気持ち
朝、カーテン越しの差し込む光に目を覚めた。僕は身体を起こすとキッチンの方からいい匂いがしてきた。キッチンに立っていたのは結先輩だ。僕が立ち上がり結先輩の下に行くと、気が付いて「おはよう」と挨拶してくれた。
「おはようございます…」と少しだけ気まずそうに挨拶をすませた。
昨日の夜、ひどい事をした。僕が感傷的になり、泣きながら結先輩に抱き着いた。それぐらい僕の精神状態は参っていた。けどそんな状態の中でも結先輩は受け止めてくれた。何でここまで僕に尽くしてくれているのかわからない。今も朝食を作ってくれている。こうして結先輩との関係性について考えていた。
最初の出会いは人助けだった。あの日河川敷で困っていた所を助けた。そこで先輩が有名モデルミンという名で活躍していることを知った。その間でも平日の仕事終わりにはよく結先輩はうちに来るようになった。そんな奇妙な関係から始まった僕は、結先輩の魅力でやらかしたことがあった。そして昨日も感傷的になってやらかした。ただ結先輩と交わると僕の精神は幸福感に満ち溢れていた。
そんな関係性から始まった僕たち…結先輩は決して彼女ではない。ただいずれは恋人同士になる時期が来るのだろうか。それはわからない。そもそも僕も結先輩も付き合うという言葉を言っていない。
そのようなことを考えているとローテーブルの上にトーストと目玉焼きとベーコンが目の前に出された。
「春くん食べましょう」と言った。
二人は手を合わせて『いただきます』と口に出した。
朝食の時間が始まったが数分の間は話さずにいた。けれど結先輩はこちらの顔を見て様子を伺っていた。
「美味しいですよ。そんなに僕のこと見なくても」
「別に私はただ、好きな人の顔を見ているだけだよ?」
「結先輩に一つだけ質問してもいいですか?」
「ん?もしかして目玉焼き醤油派だった?」
「いや目玉焼きの話じゃないです。あと僕も塩コショウ派なので」
「あら、目玉焼きの話じゃないのね」
「そうですね…。少しだけ言い難い質問なんですが…」と少し間をおいて深呼吸した。
「僕と結先輩の関係は何なんでしょうね?」
その言葉を口に出すと結先輩が一瞬だけ驚いたような顔をしていた。しかしすぐにいつも通りの顔に戻り言った。
「私は好きだけど、春くんの気持ちの問題じゃない?」
「そうですよね。僕の気持ちの問題ですよね」
「私は待つわ。今一番春くんを大切に思っているのは私しかいないからね」と自信のある言い方だった。
僕はその言葉を聞いて頭の中で考える。
頭の中で考えていた…。いつもの僕なら頭の中では幼馴染の事、椿の明るい笑顔が頭の中で覚えていたし大切にしないといけないと思っていた。でも今は目の前でトーストを食べている結先輩のことしか考えていなかった。
ああ、僕にとって幼馴染とは依存だったのか。
こうして僕は目の前にいる女性の事を真剣に見ようと本能で決めた。
「これから結先輩の事だけを見ていきます」と宣言した。
「それは付き合うって事?」
「はい!」と返事した。
こうして春と結の二人は恋人同士になった。




