運をMAXにしたら起こったこと
さて、出勤した途端、班長に呼ばれた。
多分、昨日の事でお小言をいただくのだろうが、班長、無事だったんだなあ・・・
「ナターシャ君、私はリズポス様に呼び出されてキツく叱責されたが、どういうことかね。」
「大変申し訳ございません。業務妨害も甚だしいと考え、つい、厳しい対応をしてしまいました。しかし、あれは私の仕事熱心さが災いしたものです。以後、気を付けます。」
「君が仕事熱心かどうかは知らんが酷い目に遭ったよ。」
「よくぞご無事で。」
「いや、キツく叱責されたが機嫌は良かったように思う。あのリズポス様に呼び出されて3時間で解放されたのだからな。」
ああ、あの神、暇だった・・・
「だが、始末書を書いておくように。それと、以後は充分慎むように。」
「はい。分かりました。」
こちらも3分以内に終わった。そして席に座ると電話が鳴る。
「ご利用ありがとうございます。異世界転生カスタマーセンター、お客様サービス係でございます。」
「もしもし、私はブルーノ・バルジャンと言います。この世界に来て15年になる者です。」
「ブルーノ様ですね。ご用件をお伺いします。」
「はい。私の世界ではレベルアップの概念があって、その時にボーナスポイントが貰えるんです。他の人はポイントが自動で割り振られるようなのですが、私だけはステータス画面上から自由に配分できるんです。」
「その裁量権が神から与えられた特殊能力の一つなのでしょうね。」
「はい。それで、私は運に全振りしてカンストさせてみたんです。」
「それはなかなかチャレンジャーですね。何故、そのようなことを?」
「運さえ良ければ何事もラッキーで解決できるのではないかと思いまして。」
「そうですか。お客様が無事であれば、それでよろしいと思います。」
「実際、個人的にはいいことだらけなんです。」
「例えば?」
「戦闘中でも相手の魔法が不発だったり、攻撃をミスってくれたり、こちらは確実にクリティカルヒットだったり、博打技も確実に充てられたりと、まさに無双状態なんです。」
「格上キラーですね。」
「大物食いの称号を持っていますよ。」
「あと、私だけ食中毒にならなかったり、カジノでは稼ぎ放題、街を歩けばラッキースケベの嵐と、まさに向かうところ敵無しなんです。」
「本当に、何もしなくてもチートですね。」
「はい。最初に上げるべきステータスは運で正解ですよ。他はラッキーで後から付いてきますからね。」
「強い敵に遭遇しても他力本願で何とかなると。」
「そのとおりです。」
「でも、ここに連絡しないといけないような事が起きた訳ですね。」
「はい。都にあった2軒のカジノが潰れてしまいました。」
「それはある意味、良いことではありませんか?」
「レッドドラゴンが絶滅してしまいました。」
「自然の猛威が一つ減ったのではありませんか。」
「それだけではありません。Gも絶滅してしまいました。」
どうしてみんな、Gを絶滅させてしまうんだろう。
「まあ、お客様的にはラッキーの一環だったのでしょうね。」
「しかし、生態系が大きく変わってしまったことで、結果的に農作物を中心に大打撃を受け、食糧難になってしまいました。その上、頂点を失った生態系は多くの連鎖絶滅を引き起こし、一部の魔物が大繁殖。人類は大きな危機に直面しています。」
「全くラッキーではありませんね。」
「しかし、私に関係する所ではしっかり運が味方してくれるのです。向かうところ敵無しだったり、謝礼ガッポガッポだったり、意図せず266人もハーレム要員が手に入ったり。」
「まるで、あなたの幸運を支え続けるために、滅びる覚悟で世界が力を貸してくれていますね。」
「私はこの世界の害悪なのでしょうか?」
「一つの摂理になっていることは間違い無いようです。しかし、死ねませんよ。」
「ああ、この世界がどんな犠牲を払っても助ける方向に作用するということですね。」
「はい。Gだってあなたが直接手を下した訳ではないのでしょう?」
「はい。隣のお姉さんのためにちょっと殺虫剤を作ってやったのがきっかけでした。」
「それが何らかのきっかけで・・・」
「はい。どの成分の調合を間違えたのかは未だに分かりませんが、一気に広がり、まるで伝染病が蔓延するかの如く、あっという間に・・・」
「まさにラッキーが成せる技ですね。」
「でも、このままでは世界が滅んでしまいます。」
「もしそうなったとしても、あなたにとって都合の良い形にしかならないはずです。ですから、何かしらは生き残りますし、あなたの死後は、ゆっくりと回復していくはずです。」
「寿命、来ますかねえ・・・」
「もしかしたら、ひょんな事で不死の能力を手にしてしまうかも知れませんが、そうなったらその時ではありませんか。」
「そうなのですね。」
「もし、どうしても良心が痛むなら、運のステータスを下げる術を開発してみてはいかがですか?」
「そんなこと、できるのですか?」
「何だか、あなたならできてしまいそうな気がします。」
「分かりました。やってみます。ありがとうございました。」
そう言って電話は終わった。
「運が良いのに大変ですねえ。」
「自分にとっての運ですからね。」
「そうでした。ステータスは自分用でしたね。」
「ですから、所有者の価値観にも大きく作用されます。」
「女性嫌いにラッキースケベは起きないということですね。」
「そのとおりです。むしろ、絶対起きないように世界が頑張ってくれます。」
「難しいですね。」
「でも、善良そうな方でしたので、いずれ持ち直しますよ。」
「でも欲しいなあ。カンストするほどの運・・・」
「あら、ナターシャさんには絶対与えてはいけない天恵だと思いますわ。」
私、天使なのに?




