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ぼくのかんがえたさいきょおのだんちょん

 さて、窓の外はすっかり雪。


 いや、天界は常春なのだが、雰囲気を出すために融けない雪が降る。

 ちなみに冷たい。



「ご利用ありがとうございます。異世界転生カスタマーセンター、お客様サービス係でございます。」

「もしもし、ぼく健太。五歳。」

「ご、ごさい?」

 誰だよ!5歳児に運命の選択をさせた鬼畜は!


「うん。もうすぐ6歳ってお母さんが言ってた。」

「お母さんはそこにいるのかな。」

「いないけど、いつでも会えるよ。神様がぎゅーんってしてくれたの。」


 なるほど納得した。

 天界と現世の通信はここを除いて厳禁だ。

 ところが異世界間通信は評議会の根回し次第でどうにかなる。


 母親といつでも会えるなんて、意外なことに鬼畜神じゃなかった。

 何故、神が人を救ったのか不可解でならないが・・・


「健太君大丈夫?お腹とか空いてない?」

「うん。お菓子とアイスがいっぱい出てくる冷蔵庫があるから大丈夫だよ。」

 何かそういう装置を与えられたのだろう。


「お野菜もちゃんと食べないとめっ、だよ。」

「お野菜出てこない・・・」

 おい、そこの全知全能、ちゃんと仕事しろ!


「それで、健太君はどんなことで困ってるのかな?」

「うん。大っきなだんちょんを作ったから、お姉さんに見てもらいたいなあと思ってお電話したの。」

 可愛い・・・何て可愛いんだろう。

 やってることは鬼畜だけど・・・


「すごいね。五歳でダンジョンが作れるなんて、お姉さんビックリだよ。」

「エヘヘ~、ぼく、いっぱいいっぱーい頑張ったよ。」

「じゃあ、お姉さんにもちょっとだけ見せてくれるかな。」


 こんないたいけな子供を守るのは大人の義務だ。

 何としても攻略不可能なダンジョンを建設すべく、知恵を出さなければいけない。


「健太君。入口はどこにあるのかな。」

「南極だよ。留美ちゃんが絶対に見つからない所がいいって言ってた。」

「留美ちゃんとは仲良しなのかな。」

「うん。幼稚園で一番仲良しなの。」

 そう言えば、幼稚園なのに幼稚士って言わないな。

 昨日の上様なら保育士より天職だったろうに・・・


「そうなんだ。すごく良い所に作ったねえ。」

「褒められちゃった。」

「そこを入ると何があるの?」

「最初はねえ、弱いスライムが出てくるんだ。倒すと絶対宝の箱が出てくるんだよ。」

 そりゃあ太っ腹だ。


「中は何が入ってるのかな。」

「おやつ!」

 子供だ。


「スライムさんはいっぱい出てくるのかなあ。」

「うん、いっぱいいるよ。でも、あんまり倒したら道が通れなくなるようにしてるんだ。」

 特殊スライムか。なかなかやる・・・


「その奥に行くと何があるの?」

「見つからない所に階段があるの。でもケンケン足で一段飛ばしで上らないといつまでも終わらないの。」

 超高難易度のギミックだ。

 そんなこと事前説明が無いと誰も解き明かせないだろうし、知ってても重装備の者には地味にキツい。

 しかも、微妙に子供らしいアイデアなのが大人にとってはハードルが高い。


「そこを上ったら何があるのかな?」

「いきなりジャンボスライダーがあるよ。水の中にドッポーンってなるよ。」

「じゃあじゃあ、水の中を進むんだね。」

「うん。息が出来ないからたいへんだよ。」


「長さはどのくらい?」

「ごきろ!」

「どうして5kmなの?」

「毎日幼稚園バスに乗ってて、長いなあって思った。」

 スキル持ちで無いと踏破不可だ。


「そこにはお魚さんがいるの。」

「シュモクザメとクラ-ケンとリヴァイアさんがいる。」

 子供って、どうして限定的に高度な知識を持ってるんだろう・・・


「それは普通の人は絶対に負けちゃうね。」

「それで、水から出たら1分以内にどんぐりころころを歌わないと、次に進めないの。」

 ああ、冒険者がどんぐり扱いになってしまった。

 どうせどこにも説明書きは無いんだろうな・・・


「それはお姉さんでも無理だなあ。」

「ホントッ!うれしい~。お姉さんありがとー。それでね、扉が開くと一億万千億度の火が出てくるよ!」

 無理だ。絶対無理だ。

 下手したら神でも死んでしまう。


「もう、凄すぎてお姉さん、参っちゃったよ。」

「その後はねえ。お化け屋敷ゾーンなの。」

「それは絶対コワいやつだよねえ。」

「うん。とおーっても勇気をいっぱい出してもコワくて泣いちゃう。」

「その後もあるんだよね。」

「うん、なぞなぞコーナーがあるよ。間違えるとう○こ沼に落ちるの。正解してもたまに落ちるよ。」

 さすが男の子。

 しかも、女性冒険者ならたとえ灼熱に耐えられてもここでアウトだ。


「まだまだ地獄は続くんだよね・・・」

「うん、次はドラゴン戦隊マサキンジャーと戦うの。」

「ボス戦ね。マサキンジャーって何?」

「昌樹君知らない? すっごく強いんだよ。」

 子供の想像力ってすごいなって思う・・・


「マサキンジャーレッドがドラゴンで、ブルーが悪魔の化身で、ブラックが透明忍者でグリーンが触ると絶対死ぬ毒人間で、イエローがう○こ攻撃するんだよ。それで、ピンチになったら合体してマサキンガーZになってミサイルとビームをいっぱい出すの。」

「何?ヤダそれ最強じゃない。」


 多分、ビーム兵器無効のスキルなんて存在してない・・・

 だって、光の物理攻撃なんて神の御技として一般配布禁止だもん・・・

 それにきっと、Zなんて合成獣的な合体変形メカだよね。


「健太君。まだまだあるんだよね。」

「うん。まだ半分。一番面白いのは迷路コースとプラレールゾーンだけど、マサキンジャーの後はパパの部屋!」

 連続ボス戦か・・・


「どんなところなの?」

「かみなりとーちゃんって人にずっと怒られるの。」

「どのくらい?」

「一年。」

「それは辛いねえ。途中でやめたり寝ちゃったらどうなるの?」

「入口からやり直しだよ。」

 鬼畜だ、鬼畜過ぎる。


「かみなりとーちゃんは倒せないの?」

「絶対無理。どんな攻撃も通じないよ。その代わり、絶対暴力振るわないから安心して。」


 その後も最後までチェックしたが、どう考えても最強ダンジョンだった。

 きっと彼の持つチートと神の過剰なえこひいきの産物だ。

 しかも結局、奥まで踏破してもダンジョンコアが無いという所が、健太君の隠れた負けず嫌いを表している。

 だって、う○こ沼の底に厳重に保管されてるし・・・


「本当に凄かったよ。お姉さんもこんなの初めてだったよ。」

「ありがとう。お姉さん。」

「じゃあ健太君、そこにいれば絶対安全だから無理しちゃダメだよ。」

「うん。お姉さん、またお電話していい?」

「うん、いつでもOKだから、寂しいの我慢しちゃダメだよ。」

「うん、分かった。ありがとう。」


 こうして元気に電話は終わった。

 久しぶりに清々しい気持ちになったが、とにかく疲れた・・・



「いいお子さんだったみたいで良かったわね。」

「はい。楽しかったですよ。それにしても、子供って無邪気に容赦無いですよね。」

「きっと、成長すればダンジョンの中身も変わると思うわ。」

「現状で最強ですけど・・・」

「そうね。将来が楽しみね。」


 一度、ヒステリアでも騙くらかして挑戦させてみようかしら・・・


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