捜索難航
さて、ハーレムなんて何がいいんだろう?なんて考えてると次のコール。
「ご利用ありがとうございます。異世界転生カスタマーセンター、お客様サービス係でございます。」
「ああ良かった。吟遊詩人のミゾグチです。」
「ミゾグチ様ですね。お疲れ様です。その後はどうなりましたか?」
「あれから10日ほどロッテンの町で聞き込みを行ったのですが、何も情報を得ることができなかったので、私がここに来る前に滞在していたカミルの町に移動して聞き込みを行っているところです。」
「お手数をお掛けします。それで、見つかりましたか。」
「まだここに来て二日目ですが、全く勇者の情報が入ってきません。私も働かないとそろそろ路銀が尽きてしまいそうなので、早く何とかしたいのですが。」
「申し訳ございません。それはミラノ様にご請求下さい。」
「もちろんそうします。」
「それと先日、当センターに勇者様の方から剣を無くしたとの連絡があったそうです。残念ながら別の担当が対応したので、情報が行き違いになったのですが、次はミゾグチ様の事を勇者に伝えたいと思います。」
「そうですか。是非、お願いします。」
「それで、今後のことを検討したいのですが。」
「何か良いお知恵がございますか。」
「ええ、ミゾグチ様には今しばらくその町で聞き込みを行ってもらい、情報が無い場合はアーレン王国のハナ神殿に向かっていただきたいのです。」
「勇者がそこを目指すと。」
「はい。聖剣グラディアスはバスク帝国が所有する剣ですが、もう一振りの聖剣はハナ神殿にあります。現状で魔王を倒すためには、もう一本を入手せざるを得ませんから。」
「なるほど、必ずそこに現れるということですね。」
「いくら無名の勇者でも、聖剣の試練に挑むなら、少なくとも彼女は神官に会うはずですから。」
「分かりました。そうさせていただきます。」
「お手数をお掛けして大変恐縮ですが、よろしくお願いします。」
「はい。頑張ります。」
本当に気の毒なことだと思う。
そして、拾ったのがこの方で本当に良かったと思う。
早くあの機械音痴勇者から連絡来ないかなあ、と思いながら受話器を置く。
「ああ、例の不運な吟遊詩人の方ね。」
「はい。さすがに気の毒でなりません。」
「私たちと重なるわよね。」
「全くです。世界を変える力があるのに考え無しの勇者と、一方的に振り回される吟遊詩人のコンビなんて、悲しすぎて見てられません。」
「そうね。天界の縮図ね。」
「早く解決して欲しいと願うばかりです。」
「でも、会えたら会えたで、きっと大変よ。」
「アンタがすぐに持ってこないのが悪いのよ、くらいのことは言いそうですか?」
「アタシのせいじゃないわよ!は確実に言うわね。」
「やってられませんね。」
「魔王、あの子をやっつけてくれないかしら。」
「本末転倒ですね。」
「まあ、それは冗談として、あの子もう一度連絡寄越すかしら。」
「そうですね。できれば早めに一報願いたいのですが。」
「まあ、そこについては明日、私から班長に報告してみるわ。」
「お願いします。」
あの勇者がさっさと自分の居場所を教えてくれればいいのに、なんて思いながら勤務時間の終わりを待つ。




