報告
数日後…。大学で講義終わりに冬樹とサークルに顔を出した。部室に入ると幼馴染と藤花先輩の見慣れた顔と花野さんがカタンというボードゲームを遊んでいた。
「よっ!お二人さん先に遊んでるぜ!」
「お先~」と僕たちの方を見て軽く挨拶をした後、面白い場面なのか藤花先輩と椿が交渉していた。
「花野さん?どうしているんですか?」
「どうしてと聞かれても~」と陽斗の方に目線を移している。
「まさか…」と陽斗の方を見ると、「何だよ!別に誰でもウェルカムだろ」と言いサイコロを振っていた。
「椿は知っていたのか」と尋ねると、「もちろんよ!」と誇らしげに答えた。
「どうして僕だけが知らない状況なのかね」
「安心してほしい。僕も分からなかったから」
「僕は冬樹と同列か…」
「言い方!」と冬樹がツッコミ話は終わった。
その後は、カタンの勝敗を冬樹と一緒に観戦していた。
最終的に花野さんがビギナーズラックで一位になった。
ちなみに他のプレイヤーは盗賊の移動でバチバチにやり合っていた。
ーーーーー
大学終わり、ショッピングモールのフードコートに行って晩飯を食べていた。フードコートには部活終わりの学生が大勢いた。
藤花先輩と花野さん、椿の三人はカフェに行っていた。
僕と陽斗はハンバーガーを注文して、冬樹は塩ラーメンを注文した。
「さてと、野郎三人で晩飯を食べることになった訳だが…」
「まぁ会話なんて一つしかないよな…」と陽斗と冬樹が僕の方を見ている。
「好きな人いるか…だろ」と答えると、
『そうだよな~』と二人は答えた。
「じゃあまず僕から話そうかな」と冬樹が手を挙げた。
「俺は冬樹のタイプの話とか聞いたことないからな。春は聞いたことあるのか」とプライドポテトを食べながら聞いてきた。
「う~ん。そういえば女性関連の話聞いたことないかも…」と声に出すと、「それじゃあ初公開か!」
「そんなに楽しい話じゃないよ。結論から話すと彼女いるよ」
『ええぇぇーーー!』と二人して思わずプライドポテトが喉に詰まらせてしまう所だったのでドリンクを飲んだ。
「彼女いるの?」
「当たり前でしょ」
「何か…ムカつくわ~」と陽斗はハンバーガーにかぶりつく。
「僕の話よりも二人の話が気になるな」とラーメンをすすっていた。
「僕は…話すような出来事はないよ」
「嘘つけ。本当は気になる子がいるんだろう。陽斗からみてどう思う?」
「う~ん…わからないね」と春の目を反らした。
「つまらないね。陽斗は?」
「どうせ。面白くない男ですよ」と陽斗の方を見ると鼻で笑っていた。
「まぁ…答えないならいいよ」
その時の陽斗は、不気味の顔をしていた。
「それで?居るの気になる子」と冬樹が聞くと、「もちろん。デートにも誘ったし!」と自信満々に答えた。
「それは是非とも話を聞きたいね」
「具体的に頼む!」と二人は陽斗の方を見た。
「椿とデートする!」と力強く言った。
「マジで!おめでとう」と冬樹は素直に喜んでいた。
僕は「おめでとう」と無理やりその場では祝っていた。
ーーーーー
その後、デートの話やくだらない雑談をしていたが正直楽しむことが出来なかった。
女性たちはカフェに立ち寄っていたが、そのまま解散したらしい。
なので僕たちもその場で解散して一人寂しく家に帰った。
家に近づくと家の電気が付いていた。
僕は走って玄関に向かい扉を勢いよく開けるとエプロン姿で料理している藤花先輩がいた。
「どうしているんですか?」
「いいでしょ。別に私が居ても」
「そうですけど…ここ数日来ることなかったじゃないですか」
そう…あの日の夜以降、藤花先輩が来ることはなかったからだ。
「まぁ…たまにはね」と大学ではしていなかったであろうフローラルな香りがしてきた。
僕はさっきの事を思い出して限界がきてしまった。
泣きそうになっている顔を見せないように堪えながらシャワーを浴びようとしたら、浴槽にお湯が溜まっていた。
僕は内心…感謝しながら湯船につかった。
大学生活でお湯を溜めた事がなかったので久しぶり過ぎて身体から温まった。
お風呂から上がり、服を着て部屋を見渡すとローテーブルの上に、きな粉の白玉だんごが置いてあった。
「先輩って料理作れるんですね」
「失礼ですよ」と答えた。
僕は先輩が作ってくれた団子を食べた。
「そういえばさ、私のこと先輩じゃなく名前で呼んでもいいんじゃない?」と提案してくれた。
「何でですか?」
「だってさ~数日前に暑い夜を共に過ごしたぐらい仲を深めたでしょう」と言った。
「そうですけど…あの日は僕もよくわからなかったんですよ」
「でもナイトが……」とその後を言おうとしていたので「ナイトにはなりますよ」と答えた。
けど、好きという感情になったかどうかといわれると…」
それを聞いた藤花先輩は「はあ〜」とため息をついた。
「呼び方変えないとキスする」と脅してきたので、「結先輩でいいですか」と答えた。
すると藤花先輩は、「う~ん…」と悩んだ末「今はそれでもいいわ」と答えた。
「じゃあ、私は春くんって呼ぶことにするね」と言った。
その時の笑顔を見て…心臓の音が聞こえた。
こうして二人は呼び方を決めて、同じ屋根で眠りについた。