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聖女召還

 クリスマスに24時間労働したんだから、年明けまで休みだよね?って思ってたんだけど、全く休みは無かった。

 班長に、「ミント君たちはそんな下らない文句は言わないよ」と一蹴されたのだ。

 去年よりさらにブラック度を増して、最早極黒だ。



「ご利用ありがとうございます。異世界転生カスタマーセンター、お客様サービス係でございます。」

「私、異世界で王女をやっておりますキャサリン・モブヒートと言う者です。どうぞ、よろしくお願いします。」

「では、早速ではありますが、ご用件をお伺いします。」


「我が国では魔王討伐と世界の瘴気浄化のため、先日、女神様の許可を得ずに召還の儀式をしてしまいました。」

「それはいけませんね。あなたは転生者ですから、それがダメなことを知っていた訳ですね。」

「大変申し訳ございません。この世界の逼迫した状況を鑑みて、やむを得ないと判断したのです。女神様の許可なんてまず下りませんし、下りたとしても10年単位の時間が必要と古文書に記載されていましたので。」


「しかし、故意の召還をカスタマーセンターで把握した以上、私は上に報告せざるを得ませんし、責任者である国王だけではなく、転生者のあなたにも罰が与えられる可能性が高いのですよ。」

「はい。それでも、世界が救われるのであれば、悔いはございません。」

 そう言われると、それ以上言いにくい。


「まあ、それでもお客様ではありますから、ご用件は伺います。」

「ありがとうございます。それで魔王討伐のため、聖女となる者を召還したのです。」

「ここに電話するということは、上手く行かなかった訳ですね。」

「はい。召還されたのは真っ白な子猫でした。」

「可愛いですね。」

「はい。今やお城の人気者です。」

「そのうち、一日王様なんてしてくれるかも知れませんね。」

「いえ、一日と言わず、ずっと王様でいて欲しいです。」


「既に平和が訪れているではありませんか。」

「いえ、そういう問題ではありません。儀式の手順に問題は無かったはずなのです。何故、そのようなことになったのでしょう。」

「それを知ってどうされるおつもりですか?天界として教えるとでも?」

「・・・申し訳ございません。」


「今回は召喚獣を召したということで特別に私の権限で不問に処しましょう。でも、一度きりです。二度と他の世界に暮らす無辜の民をそちらの都合に巻き込まないよう。」

「肝に銘じます。」


「それで、そのネコちゃんは聖女としての資質を備えていますね。」

「分かるのですか?」

「もちろん、聖獣でしょうから。」

「何か、聖属性の魔法は使えるのです。試しに怪我人を目の前に連れて行ったら治癒魔法を施しましたし、何となく分かるようなのです。」

「ネコの知能を馬鹿にしてはいけません。あなた方の顔色を窺うことも、慈しみの心も持っていますし、悲しみも理解しています。」


「では、聖女として働くことは可能なのですね。」

「あくまで、ネコですけど。」

「魔王を封じられるならそれで良いのです。」

「その力量は申し分ないでしょう。ただし、魔王を封じるべき存在と認識させるのは至難の業ですね。」

「何か、無理っぽい気がしてきました。」

「根気よく教え込むしかありません。ネコちゃんこそ、その世界が選んだ聖女なのですから。」


「分かりました。何とか頑張ってみます。それで、私自身は何かこの世界での役割があるのではないでしょうか?」

「恐らく無いでしょう。姓だってモブですし。」

「分かりました。大人しくしておきます。」

 こうして通話は終わった。



「ナターシャさん、いいのですか。恐らくちょっとだけグレーに誓い黒でしたが。」

「勝手な事をして申し訳ございません。でも、彼女の気持ちも分かりますから。」

「そうですか。まあ、あなたもそういうとこありますものね。」

「副班長にはご迷惑をお掛けします。」

「いいのよ。恐らく大きな問題にはならないでしょう。それに、ミントちゃんたちが応対してたらもっと凄いことになってたかも。」

「ああ~、そうですね。」

「エラリーせんぱいふくはんちょう。お呼びになった~!」

「ちがうよ~、シナモンを呼んだんだよ~」


 パタパタと富んでくる二人の妖精。

 これに白ネコが加わったら最強だなあ、なんて思いつつ、彼女たちとお菓子を楽しむ。

 今日はこれで終わってくれないかなあ・・・



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