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失敗しない転生の方法を教えて下さい

 自動販売機で暖かい紅茶を買ってきてゆったりとした気分でいただく。


 束の間の休息。

 と思ってたらまたコールされる。


「ご利用ありがとうございます。異世界転生カスタマーセンター、お客様サービス係でございます。」

「もしもし、コールセンターの方ですか。」

「はい、そうでございます。」

「私は元冒険者で今は日本に住む吉岡恭平といいます。」

「ヨシオカ様ですね。日本在住ということは帰還者の方ですね。」


 今日は一風変わった方が多い。

 基本的に転生・転移者は一方通行だが、神の気まぐれで稀にこういう方がいる。


 皆さんのお近くにもこういう方がいるかも知れませんが、彼らには命に関わるレベルの守秘義務が課せられていますので、怪しいなと思ってもそれに触れないようにしていただけると有り難いです。


「はい。一年前まで勇者パーティーの一員として、魔王討伐業務に従事していました。」

「それで、ご用件はどのようなことでしょうか。」


「異世界転生のコツについて、アドバイスいただければと思いまして。」

「帰還された方には不要、と言いますか、初めての方でもそのような知識を活かせる機会はまずございませんので、アドバイスになるとは思えませんが。」

「しかし、最近は二度目の転生も流行っていると聞きます。私も油断して失敗したくないと思いまして・・・」

「そうですか。具体的にどのような不安をお持ちなのでしょう。」


「まず、転生者の方で担当の神様を選ぶことはできないのでしょうか。」

「基本的に転生作業を行う神は当番制ですので、トラックにぶつかった日にたまたま居た神と出会うというのが通常の形です。稀に指名依頼という形で呼び出す神がいる可能性はありますし、魔王討伐のご経験のあるヨシオカ様であればそういったことも考えられますが、いずれの場合においても、ヨシオカ様の側で神を選ぶということはできないとお考え下さい。」


「なるほど、それはそうですね。神に相当執着されていればですけど。」

「そうですね。神と本当に良好な関係を結んだ方であれば、相思相愛といいますか、相当忖度が働くとは思いますが、私はそのような例を存じ上げません。」


「分かりました。では、選ぶ世界の時間軸についてはどうでしょう。」

「もちろん、皆さんも既にご承知のとおり、未来よりは過去の方が進んだ知識を活用できますので断然有利です。これはモニタリング結果でもハッキリしていることです。」

「やはり、想定通りなのですね。」

「未来で活躍できるような方は、何処に行っても超一流になれると言えます。」


「文明としてはやはり中近世のヨーロッパですか。」

「ヨシオカ様は前回、どのような世界に転移されたのでしょう。」

「中世ヨーロッパ風の世界です。」

「スタンダードですね。現在設定されている世界でも最も数が充実していますし、当然、その世界に行くよう依頼を受ける可能性が最も高いですね。」


「どうして中世ヨーロッパが一番多いのですか?」

「単純に需要が多いからです。」

「なるほど。ファンタジーなどで人気がありますもんね。」

「はい。魔法、迷信、神と神話、多彩な種族などがバランス良くミックスされていますから夢があることに加え、現代社会の基礎となる文化風習が存在しますので、転生者にとって最も受け入れやすい雰囲気を持っている世界と言えます。」

「古代アステカ文明と言われてもピンと来ませんものね。」

「サハラ砂漠に転生したら、初日で詰んでしまいますし。」


「そういう世界もあるのですか?」

「砂漠のみの世界もございますが、人間用ではありません。」

「例えば、南太平洋の小島なんてのもありますか?」

「それは小規模ながらどの世界にもだいたい存在します。それはセカンドライフでリゾート気分を味わいたい方向けのプランですね。当然、冒険者には大変不人気です。」


「島から出ることさえ難しいですものね。戦国時代などはどうですか?」

「妖怪退治ファンタジー世界と戦国サバイバル世界は人気がありますね。でも、現代の日本社会は戦国時代より中世ヨーロッパに近いですから、カルチャーショックを受ける方が多いですね。」

「では、難易度は意外に高いのですね。」

「逃げ惑う戦国農民プランを選んだチャレンジャーもおりますが、一年後の生存率は僅か1.4%です。」

「それは厳しいですね。」

「農民ですからチート未装備ですしね。」

「秀吉って凄かったんですね。」

「あの厚かましさと優れた頭脳あっての成功ですね。さすが歴史に名を残す者は違います。」


「お薦めの能力はございませんでしょうか。」

「戦闘かスローライフかで優先すべき能力は異なりますが、戦闘職なら魔法が最も使い勝手に優れますので、魔法の存在する世界を選ぶのが良いでしょう。」


「私が以前いた世界にも魔法がありました。でも、何故でしょう。」

「剣術スキルがあったとしても、前世で剣道などの経験の無い方が使いこなすことは困難ですからね。その点、魔法は動体視力や運動能力などに左右されません。さらに、相手を殺める抵抗感も薄いと予想されます。」

「なるほど、確かにそうですね。」


「スローライフ系であれば、最近は農業技術や鑑定、錬金術が人気ですね。どれも良いスキルだと思いますが、個人的なお薦めは神との通信スキルですね。」

「言われてみればそうですね。」

「古今東西を問わず、一番楽なのは宗教団体の教祖です。」

「大儲けしますもんね。」

「実際に神と対話でき、予知も奇跡も自由自在。これなら異端に問われる心配はありませんし、こんな楽な事はございません。まあ、ちょっとばかりウザい神が多いのが難点ですが。」

「ウザいのですね・・・」

「天使との対話程度が丁度いいのかも知れませんね。」

「分かりました。参考にさせていただきます。」


「他の細々とした部分は、転生時の神との交渉次第です。」

「そうですね。細部は出たとこ勝負の要素が大きいですものね。」

「それでは、もしヨシオカ様にサードライフがあった際の成功をお祈りいたします。」

「どうもご丁寧にありがとうございました。」


 私なら、転生させてやると言われても断るなあ。

 第一、あんなヤツらに借りを作りたくないし、なんて思いながら、冷めた紅茶を一気に飲み干す。


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