていますし、校長の御子息は私の子供たちの家庭教師役となることが既に決まっています。」

「絵に描いた以上のドロドロっぷりですね。」

「はい、我ながら見事だと思います。」

 ゲームの世界は、しばしば常識外れの暴走っぷりを見せる。


「諸侯からの批判の声はありますか?」

「以前はユルユルビッチなどと陰口を叩く者もいましたが、今は同情的な方も増えてきましたね。」

「それでも味方は増えないと。」

「この国の権力者揃いですし、彼らと対立する理由も乏しいのだと思います。」

「だからといって、他の方と再婚する訳にもいきませんね。」

「対立する方の顔ぶれが僅かに変わるだけですね。」

「思い切って隣国の王子に嫁いだら。」

「戦争ですね。」

「それはとても愛されていますね。」

 まさかここに強制力が働くとは・・・


「そうですね。中にはお腹と頭が反比例してきた方も散見されますが。」

「まだお若いですよね。」

「でも、17世紀レベルですので。」

「攻略対象の方々はもちろん。」

「皆さん独身を貫いています。」

「そこを何とかすることが、解決の鍵になりますね。」

「しかし、彼らに寄ってくるご令嬢なんて、権力志向の塊のような方しかいないと思います。」

「貴族社会もそんなに捨てたものではないと思いますが。」

「普通のご令嬢は、長年に亘る醜聞と輝きを増していく頭部を恐れて近付きません。」


「かつてはモテたでしょうに。」

「そうですね。私も嫉妬から随分嫌がらせを受けました。」

「今は逆方向からの嫉妬に悩まされているのですね。」

「はい。醜聞割増し継続中です。」

「では、未亡人狙いしかありませんね。」

「昼ドラ度上げ上げです。」

 何か、末期症状だなあ・・・


「確かに、状況を更に悪化させるおそれはありますが、強力な打開策になる可能性はあります。未亡人は社交にあまり出て来ないでしょうから、アズマヤ様のお力で出会いの場を演出するのが良いと思います。」

「そこで前夫との子が登場して、それぞれの家で後継者問題が起きる感じですか?」

「そうなればあなたに構っている場合ではなくなりますね。」

「もう、身動きできないくらい。」

「ドロドロです。」


 主婦のみなさん、ここですよ!


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