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転生初日なんですが・・・

 今日は社会人、もとい、社会天使二日目。実質は今日が初日ね。


 私は夕方からの勤務なので、午前中はゆっくり休んで午後から出勤したわ。


 そして私のデスクへ。隣は私の新人研修のお手伝いをしてくれるエラリー先輩。とても優しいお姉さんって感じのする美人さんよ。


「先輩、今日からよろしくお願いします。」

「こちらこそよろしくね。辛い事も多いけど、悩む前に相談してね。」

「本当にありがとうございます。」

 と、早速電話が鳴る。


「はい、異世界転生カスタマーセンター、お客様サービス担当です。」

「あの、たった今転生した渡辺という者ですが。」

「ワタナベ様ですね。どういったご用件でしょうか。」


「ステータスが開かないのと、ここがどこか分からないので教えていただけないでしょうか?」

「では、ワタナベ様のフルネームをお教え願えますでしょうか。」

「渡辺三千人と申します。」

「分かりました。本日転生のワタナベミチト様ですね。少々お待ち下さい。」


 私はキーボードで氏名と転生年月日を入力して、データベースにアクセスすると、すぐに該当データがディスプレイに表示される。

 そこには転生者のプロフィールや転生先とその世界の概要が記録されている。


「お待たせいたしました。ワタナベミチト様、B-YF0533フィールドに転生された方ですね。その世界はステータス値そのものの設定がございませんので、ステータス表示機能をご利用することはできません。」


「分かりました。そういう世界もありますもんね。でも、自分の能力を具体的に知りたいのですが、方法はないのですか?」

「はい。先ほどもご説明しましたとおり、ステータス値そのものがございません。つまり、ワタナベ様の持つ能力を数値化する方法はございませんし、従ってレベルアップの概念もございません。」

「ええ・・・そんな・・・」

「どうやらお客様のご希望に沿った世界では無いのかも知れませんが、B-YF0533フィールドは前世とほぼ同じ環境で転生をお楽しみいただくという趣旨で設定を構築した世界ですので。」


「では、強くなるにはどうしたら良いのですか。」

「鍛えて・・・ください・・・」

「ま、魔法はありますか?」

「いいえ、ワタナベ様が前世で暮らしておられたA-GD0044と同じ世界線ですので、魔法は設定されておりません。」


「あの、クーリングオフは可能ですか?」

「大変申し訳ございません。ワタナベ様の担当は本日勤務の女神 ヘスティアだと思います。ワタナベ様のご希望を最大限お聞き届けになったはずですが・・・」

「いいえ、とても面倒くさそうにハイハイ、早く行ってって感じでした。」


 あの駄女神め・・・

 いくら門外漢の竈の神だからっていい加減な仕事しやがって・・・


「大変申し訳ございませんが、神謹製の当社製品にクーリングオフの制度は無く、そのまま続行していただくほかございません。」

「何とかして下さいよ!全知全能の神なんでしょ!」

「申し訳ございません。天使にはそのような権限はございませんので、できかねます。」

 権限無いどころか見習いなんだよ、こっちは。


「だって、知らない世界で一人生きるなんて、無理に決まってるじゃないですか。」

「確かに大変な事とは存じますが、お客様の降り立った世界は、元の世界より約50年遅れの時間軸ながら、社会構造や動植物、文化がほぼ同一の大変過ごしやすい世界でございます。」

「それに、冒険やハーレムも無いんですよね。」

「冒険はどの世界でも可能ですし、ご本人から特に希望が無い限り、転生後は前世よりイケメンになるよう補正されることになっております。」

「失礼なっ!僕は元々そんなに悪くなかったはずだ!」

「し、失礼致しました。謝罪の上、訂正させていただきます。」


「ああ、こんな世界に転生してしまって、僕には希望も何もない。」

「そんなことはございません。皆さん、その世界で懸命に生き、幸せを掴んでおられる方も沢山おられます。どう生き、それをどう捉えるか次第かと思います。」

「そんなに簡単なことじゃないよ。どうしてくれるんだ。」

「それは前世でも同じだったかと思いますよ。ワタナベ様はご両親に対して、そのようになじられたご経験がお有りなのですか?」

「いや、さすがにそこまでは言ったことないよ。」

「私だから言うというのは立派なカスハラです。」

「すいません。興奮して、つい・・・」


「まだ今日が初日です。これから先いろんなことが待ち構えているでしょうが、決して辛い事ばかりでは無いはずです。気を強く持つことと、早くお知り合いを作られることをお薦めいたします。」

「はい。頑張ってみます。」

「では、担当ナターシャがお話をお伺いしました。では、新たな旅に幸多からんことをお祈りいたします。」

「愚痴ってしまい、すみませんでした。」

「それでは、お元気で。」

 こうして彼は電話を切った。


「はぁーっ!これが毎日かぁ。」

「ナターシャさん、お疲れ様です。」

 エラリー先輩が注いでくれた紅茶を飲みながらしばし休憩する。

 電話さえ掛かって来なければ基本、暇なはずである。


「つくづく大変なお仕事を任されてしまったと思います。」

「これも修行です。そして慣れです。」

「ありがとうございます、先輩。」


 初仕事を終え、夜は更けていく。


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