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男尊女卑はおかしいと思います

 女性であってもそうでなくても、生きていくって大変なんだなあと思いつつ受話器を置くと、続けてコールが鳴る。


「ご利用ありがとうございます。異世界転生カスタマーセンター、お客様サービス係でございます。」

「ハロー、私の名前はキャサリン・ドットマンよ。」

「キャサリン様ですね。ご用件をお伺いします。」


「私は中世ファンタジーの世界に転生したんだけど、女性が生きて行くには過酷すぎて我慢ならないから、苦情の電話を入れたのよ。」

 そりゃ、中世だもの・・・


「ご不満は理解できるつもりですが、そういう時代背景ですので。」

「それはそうかも知れないけど、女が男の所有物って何?女を馬鹿にしてるの?」

「それは、お近くの男性にお聞き下さい。」

「あんなヤツらと話するなんてまっぴらゴメンよ。」


「では、そういう社会を変革するなり、我慢するなりして対応願います。」

「変革したくても女は社会進出すらできないわよ。」

「ほとんどの世界では、女性でも仕事をされているはずですが。」

「ほとんどが冒険者かギルドの受付嬢かサービス業ね。社会的に影響力のある立場にいる女性は皆無といっていい状態よ。」


「女王はいると思うのですが。」

「男が邪魔するから何も変わらないわよ。」

「お客様の不満は理解しますが、そういった価値観がお住まいの世界では一般的なのです。」

「でも、神が作ったのよね。」

「はい。地球もですが。」

「じゃあ、神が女性差別主義者なのね。」

「あなたは聖書で何を学んだのですか?神は人に教えを授けますが、運営するのはあくまで人です。神のせいにしているうちは何も解決しませんよ。」

 神の肩なんて持ちたくはないが、あまりの他力本願ぶりについ、声が荒立ってしまう。


「男尊女卑だけでなく、多様性にも全く配慮されていないわ。まるで後進国日本のようね。」

「多様性に配慮された完全な男女平等が実現された世界もございましたが、神に勧められませんでしたか?」

「そういう世界もあったけど、みんな近未来が舞台じゃ無い。それが当たり前の世界で生きても意味ないでしょ?」

 ああ、この人文句言いたいだけの理不尽系だ・・・


「無い物ねだりをしても仕方ありませんよ。」

「私はお客様よ。」

「それはそうですが、何でもお客様のご希望に添うことはできません。」

「何故よ。」

「世の設定を変えるには、神と同等以上の力が必要でございます。お客様は神ではありませんので無理ですね。」


 これは文字通りの意味で他意は無い。

 一部日本人は勘違いしているフシがあるが、神は神であって、転生者は今も前世でも人である。


「男女平等な中世ファンタジー世界があってもいいじゃない。」

「中世世界の実現には様々な要素があり、命が軽かったり、王の感情一つで戦争が起きたり、盗賊や悪魔が当たり前にいる世界です。当時の時代背景は物語を構成する重要な要素であり、男尊女卑や差別もこれに含まれております。」


「じゃあ、我慢しろって言うの!」

「変革を求めるか、我慢するかはお客様の自由であり、強制するつもりはございません。」

「何よ!融通が利かないわね。」

「何故、中世が中世なのか。そこに目をむければお客様でもすぐにご理解できると思いますが。」

「顧客を試すつもり?」

「そうお受け取りになりたければ、それで結構です。何故、中世社会が男尊女卑の価値観から抜け出せなかったのか、何が足りなかったのかに気が付けば、自ずと分かりますし、それが満たされた社会は、最早中世ではなく、あなた方の言う現代になります。」


「じゃあ、現代にしなさいよ。」

「それを選ばなかったのは、お客様自身です。」

「じゃあクーリングオフするわ。早く取り替えなさい。」

「人生もそうやって簡単に交換できればいいですね。」


「何?客の要望を無視するの?あなたでは話にならないわ。責任者を出しなさい。」

「責任者をお出ししたところで、人一人の人生を変えることはできません。」

「何よ、アンタたち神でしょ。できるんでしょ。」

「一度は出来ます。でも、あなたはその一度の権利を既に行使しておりますのでできません。」

「全知全能が笑わせるわ。」

 こんなレベルの者の前世の記憶を残したままなのだから、それには激しく同意だ。

 本音を言わせてもらえば、こっちが神にクレーム入れたいわよ。


「笑いたければご自由にどうぞ。」

「神罰が下るなんて脅さないの?」

「神の御心を、あなたごときにいちいち啓示する必要はございませんので。」

「全く対応がなってないわ。そんな不親切で遅れた考えの分際で、よくサービスなんて名乗れたものね。」

「私のような者でも、本来なら、あなたごときに声を聞かせるだけでも、人の世界では奇跡と呼ばれるのです。単なるサービス以上だと自負してますよ。」

「いい加減にしなさい!」

 そう叫ぶと同時に通話は切れた。


 まあ、腹は立ったけど、終わってしまえばもういいわ。

 でも、いくら気まぐれだからと言っても、神を冒涜するようなのを転生させるのは止めて欲しいわね。

 一応は神のお気に入りっていう建前なんだから・・・


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