誕生日
朝、外に出ると白い息が見える様になってきた頃、二週間ぐらい大学に行かなくなっていた。
授業もまともに行かなくなり冬樹から『大学来いよ』と連絡があったが軽く『行く』と返信しては行かないという友人として申し訳ないと感じている。
バイトも辞めた。辞めたという表現は違うかもしれない。店長の体調が悪くなり店を畳んだ。だから辞めたというわけではなかったが、僕自身辞めようと思ったタイミングだったので、いずれにしても辞めていた。その時点で花野さんとも会うことはなくなっていた。
駅に行くため街中に出てみるとクリスマスムードが広まっている。
駅近くには大きなクリスマスツリーが大きく飾っており写真を撮っているカップルがいた。
僕はそのクリスマスツリーに目もくれずに駅構内に入った。駅の中にあるショッピングもクリスマスが近づいているのでさまざまな場所で期間限定品が売られていた。
今日、僕はプレゼントを買いに来ていた。
結と付き合う様になって数ヶ月、俺自身がまともにプレゼントを渡していないことに気づいた。結はモデルのミンとして活躍しているのでホームページを見た時誕生日が載っていた。見てみると、彼女の誕生日は十二月二十四日と記していた。その日が今日という訳だ。
そこで僕は、彼女のことを思いながらプレゼントを買うために駅構内へ足を運んだ。
お金がないためブランド物を買うのは少し躊躇う気持ちがある。結衣自身もモデル仕事でブランド品の服やコスメもたくさんもらう事が増えたと家に来る度に嬉しそうに話していたのでブランド品は無し…。
他の選択肢は何がある?
結の笑顔が見たい。
ガッカリさせたくない。
頭の中でグルグルと考えている所に目に入った物はピアスだった。
そういえば…結はピアスをしていない。
彼女が、耳につけているのはイヤリングだ。何故ピアスをしていないのか聞いた事があった。
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「そういえば藤花先輩は何故ピアスしてないんですか?」
映画を観終わった時に何を思ったか彼女の横顔を見た時があった。その時、耳にピアスの穴が開けていなかったので尋ねてみた。
結はベットで横になりながら答えた。
「一人で開けるの怖くし、開けるなら誰かと開けたいね〜」と言っていた。
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その時の事を思い出すとすぐにピアスを購入した。
僕は結の事を思いながら選んだ。
プレゼントを大切に家に持って帰った。
家に帰ると結が待っていた。
「どこに行っていたの?」と結がローテーブルの上にフライドチキンやサラダを出していた。
「駅構内にあるショッピング街で買い物していたんだ」
「その買い物、私の分もあるよね」
「勿論だよ」
「それにしても、結構買って来たんだね」
「若津マネージャーに頼んで春の家まで持って来てもらったんだよ」
「一度会ったことのあるマネージャーだよね」
「あの日は大学をサボって、私のモデル姿を現場で見た日よね」
「あの日は驚きの連続だった」
「そうね。私も春と出会った日のことを今でも覚えているわ。それで、考えてくれた?例の話」と話の内容を変えた。
「例の話は、僕が事務所に入って結のサポートをする話だよね」
「うん、マネージャーになって欲しい。ずっと私の側にいて欲しいなって…」
結の顔が赤くなっていた。
僕はピアスを彼女にプレゼントした。
「勿論だよ!これ誕生日プレゼント、どうかな?」とドキドキしながらプレゼントを渡した。
彼女は、袋の中から取り出すと嬉しかったのか抱きついて来た。
「ありがとう…嬉しい」
僕の頬にキスをした。
彼女は大事に持っていた。
二人だけのクリスマスパーティーをした。
結と付き合って色々と経験をした。
一年が結との思い出に染まっていた。
スマホの画像フォルダを見ても思う。
「さてと、ピアス開けてほしい」
「僕で大丈夫かな?」
「大丈夫よ。しっかりとピアッサーや消毒液も買って来てくれているし問題ないわ。はい!」
僕は緊張しながらも彼女の耳タブにペンで印を付けてピアッサーで開けた。
その後、僕が買ってきたフラワーモチーフのピアスを彼女の耳に付けた。その姿を見た僕は二度と忘れる事はないだろう。




