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滅んでしまいました

 一仕事終えてお茶でも飲もうかと思っていたら続けざまにコールが鳴る。

 今日は多いなあ・・・


「ご利用ありがとうございます。異世界転生カスタマーセンター、お客様サービス係でございます。」

「麿は戦国の世で将軍をやっておる、Y足利こと、中村数則でおじゃる。」

「あの、Y足利はたくさんおられるのですが。」

「そんなことはどうでもよいっ!大変じゃっ、大変なのじゃっ!」

「落ち着いて下さい。何があったのですか。」

「に、憎っくき信長に都を追い出されてしもうたのじゃ。」

 ああ、あのYか・・・



「大丈夫です。それは正常にシステムが作動している証です。」

「麿にとっては由々しきことぞ?」

 この人、僧侶時代もこの口調だったの?


「しかし、その時代に彼に敵う者などいないことくらい、ご存じだったはずでは?」

「それはそうでおじゃるが、途中までは上手くいっておったのじゃ。Y朝倉がもちょっと

真面目にやっておれば・・・」

 いっぱいいるなあ、Y・・・


「ナカムラ様は」

「上様と呼ぶのじゃ!」

「上様は今、どこにおられるのですか?」

「今は堺に逃げておる途中じゃ。」

 よく電話する余裕があるな・・・


「ながら運転は良くないですよ。」

「大丈夫じゃ。商人の荷物に紛れておる。頭良かろう?」

「では、ご用件をお伺いします。」

「お役目仕草よのう。まあよい。それで、麿はこれからどうすれば良い。」

「歴史のとおりの顛末を迎えると思いますが。」

「そうなりたくないから電話しておるのじゃ。」


「そもそもの話で恐縮ですが、何故彼をお選びになったのですか?」

「話せば長いがのう。麿は前世でアンチノブじゃったのじゃ。それに、信長の○望でも超級プレーヤーだったのじゃ。幕府再興くらい簡単じゃと思うても仕方無いでおじゃろう。」


「まあ、ゲームのようにはいきませんよね。」

「そうなのじゃ。配下は無能、民は文句ばかり、大名連中は麿の神経を逆なですることしかせん。ノブに至っては制御不能のサイコじゃ。これでどうにかできる方がおかしいぞよ。」

「実際、そうだった訳ですから。」

「浪漫溢れる時代じゃと思っておったが大きな間違いじゃったわ。」

「最も血が流れた時代です。生々しいに決まっています。それで、これからどこに向かうつもりですか。」


「西しか逃げ道がない。」

「堺からなら船で東でも呂宋でも目指せますよ。」

「せめて国内がいいのう。」

「そこは、上様がこれから再起を願うか、命が助かるのを優先するかで決まってくるでしょう。」

「そうよの。では、T足利の故事に倣って九州で再起を図ろうぞ。」

「島津ですか?」

「秋月じゃ。」

「どうしてここに至ってまだチャレンジするのですか!」

「ち、超級じゃし。」

「それなら今すぐ都に戻って残党を集めて挙兵しなさい!」

「それはいくら何でも・・・」

「まだそちらの方が可能性はあります。」


「そうはいうが、麿は戦などしたことないぞよ。前世も保育士じゃったぞよ。」

「将軍要素ゼロですね。」

「では、秋月は諦めるとして、逃亡先はどこが良いかのう。」

「史実では毛利ですね。」

「有力大名の中では、当主の能力がのう・・・」

「それはゲームの中の話では?」

「実際の事績を見ても、高い評価を与える訳にはいかんのう。」

「お薦めは島津、上杉、武田、北条です。」

「それは知っておる。」

 知ってるなら電話してくるなよ・・・


「いい加減ゲーム脳を捨てて下さい。それを選ばないなら、呂宋か蝦夷地を目指した方がまだマシです。」

「蝦夷幕府か・・・」

 この人、何を言ってるんだろう・・・


「とにかく、本能寺まで凌げれば命だけは助かるでしょう。」

「まだ10年近くあるのう。それに、みんなに頑張ってもらって信長を倒してもらわねば腹の虫が治まらんわ。」

「たくさんお手紙を書かないといけませんね。」

「人の悪口を書くのは得意じゃぞ。」

「無事に逃亡先に着いたら頑張って下さい。」


「それで、どこが良いかのう。」

「まだそこですか!いい加減決めて下さい。」

「分かった。北条じゃ、北条にする。」

「一番安全そうな所にしましたね。」

「江戸に領地をもらって幕府を立てる。」

「徳川への嫌がらせですね。」

「歴史を変えるには、史実と違うことをせねばならぬ。」

「ようやくお気づきになりましたか。」

「そうすれば信長も東西に兵を分散せざるを得なくなるし、上杉、武田、毛利と結めばまだ何とかなる。」

「それは史実でもやっていたとは思いますが。」

「そこで江戸幕府じゃ。」

 何か、無理っぽい・・・


「それでは上様のご武運をお祈りしております。」

「うむ大儀であった。また会おうぞ。」

 いいえ、あなたの担当は2班です。



「なかなか賑やかでしたね。」

「はい。サイコパスに歯向かうサイコパスの相手をしてました。」

「人気のある時代ほど、実際は大変な時代ですからね。」

「生存率も低いですが、ファンタジーと何が違うのでしょう。」

「戦乱の時代はどこも大変です。ファンタジー世界は転生者保護のためにチートを付与しますが、そうでなければ戦闘や犯罪に巻き込まれて落命するのがオチです。」


「フィクションとノンフィクション、どちらがお薦めなのでしょう。」

「一長一短がありますから、どちらということは言えません。ただ、それぞれに向き不向きがあるだけですよ。」

「勉強になります。」


 向いて、無かったな・・・


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