落ちた
椿が帰った後、久しぶりの結と一緒の空間にいる。
僕と結は数分間何も話さずにベットで座っていた。電気を消しているせいか暗闇で彼女の表情がわからなかった。
「ねぇ、幼馴染と何があったの?」
おそらく怒っているのだろう声のトーンが低かった。
「ただアップルパイを食べていただけだよ」
「嘘ついてない?」
「嘘ついてないよ」
「私は春くんの事を信じるしかないから」
そういった彼女は、僕の手を握ってきた。
結の温もりを感じると緊張した。
きっと暗闇のせいだろう。
「キスしましょう?」
暗闇でよくわからないが唇に柔らかいものが重なった。
次の瞬間、僕らは互いの舌を絡めて愛を確かめ合った。
彼女の舌はとても温かく。熱くて。蠢いている。
貪り合う。息が苦しい。そのまま溺れそうになる。
先ほどの椿の出来事を一瞬で忘れ去ってしまった。
僕は、彼女に対して誤解をしていたようだ。
(もしかしたら好きではなくなってしまったんじゃないか)
ここ一か月そう思っていた。
ただ僕よりも、もしかしたら目の前で舌を出している彼女の方が色々と溜まっていた物があったかも知れない。
ベットに身体を預けた僕らは暗闇の部屋と共にどこまでも落ちていく。




